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つくし
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ある春の昼下がり。
エマはユーリと屋敷の近くを散策していた。
「いい天気ね」
「はい」
歌うように囀る小鳥たち、笑うように咲き誇る花々。
海や大地を照らす母なる太陽。
エマは晴れ渡った空を仰ぐ。
「私、春って大好き。暖かくて気持ちいいんだもの」
「そうでございますね」
ユーリは柔らかな微笑をたたえ、忙しなく行き交うミツバチの羽音に耳を傾ける。
金属とシリコンで作られた体が日差しを受けて、きらりと光った。
「あら、つくし」
地面に目をやると、薄茶色の細長い形をしたつくしがたくさん生えていた。
青々とした雑草の中で、つくしはよく目立つ。
「つくしを見ると春が来たって感じるわね」
エマはしゃがみ込むとつくしを一本、摘み取った。
「ねえ、ユーリ。つくしにも花言葉みたいなのってあるの?」
「はい。つくしはシダ植物スギナの胞子茎で、花は咲かせませんが『向上心』『努力』『意外』『驚き』という花言葉があります」
「まあ、素敵」
つくしを形の良い鼻に近づけ、匂いを嗅ぐエマ。
「ふふ、春の香りがするわ」
エマの曖昧な表現が分からず、ユーリは『春、香り』について走査する。
花の香り、森林の香り、土の香り――それらは季節の訪れを感じさせるもので、大昔から人類は自然とともに生きてきたことを改めて理解し、記憶した。
そんな人類も宇宙に進出して久しい。
彼らが好ましい動植物を連れて移住したのは、やはり地球がユニークかつ全ての原点であるからに違いない。
日本をルーツに持つ人々は、つくしを選んだと記録に残されていた。
「せっかくだし、花瓶に生けようかしら」
「はい、それがよろしいかと」
「シリウスでも私みたいにつくしを見つけて喜んでる人がいると思う?」
「ええ、きっといるはずです」
エマは嬉しそうに微笑む。
それから何本か野花を摘んだ。
「さあ、帰りましょう」
「はい、お嬢様」
屋敷の壁龕に飾られる花瓶からは、春の爽やかな香りがするだろう。
ユーリは青い光を宿した目を細めたのだった。
エマはユーリと屋敷の近くを散策していた。
「いい天気ね」
「はい」
歌うように囀る小鳥たち、笑うように咲き誇る花々。
海や大地を照らす母なる太陽。
エマは晴れ渡った空を仰ぐ。
「私、春って大好き。暖かくて気持ちいいんだもの」
「そうでございますね」
ユーリは柔らかな微笑をたたえ、忙しなく行き交うミツバチの羽音に耳を傾ける。
金属とシリコンで作られた体が日差しを受けて、きらりと光った。
「あら、つくし」
地面に目をやると、薄茶色の細長い形をしたつくしがたくさん生えていた。
青々とした雑草の中で、つくしはよく目立つ。
「つくしを見ると春が来たって感じるわね」
エマはしゃがみ込むとつくしを一本、摘み取った。
「ねえ、ユーリ。つくしにも花言葉みたいなのってあるの?」
「はい。つくしはシダ植物スギナの胞子茎で、花は咲かせませんが『向上心』『努力』『意外』『驚き』という花言葉があります」
「まあ、素敵」
つくしを形の良い鼻に近づけ、匂いを嗅ぐエマ。
「ふふ、春の香りがするわ」
エマの曖昧な表現が分からず、ユーリは『春、香り』について走査する。
花の香り、森林の香り、土の香り――それらは季節の訪れを感じさせるもので、大昔から人類は自然とともに生きてきたことを改めて理解し、記憶した。
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日本をルーツに持つ人々は、つくしを選んだと記録に残されていた。
「せっかくだし、花瓶に生けようかしら」
「はい、それがよろしいかと」
「シリウスでも私みたいにつくしを見つけて喜んでる人がいると思う?」
「ええ、きっといるはずです」
エマは嬉しそうに微笑む。
それから何本か野花を摘んだ。
「さあ、帰りましょう」
「はい、お嬢様」
屋敷の壁龕に飾られる花瓶からは、春の爽やかな香りがするだろう。
ユーリは青い光を宿した目を細めたのだった。
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