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六章

40.エルフ編⑧<朝>

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翌日、私は回復したマシマによって起こされた。

「姫様……姫様……姫様、朝ですよ!」
「んー……まだ寝る……ってマシマ!?」

ガバっとベッドから起き上がる。

「あれ、なんでベッドで寝てんの!?え、マシマ大丈夫なの!?」

マシマはにっこり微笑む。

「毒はミス・クロウの解毒薬で治りました。もう大丈夫です」

ぐっと拳を握って笑う姿にフル感動する。

マシマだ……!マシマが元気になった……!

「さぁ姫様、一階に降りましょう。ミス・クロウが待っています」

と言うので、私は服を着替えると、すっかり侍女服のマシマと一緒に一階に降りた。

そこにはミス・クロウとテトが待っていた。

大丈夫。またエレンが犬だとか何とかなんだとか言っていたのはよくわからないけど、エレンの変わってしまった姿については受け止めることが出来た。

「あ、やっと来たか」
「はい、お待たせしました。でも…なんでドレスなんですか?」

ドレスと言えど普段着ているドレスだが、わざわざ森に化け物退治に行く格好ではない。

「ニャー(行けばわかるよ)」

テトも知ってるようだ。

まるで私だけ仲間外れみたい。

「さぁ転移するぞ」

床には昨日洞窟で書いたのと似たような魔方陣が書かれている。

ミス・クロウは手に魔石を持っているし、今日は魔力が足りなくなることは無いだろう。

私たち全員が魔方陣に入ったことを確認すると、ミス・クロウが魔力を込めだしたのか、周りがまばゆい光で包まれた。

目を開けるとそこは、見覚えのある場所。

エルフの里の城の、王の間だった。

ミス・クロウを筆頭ととする私達はそこに転移したらしい。

壁際には、沢山の侍女姿のエルフが控えており、目の前には、リーディアが首を垂れていた。

「ようこそいらっしゃいました、ミス・クロウにミーシャ様方」

リーディアがこうしているってことは、ここに来ることを知らなかったのは本当に私だけらしい。

「うむ、頭を上げい」

リーディアが頭を上げる。が、その顔は何故か怒っていた。

「失礼だとわかってはいますが、一つだけ言わせて下さい、ミス・クロウ。雨の中、冷えた洞窟にエルフ隊を置き去りにするとはどういうことですか!縄で縛ったりまでして……彼らは何もしてないのでしょう!?ミス・クロウと言えど、気まぐれが過ぎます!」

え……?

リーディアはエルフ隊からそんなことを聞かされてるの……?

マシマが殺されかけたのに……?

「……それはエルフ隊の奴らが言ってたのか……?」

今まで聞いたことの無い程冷ややかなミス・クロウの声。

「そう……ですけど?」
「女王。お前はそれを鵜吞みにするのか?そんな気まぐれで私が……ひいてはミーシャがそんなことをすると思うか?違うだろ?本当はわかってるんだろ?頭のいいお前ならわかるはずだ」

一歩一歩と、リーディアに詰め寄る。

ついには玉座に追いやられて、リーディアは尻もちをつくように玉座に座った。

憐れむように、ミス・クロウは続ける。

「女王よ、わかっているだろう?エルフ隊はミーシャに毒を盛った。ただ手違いでその毒はマシマが喰らうことになったが……。その結果彼らを私が縄で縛り、マシマを我が家に連れ帰って看病したことぐらい、わかっているのだろう?」

リーディアがぐっと唇を噛む。

「いや、他にもわかってるはずだ。そもそもお前はこの化け物騒動の犯人さえも分かっているのではないだろうか?」

化け物騒動の犯人……?

リーディアはずっと下を向いていた。

「あくまでも言わないつもり……いや、認めたくないのか」
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