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3-3.やさしい肉体労働のおじさんに抱きしめられたい
しおりを挟む「いや、盗んでいません」
「じゃあ、どうしたんだ」
「そのう・・・」
「正直に言えば、いいからよ。
俺は誰にも言わねえから。だから正直になれ」
どうしよう。
正直に、僕のものですって言ったほうがいいのか?
「女モノの下着や服を盗んじまう気持ちはわかる。この島には女っけないしな。でも、盗みはいけねえ」
「・・・・」
「それとも、あれか。別れた彼女のもの持ってきちまったか?」
それでいこう。
「はい・・・・。そうなんです。別れた彼女が置いていったので、つい」
「・・・そうか」
それきり、おじさんは黙ってしまった。
沈黙が続いた。
やっぱり正直に言ったほうがよかったのだろうか。
おじさんは僕の態度から嘘を見破り、がっかりしてしまったのだろうか。
それに・・・・
正直に女装してるって言ったほうが、僕の心の奥の欲求には正直なのだ。
実際、ここ最近、僕は下着女装をして、夜な夜なおじさんを思ってオナニーしていた。
日中はやさしいおじさんが、夜になるとオスに豹変する妄想で。
僕の体を貪るように愛撫し、お互い固くなった部位を愛液でぐじゃぐじゃに絡めあう・・・
おじさんは依然、黙って、日本酒をぐいぐい飲んでいる。
やっぱり、気分を害してしまったのだろうか・・・
ようやく、こうつぶやいた。
「俺は・・・・ガッカリした」
悲しそうに、そうつぶやいた。
「おめえとはうまくやっていけると思ったのにな」
やっぱり、僕の嘘に気づいているのだろうか。
「今時の若いもんと違って、素直でよ。
おめえとなら、一緒に働きてえ。そう思ってたんだ」
やっぱり、そうだ。
僕の嘘に失望したんだ。
今なら間に合う。正直に言おう。
「・・・・ごめんなさい。嘘つきました」
おじさんは目をそらしたまま、黙っている。
「嘘ついてごめんなさい。でも、本当のことを言います。
おじさんに変な奴だって思われたくなくて嘘つきました。
でも、やっぱり嘘はよくないって思いました。だから、本当のことを言います。
僕の持っている女性用の下着や服は、元カノのものではありません。盗んだものでもありません・・・」
おじさんは僕をじっとみている。
もう、いい。言ってしまおう。
「僕のものです。僕が買ったものです。僕には女装をするという趣味があるのです」
しばしの沈黙の後、
「そうか・・・」
とおじさんがつぶやいた。
虫の声が聞える。静かな夜。
おじさんは思ったより、落ち着いた反応だった。
いや、もしかしたらショック状態なのかもしれない。
そう思った時におじさんが口を開いた。
「本当のことを言ってくれて、ありがとう。俺は嬉しい」
僕は嬉しくて涙がでてきた。
「おいおい。泣くな。
悪かったな、盗んだなんて疑って。本当に悪かった・・・・」
「僕も嘘ついてごめんなさい。
ここの生活、すごく気に入ってしまって。
失いたくなくて・・・・つい、嘘を・・・」
「いいよいいよ、もう。おめえは悪い事してねえんだ。自分で買ったんだろ。だったら、俺はいいと思う」
「あ、ありがとうございます」
「さ、また飲むべ。な、お互い誤解とけたわけだしよ」
おじさんは立て続けに3杯ぐいっといっきして笑った。
僕はその笑顔にぐらっときてしまっていた。
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