【最弱勇者】100回目の転生

黒崎

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【前編】僕たちの新婚旅行

上位悪魔ベリアル

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一通りの観光を終え、獣人の国を後にするがそこで嫌な予感が的中する。

「グォオオーーー!!」

帰路の途中、森の中から大きな声が聞こえてきたのだ。

「……なんだ?」
「……これは!」
「どうしたの、ドレッド?」
「この気配は…………魔族だ!しかも強いぞ!!気を付けろ!」
「え!?」

ドレッドの言葉を聞き直ぐに臨戦態勢に入る。すると森の奥からドラゴンとオークを引き連れた一匹の悪魔が現れた。

「フハハハハ!!!まさかこんなところで同胞に会うとは思わなかったわぁ!!」

そう言いながら高笑いをする悪魔。

「何者だ貴様っ!!」
「俺かぁ?俺は魔界から来た上位悪魔のベリアルってんだ。」

ベリアルが自己紹介をしている隙に創造魔法をドラゴンとオークにかけた。すると、ドラゴンとオークはみるみるうちに小さくなり、やがて手の平サイズに納まる。

「あぁ!?てめぇ!!俺を無視してんじゃねぇぞ!!」
「いやぁ、邪魔しちゃ悪いかなって思って。あと、ペットは返しておくね。」

手の平サイズのドラゴンとオークをベリアルに投げ返した。

「な!?いつの間に……まあいいや。お前ら食っちまえ!」

ベリアルがそう言うと、今度はドラゴンとオークが巨大化した。コイツも創造魔法の使い手か。恐らく創造魔法が効かないだろう。一筋縄ではいかなさそうだ。

「ドレッドお願い!時間を稼いで。僕がベリアルを倒すから雑魚の方を頼むよ!」
「あぁ」

ドレッドはそう言うと、ドラゴンとオークの方へ走っていった。

「ふっ……貴様一人で俺と戦うつもりか?」

ベリアルは不適な笑みを浮かべる。完全に油断しているようだ。

「悪く思わないでくれよ。砂になれ!」

創造魔法が効かない相手に手加減する余裕はなかった。僕は仕方なくベリアルを殺すために元素変換魔法で彼を砂に変えることにした。

「なんだ、俺の身体が崩れる……。やめろ! 俺はまだ死にたくな――」

悲痛な叫び声と共にベリアルは姿を消した。しかしまだ終わっていない、ドレッドを助けなきゃ。そう思ってドレッドの方へ駆けるとそこにはベリアルが立っていた。

「あの程度で俺が死ぬわけねぇーだろ。」

僕に消滅させられる前に時空魔法を使ったようだ。

「貴様の連れの男なら既に我が手中にあるそ。」
「何だと!?」

彼の足元には無残な姿に変わり果てたドレッドの姿があった。

「まぁ、そう慌てるなよ…。お楽しみはこれからだぜ?」
「時間よ戻れ!」

彼の挑発を聞き流し、時空魔法を使ってベリアルと出会う直前まで時を撒き戻した。

「フハハハハ!!!まさかこんなところで同胞に会うとは思わなかったわぁ!!」
「無限収納!」

2度目の台詞も無視し、今度は無限収納でベリアル、ドラゴン、オークを収納した。

「なっ!?」
意表を突かれたベリアル達はそのまま収納され、無力化された。戦いが終わった後、僕はその場で泣き崩れてしまった。

「おい、どうしたんだ?」
「ごめんね!ドレッド…守れなくてごめんね……」
「おいおい、俺ならここにいるぞ?」
「違うの!ドレッドは一度ベリアルに殺されたの。それで僕が時を戻したの。」
「えっ?」
「ベリアルは僕の魔法が効かなかった。創造魔法、元素変換…どれもダメだった。」

号泣する僕をドレッドは優しくなだめた。

「でもよ、俺はこうして助かっているんだぜ?」
「うん……。」
「それにお前も危なかったんじゃないのか?なんでお前が泣くんだよ。」
「だって……だって……!」

自分が死んだことよりも僕の身を案じたドレッドの優しさが心を締め付け、僕は彼の胸に泣きついた。そんな僕の頭をドレッドは優しく撫でてくれた。

「わかったから、もう泣くな……いいな?」
「うん……。」

しばらくして平静を取り戻した僕は念のため収納中のベリアル・ドラゴン・オークに全知全能のスキルを使い、全員僕の指示に忠実に従う平和主義者に変えた。彼の持つ能力は強力過ぎる。魔界の魔王の討伐後には解放するつもりだが、それまでは手中に収めておくのが賢明だろう。

最寄りの町に着くと、ベリアル達の部下の魔族達が待ち構えていた。

「お前ら……よくも仲間を!」
「うるさい雑魚が」

ドレッドはそう言うとベリアルの部下達を殺害した。するとベリアル本人が現れた。あの空間からどうやって抜け出したんだ…。

「よくも部下達を!」
「ま、待って!部下達を蘇らせるから僕達に強力してくれないか?」

僕はベリアルが平和主義者に変わったか試すために話をもちかけると彼は食いつく。

「なんだと、それは本当か!?」
この反応から察するに無事に平和主義者に変わっている様子だ。

「本当だよ。見てて…?」
僕はベリアルの部下達を蘇らせた。

「ほら、言ったとおりでしょ?」
僕は魔法で彼の部下達も平和主義者に変えた後、彼らを仲間にすることに成功した。ベリアルにはある指示を下す。

「ベリアル、君には先回りしてスパイとして働いて貰いたい。」

魔界で脅威になりそうな者を片っ端から無力化するように命令した。

「かしこまりました、お任せ下さい。」
「君の魔法を使えば相手を傷付けずに無力化できると思う。期待しているよ。」
「はい!この命に代えても必ずや御期待に応えてみせます!」

ベリアルはやる気満々だった。

「自分の命を優先しろ、任務はその次で構わない。さぁ、行け!」

僕がそう言うと、ベリアルはドラゴン、オーク、部下達を連れてスパイとして魔界へ戻った。彼の働き次第で今後の作戦が大きく変わるだろう。
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