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92,魔力を込める?

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「もう一度、魔法を見せてくれないか?」

 シャルダンの申し出で、俺は再び『ファイア』と唱える。

 変わらないライター程度の炎に、シャルダンが唸りながら再度魔法を見せてくれと言ってくる。

「魔力を込めながら、唱えてみて欲しい。」

 魔力はひたすら込めているのだが、仕方無く更に念入りに魔力を込める。

 しかし結果は変わらず、ライター程度の炎以上になる事は無い。

「·········。」

「·········。」

 お互い少しの間、無言になる。

 それでも、シャルダンの明らかに信じがたそうな様子に、どうしたものかと思案する。

 魔法書によると多重掛けは通常は出来ない事らしいので、面倒事を避ける為にも、披露する気積りは無い。

 全属性に適性が有ることは、何等かの手段で調べられてしまうかもしれないので、それ迄は知らない振りをしようと思っている。
 
 思い悩む俺にシャルダンが気を取り直したのか話し掛けてきた。

「ソウタ。師事を受けてもらう間は、弟子としてこの屋敷に滞在して貰うので悪しからず。よろしく頼むよ。」

 こんなにショボイ魔法しか使えないのに、師事をしようと思ってくれているのか···。

 手の内を全て明かす気は無いのだが、流石に少し申し訳無い気分になる。

「大した魔法の実力も無いのに、すみません。心苦しくはありますが、暫くお世話になります。」

 勿論あまり長居をする気積りは無いが、袖振り合うも何かの縁だ。

 向こうから声を掛けて来たのだし、利用できる事なら遠慮はしないでおこう。

 ただし、ボロを出さない様に最善の注意は払わなければならないだろうが···。

 正直、面倒だが仕方無い。

「取り合えず、食事に呼ばれるまでの間に、この水晶に魔力を込める練習をしてみたまえ。」

 いきなり手渡された水晶に、戸惑う。

 シャルダンはすることが有るからと、部屋を出て行った。

 俺は部屋に一人残され、水晶を眺める。

「魔力を込める練習って、具体的にどうすれば良いんだろうか?」

 取り合えず水晶を持つ手に魔力を集めてみるが、水晶に変化が起こる事は無い。

 次に水晶を持ったまま、水晶も体の一部だと認識しながら体全体に魔力循環を行う。

 すると、水晶に変化が現れる。

 水晶がぼんやりと光を放ち始めたので、俺は気を良くして循環している魔力を魔力制御して濃度を高める。

 そして魔力操作で手に持った水晶に集中させる。

 すると水晶が目を開けていられない程に眩い光を放ち始めてしまう。

 俺は慌ててカバンから布を取り出すと水晶に被せて包み込む。

「あーっ!眩しかった!!」

 布を被せても眩しさを抑えきれている訳では無かったが、無いよりはましだ。

 そのまま、俺はソファーにもたれ掛かると少し休憩することに決めて目を瞑った。




 
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