18 / 23
失踪
しおりを挟む
帝国図書館を後にした私は寄り道もせず真っ直ぐ家に帰ることにしました。
これまで頭を悩ましたいくつかの疑問が解決したことで、晴れ晴れとした気分になっています。
帰ったら、まずシズを捕縛します。
それからじっくりとお話ししましょう。
私のこと、シズのこと、2人のこと。
楽しみで、楽しみで…
だから家に着き、玄関に置いてある手紙に目を通した私は思わず低い声で「は?」と言ってしまいました。
『シュパーズ・ノーデン様はこちらで保護しました。代わりの執事はまたご用意します。』
ええ、そうシズを保護。へぇ…
冗談にしても一切笑えませんね。
まずは確認のため家の中を見て周ります。
シズが私の気を引くためだけに用意したお茶目な悪戯かもしれませんからね。
厨房にシズの部屋、私の部屋、最後は天井裏までくまなく探しましたが、残念ながらいません。
次は探知魔法の出番です。
自分から一定の距離の範囲に探している人物がいるか調べる魔法なのですが、結果はハズレ。
少なくともこの家から離れた場所にいるか、あるいは探知を回避する何かをしていることが判明しました。
さてさて、困りましたわ。
これではシズを探す手立てがございません。
ええ、本当に。
これで穏便に済ます策は尽きてしまいました。
ですから多少乱暴な策を取っても許してくださいな♪
私はシズがいるであろうノーデン子爵家のもとに飛行魔法で飛んでいきました。
「お帰りください。旦那様方から聖女を決して通すなと言いつけられております。」
などと私を門前払いしようとした生真面目な門番たちには今ぐっすり眠ってもらっています。
「依頼を受けたからには仕方ねぇよな。」
屋敷の中で待ち構えていた傭兵崩れのゴロツキどもは軽くお仕置きしておきました。
そうしてたどり着いた場所は、無駄に広いノーデン家の屋敷の中でも特別無駄に広い大広間。
奥にはノーデン夫妻が武装した者たちを侍らせて私を悠々と待っております。
そしてシズもこの大広間のどこかには居るようですが、姿が見当たりませんね。
「ようこそおいでくださいました、聖女様。私たちの大事なシュパーズを今まで可愛がってくださったこと、いつかはお礼をしようと思ってましたのよ。」
ノーデン夫人が何か妄言を口にしていますね。
こちらが一歩近づくと、夫妻を守る者たちが剣や魔法を構え、これ以上近づくなと警告してきます。
大声を上げるのは疲れるので嫌なのですが、仕方なく私も遠くの夫人まで届く声で話してあげましょう。
「いつからシズが貴方たちのものになったのかしらね。あの子は自ら私の専属執事を志望し、正式に私のものになっているのですけれど?そんなことも忘れてしまうほど耄碌するには、まだ早いですわよ。」
直球でコンプレックスを刺激して差し上げました。
あの方、年上好きのノーデン子爵に求婚された時には30近くて晩婚を嘲笑れていましたからね。
結果シズを産んだ時には、もうこれ以上子どもを作る元気が無いほど年を重ねてしまって…
まあ、だからシズが帰って来ないと養子でも取らない限り後継ぎが居ないのがノーデン家の実情です。
今回シズを保護と称して連れ去ったのも、後継ぎ問題をいよいよ無視できなくなったからでしょうね。
しかし夫人は意外にも平気な顔をしています。
まるで負け犬の遠吠えなど痛くも無いというように。
私が少しだけ怯んでいると、夫人は不敵に笑って指を鳴らし何かの合図をしました。
その合図に答えて大広間の隅の暗がりから姿を現し、ノーデン夫妻のもとに歩いていったのはシズです。
シズは私の方をじっと見つめ
「リュミエラお嬢様。私シュパーズ・ノーデンはこの度お嬢様の執事を辞め、正式にノーデン子爵家の次期当主となることをお伝えします。」
これまで頭を悩ましたいくつかの疑問が解決したことで、晴れ晴れとした気分になっています。
帰ったら、まずシズを捕縛します。
それからじっくりとお話ししましょう。
私のこと、シズのこと、2人のこと。
楽しみで、楽しみで…
だから家に着き、玄関に置いてある手紙に目を通した私は思わず低い声で「は?」と言ってしまいました。
『シュパーズ・ノーデン様はこちらで保護しました。代わりの執事はまたご用意します。』
ええ、そうシズを保護。へぇ…
冗談にしても一切笑えませんね。
まずは確認のため家の中を見て周ります。
シズが私の気を引くためだけに用意したお茶目な悪戯かもしれませんからね。
厨房にシズの部屋、私の部屋、最後は天井裏までくまなく探しましたが、残念ながらいません。
次は探知魔法の出番です。
自分から一定の距離の範囲に探している人物がいるか調べる魔法なのですが、結果はハズレ。
少なくともこの家から離れた場所にいるか、あるいは探知を回避する何かをしていることが判明しました。
さてさて、困りましたわ。
これではシズを探す手立てがございません。
ええ、本当に。
これで穏便に済ます策は尽きてしまいました。
ですから多少乱暴な策を取っても許してくださいな♪
私はシズがいるであろうノーデン子爵家のもとに飛行魔法で飛んでいきました。
「お帰りください。旦那様方から聖女を決して通すなと言いつけられております。」
などと私を門前払いしようとした生真面目な門番たちには今ぐっすり眠ってもらっています。
「依頼を受けたからには仕方ねぇよな。」
屋敷の中で待ち構えていた傭兵崩れのゴロツキどもは軽くお仕置きしておきました。
そうしてたどり着いた場所は、無駄に広いノーデン家の屋敷の中でも特別無駄に広い大広間。
奥にはノーデン夫妻が武装した者たちを侍らせて私を悠々と待っております。
そしてシズもこの大広間のどこかには居るようですが、姿が見当たりませんね。
「ようこそおいでくださいました、聖女様。私たちの大事なシュパーズを今まで可愛がってくださったこと、いつかはお礼をしようと思ってましたのよ。」
ノーデン夫人が何か妄言を口にしていますね。
こちらが一歩近づくと、夫妻を守る者たちが剣や魔法を構え、これ以上近づくなと警告してきます。
大声を上げるのは疲れるので嫌なのですが、仕方なく私も遠くの夫人まで届く声で話してあげましょう。
「いつからシズが貴方たちのものになったのかしらね。あの子は自ら私の専属執事を志望し、正式に私のものになっているのですけれど?そんなことも忘れてしまうほど耄碌するには、まだ早いですわよ。」
直球でコンプレックスを刺激して差し上げました。
あの方、年上好きのノーデン子爵に求婚された時には30近くて晩婚を嘲笑れていましたからね。
結果シズを産んだ時には、もうこれ以上子どもを作る元気が無いほど年を重ねてしまって…
まあ、だからシズが帰って来ないと養子でも取らない限り後継ぎが居ないのがノーデン家の実情です。
今回シズを保護と称して連れ去ったのも、後継ぎ問題をいよいよ無視できなくなったからでしょうね。
しかし夫人は意外にも平気な顔をしています。
まるで負け犬の遠吠えなど痛くも無いというように。
私が少しだけ怯んでいると、夫人は不敵に笑って指を鳴らし何かの合図をしました。
その合図に答えて大広間の隅の暗がりから姿を現し、ノーデン夫妻のもとに歩いていったのはシズです。
シズは私の方をじっと見つめ
「リュミエラお嬢様。私シュパーズ・ノーデンはこの度お嬢様の執事を辞め、正式にノーデン子爵家の次期当主となることをお伝えします。」
1
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる
珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて……
ゆっくり更新になるかと思います。
ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m
【完結】悪役令嬢代行します!〜転生した貧乏令嬢はお金の為にひた走る〜
桃月とと
恋愛
伯爵令嬢エミリアは実家が没落した。
母はすでになく、父は「冒険者になる!」と家を出てしまっていた。エミリアの父は自分のせいで出来た借金をどうにかしようと、家族を残したまま、一攫千金を狙って国外へ旅立った。
「せっかく貴族に転生したっていうのに! あのクソ親父!!!」
そう。エミリアは転生者だったのだ。
だが没落するまで現状に満足し、転生者知識を使うことなく生きてきた為、今更どうしようもなくなってしまっていた。商売を始める元手すらないのだ。
「すまないエミリア……お前を学園へやる金もないんだ……」
「嘘でしょー!!?」
父の代わりに奔走する兄に告げられ絶望するエミリア。この世界、16歳を迎える貴族は須らく王立学園へ入学する。もちろん学費は高額であるが、その学園を出ていない貴族はまともな婚姻も就職先も望めない。
裕福であるはずだった実家に寄生するつもりでいたエミリアはこちらの面でも何の準備もしてこなかった。
「人生詰んだ……」
そんなエミリアの噂を聞きつけてか、一台の豪華な馬車がやってきた。どうやら最近噂の公爵家のものらしい。
「エミリア嬢、娘の代わりに『悪役令嬢』をやってもらいたい」
「はああ!?」
『悪役令嬢』なんて単語、久しぶりに聞いたエミリアだったが、
「もちろん報酬は弾む。この家を建て直すには十分なはずだ」
「喜んでー!」
そうして始まったエミリアの学園生活。入学後、すぐに彼女は気が付いた。
「ここ、いけこれの世界じゃね?」
俺様王太子 アーサー
腹黒眼鏡宰相の息子 ベイル
ミステリアスな大神官の息子 レイル
女ったらしの隣国王子 イクリス
マッチョおっとり騎士団長の息子 ガイヤ
どう考えてもこの顔ぶれ、前世で彼女の姉がハマっていた乙女ゲーム『いけめんこれくしょん』の世界だ。
だがどうやら少々ゲームとは違う様子……ヒロインであるアイリスの様子がおかしい。それに攻略キャラクター達も……。
「この! 親の七光りどもがぁぁぁ!」
今日も今日とてエミリアの怒号が学園に響く。
エミリアは無事学園を卒業できるのか!?
いい縁談をゲットできるのか!?
それがだめならホワイト企業に就職したい!!!
そんなエミリアのドタバタなお話。
※ただノリと勢いの作品です。ご注意ください。ノリと!勢いです!
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
亡国の大聖女 追い出されたので辺境伯領で農業を始めます
夜桜
恋愛
共和国の大聖女フィセルは、国を安定させる為に魔力を使い続け支えていた。だが、婚約を交わしていたウィリアム将軍が一方的に婚約破棄。しかも大聖女を『大魔女』認定し、両親を目の前で殺された。フィセルだけは国から追い出され、孤独の身となる。そんな絶望の雨天の中――ヒューズ辺境伯が現れ、フィセルを救う。
一週間後、大聖女を失った共和国はモンスターの大規模襲来で甚大な被害を受け……滅びの道を辿っていた。フィセルの力は“本物”だったのだ。戻って下さいと土下座され懇願されるが、もう全てが遅かった。フィセルは辺境伯と共に農業を始めていた。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
ブラックな職場で働いていた聖女は超高待遇を提示してきた隣国に引き抜かれます
京月
恋愛
残業など当たり前のお祈り
いつも高圧的でうざい前聖女
少ない給料
もう我慢が出来ない
そう思ってた私の前に現れた隣国の使者
え!残業お祈りしなくていいの!?
嘘!上司がいないの!?
マジ!そんなに給料もらえるの!?
私今からこの国捨ててそっちに引き抜かれます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる