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失踪

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帝国図書館を後にした私は寄り道もせず真っ直ぐ家に帰ることにしました。
これまで頭を悩ましたいくつかの疑問が解決したことで、晴れ晴れとした気分になっています。

帰ったら、まずシズを捕縛します。
それからじっくりとお話ししましょう。
私のこと、シズのこと、2人のこと。
楽しみで、楽しみで…

だから家に着き、玄関に置いてある手紙に目を通した私は思わず低い声で「は?」と言ってしまいました。

『シュパーズ・ノーデン様はこちらで保護しました。代わりの執事はまたご用意します。』

ええ、そうシズを保護。へぇ…
冗談にしても一切笑えませんね。

まずは確認のため家の中を見て周ります。
シズが私の気を引くためだけに用意したお茶目な悪戯かもしれませんからね。
厨房にシズの部屋、私の部屋、最後は天井裏までくまなく探しましたが、残念ながらいません。

次は探知魔法の出番です。
自分から一定の距離の範囲に探している人物がいるか調べる魔法なのですが、結果はハズレ。
少なくともこの家から離れた場所にいるか、あるいは探知を回避する何かをしていることが判明しました。

さてさて、困りましたわ。
これではシズを探す手立てがございません。

ええ、本当に。
これで穏便に済ます策尽きてしまいました。
ですから多少乱暴な策を取っても許してくださいな♪

私はシズがいるであろうノーデン子爵家のもとに飛行魔法で飛んでいきました。


「お帰りください。旦那様方から聖女を決して通すなと言いつけられております。」

などと私を門前払いしようとした生真面目な門番たちには今ぐっすり眠ってもらっています。

「依頼を受けたからには仕方ねぇよな。」

屋敷の中で待ち構えていた傭兵崩れのゴロツキどもは軽くお仕置きしておきました。

そうしてたどり着いた場所は、無駄に広いノーデン家の屋敷の中でも特別無駄に広い大広間。
奥にはノーデン夫妻が武装した者たちを侍らせて私を悠々と待っております。
そしてシズもこの大広間のどこかには居るようですが、姿が見当たりませんね。

「ようこそおいでくださいました、聖女様。私たちの大事なシュパーズを今まで可愛がってくださったこと、いつかはお礼をしようと思ってましたのよ。」

ノーデン夫人が何か妄言を口にしていますね。
こちらが一歩近づくと、夫妻を守る者たちが剣や魔法を構え、これ以上近づくなと警告してきます。

大声を上げるのは疲れるので嫌なのですが、仕方なく私も遠くの夫人まで届く声で話してあげましょう。

「いつからシズが貴方たちのものになったのかしらね。あの子は自ら私の専属執事を志望し、正式に私のものになっているのですけれど?そんなことも忘れてしまうほど耄碌するには、まだ早いですわよ。」

直球でコンプレックスを刺激して差し上げました。
あの方、年上好きのノーデン子爵に求婚された時には30近くて晩婚を嘲笑れていましたからね。
結果シズを産んだ時には、もうこれ以上子どもを作る元気が無いほど年を重ねてしまって…

まあ、だからシズが帰って来ないと養子でも取らない限り後継ぎが居ないのがノーデン家の実情です。
今回シズを保護と称して連れ去ったのも、後継ぎ問題をいよいよ無視できなくなったからでしょうね。

しかし夫人は意外にも平気な顔をしています。
まるで負け犬の遠吠えなど痛くも無いというように。

私が少しだけ怯んでいると、夫人は不敵に笑って指を鳴らし何かの合図をしました。
その合図に答えて大広間の隅の暗がりから姿を現し、ノーデン夫妻のもとに歩いていったのはシズです。

シズは私の方をじっと見つめ

「リュミエラお嬢様。私シュパーズ・ノーデンはこの度お嬢様の執事を辞め、正式にノーデン子爵家の次期当主となることをお伝えします。」



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