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五章

28.再会編②<正体>

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取り敢えずただの猫のフリして、このミス・クロウさんに森に放してもらおう!

まぁ、まずは地面に降ろしてもらいたいんだけど…?

…ミス・クロウ、腕の力強すぎだろ!

精一杯身体伸ばして逃げようとしても全然抜けないし!

しかも、どんどんと歩いて行ってしまう。

少しすると、小さな緑色のこじんまりとした屋敷が見えてきた。

ミス・クロウが片手で僕を持ち、もう片方の手の指を振ると、家のドアが勝手に開いた。

ミス・クロウは当たり前のことながら家に入っていった。

どうにか逃げなければと考えているうちにドアは閉まり、家中のライトがつく。

ミス・クロウが僕を床に降ろしてくれた。

「よいしょっと……」
「ニャッ(おっ……と)」

取り敢えず猫のフリ……猫のフリ……。

「ニャァ~ン(にゃぁ~ん)」
「ぷっ……」

突然ミス・クロウが吹き出して笑った。

「ふふっ……まだわかんねぇの?」

美人なのに、男みたいに笑う。

うん、何かがおかしい。

フンフンと匂いを嗅いでみる。

「ニャァッ……!?(あっ、お前はもしかして……!?)」

ミス・クロウがニヤリと笑う。

やっぱりこの笑い方……!

「ニャー!(クローデン・クラウス!)」
「ピーンポーン!」

ニヤニヤニヤニヤとミス・クロウ……いや、クローデンが笑う。

生きてたんじゃないか。心配して損した。

途端に肩の力がふっと抜ける。

「ははっ、死んだと思ってたろ?残念でした~」
「ニャー(ウルサイ。取り敢えず女の格好で男みたいに笑うにやめろ)」

せっかく綺麗なのに中身がクローデンだと残念すぎる。

「お、すまんすまん」

クローデンがまた指を一振りする。

すると、クローデンの身体が光に包まれて、次の瞬間には女から男に変わっていた。

神界でよく見た、無駄にイケメンな姿だ。

黒髪サラッサラ。

「ニャー?(ていうかお前、なんでニンゲン界で人型とれるんだ?)」

たしか、ニンゲン界は神通力がかなり減少するはず……。

人型なんてとればあっという間にエネルギー切れになる。

「あぁそれはな、ツクヨミ様からこの家に直接神通力が送られているからだ」

は、ツクヨミ様から神通力を?なんで?

「なんで?って顔してるな。何故かは俺も知らない。ただ私は、ミーシャを守るためのこの世界に来て、一度ミスって死んで、天界に戻った。それでその後任となるテトラの手助けをするためにここに来たんだ」

ふむ……?

「ニャー(とすると、僕の仕事もミーシャを守る事なんだね。ミスって死んだっていう時が『クロ』が死んだ時か……。あれ、つか僕、仕事じゃなくて勝負で馬に負けてここに来たんだけど?)」
「じゃあそれも含めて仕込みだったんじゃないか?確かにお前がこの世界に来た時、仲間の猫神達もいっぱい来たしな。だが詳しいことは何も、誰も知らされてないようだぞ」

へぇ……他にも猫神が居るのか……。

なら、連絡がとれるようにした方がいいかもな……。

「ただ、敵は魔族だけじゃない」
「ニャ?(え?)」

魔族だけじゃない……?

「寧ろ、魔族がミーシャを狙う理由が関係しているんだ」
「ニャー?(と、いうと?)」
「いいか、敵は……」

部屋の奥でピーッ!と高い音がした。

すごく大切なところで言葉を切るな!

「すまん、湯が沸いたようだ。私は珈琲を飲むが、テトラは……」
「ニャー!(飲まない!でもクッキーは頂戴!)」
「ふっ、甘いもの好きのままなんだな」

クローデンがまた指を一振りすると、キッチンらしき方向からフヨフヨと珈琲とクッキーが空中を浮遊してきた。

「はい、お望み通りクッキーをどうぞ?」

無視してもくもくとクッキーを貪る。

お礼は絶対言わない。

今になって死んだと思って僕に心配をかけた事にムカついてきた。

クッキーは最高においしいが、クローデンは僕がこの世界に来た時点で現れなかったし、なんだか騙され気分だからお礼は言わない!

「ニャー!?(で!敵は誰なの!?)」

「何を怒っているんだ」と笑いながらクローデンは小粋に珈琲を嗜む。

結局敵は誰なんだよ!

「ええと、敵の話だったか?敵は、アマテラスだぞ」
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