2 / 23
聖女
しおりを挟む
私が聖女に任命されたのは10年前、7才の時です。
それまで家族からの愛をほとんど妹に奪われながらも何不自由ない侯爵令嬢ライフを過ごしていたある日。
「リュミエラ・セレナーデ、喜びなさい。君には人々を救う聖女となる資格がある。」
教会の使者を名乗る男がそんなことを告げました。
聖女。おとぎ話に登場するソレは癒やしの力で人々を救い、国に繁栄をもたらせる存在です。
けれど、実際は癒やしの魔法が使えれば誰でもいい。
癒やしの魔法。
傷を治す、病を治す、呪いを祓うといった高難易度の魔法を総称してそう呼びます。
膨大な魔力と人体や呪いに関する正しい知識を合わせ持った人でないと、この魔法は成功しません。
あら、あら。そう言えば真の聖女様は両方とも持っていらっしゃるのですかね?
私の知る妹ローデリカは魔力も乏しく、勉強から逃げてばっかりなお転婆娘でしたけど。
閑話休題。私に聖女の力があると聞かされた両親は、たいそう喜んでいました。
そして、私の意志をきちんと確かめることすらせずに教会へ私を送り届けやがったのです。
そこからの日々はわりと苦痛でした。
「聖女たるもの、常に笑みを絶やしてはいけません」
「聖女たるもの、万人に平等でなければなりません」
「聖女たるもの、魔力は癒やしの魔法に使いなさい。待って!本当にやめて!教会壊れちゃう!」
それまでの自由な生活に比べると天と地の差です。
おかげ様で印象操作魔法なんてものを後々作り上げることになってしまいましたし。
便利ですけどね?変装せずとも周囲の印象をいじって私の正体を分からなくさせたりとか。
結果、私が立派に聖女を務めているという印象を教会の人たちは抱くようになり、『聖女たるもの』といった文句を言われることも激減しました。
でも、決定的に最悪なことが起きたのが10才の時。
「聖女リュミエラ様。貴方は我が国の第一王子アダム殿下の婚約者候補に選ばれました。」
第一王子アダム・スティヤート。
侯爵令嬢だった頃から、いい噂を聞きませんでした。
見た目は良いが、中身が酷い。
常に上から目線で、女性に対しては特に酷い。
これは今の私が保証します。マジです。
あの男の頭には女性を尊重する、なんて発想が微塵もありませんでした。
まあでも昔に比べたらマシなんですかね?
何せ真実の愛に目覚めたそうですし?
話を戻しまして、そんな男の婚約者候補になるなんて当時の私も全力で拒否しました。
当たり前ですよね。
でも、あっちが私に執心だったのです。
「来てやったぞ、聖女とやら。さすが教会のシンボルなだけあって、そこらの貴族令嬢共とは違うな。気に入った。度々来てやるから精々もてなせ。」
「おい、私が来てやったのだぞ。聖女の仕事などより私をもてなすことを優先しろ。」
「さすが聖女だな。甘やかされ育った貴族令嬢共と違ってわきまえている。それに、いい意味で地味だ。」
これが当時の王子です。
今も口調とか表面的な部分は直りましたけど、中身が全然変わっていないんですよね。
フレンダに同情するわ。
不自由を強制してくる教会。
女性を、私を見下してくる王子。
寛容な私にも我慢の限界があるんですよ。
というわけで作りました、魔法人形!
私の魔力で動き、簡単なことなら勝手にやってくれる優れもの!私が魔力を送り続ける限り、治癒の魔法も使えるから聖女の仕事は全部任せられました。
王子との会話も人形が見聞きしたものが伝わってきますし、私の声も送れるので問題なし!
面倒なことは人形に任せ、私は自由を得ました。
それまで家族からの愛をほとんど妹に奪われながらも何不自由ない侯爵令嬢ライフを過ごしていたある日。
「リュミエラ・セレナーデ、喜びなさい。君には人々を救う聖女となる資格がある。」
教会の使者を名乗る男がそんなことを告げました。
聖女。おとぎ話に登場するソレは癒やしの力で人々を救い、国に繁栄をもたらせる存在です。
けれど、実際は癒やしの魔法が使えれば誰でもいい。
癒やしの魔法。
傷を治す、病を治す、呪いを祓うといった高難易度の魔法を総称してそう呼びます。
膨大な魔力と人体や呪いに関する正しい知識を合わせ持った人でないと、この魔法は成功しません。
あら、あら。そう言えば真の聖女様は両方とも持っていらっしゃるのですかね?
私の知る妹ローデリカは魔力も乏しく、勉強から逃げてばっかりなお転婆娘でしたけど。
閑話休題。私に聖女の力があると聞かされた両親は、たいそう喜んでいました。
そして、私の意志をきちんと確かめることすらせずに教会へ私を送り届けやがったのです。
そこからの日々はわりと苦痛でした。
「聖女たるもの、常に笑みを絶やしてはいけません」
「聖女たるもの、万人に平等でなければなりません」
「聖女たるもの、魔力は癒やしの魔法に使いなさい。待って!本当にやめて!教会壊れちゃう!」
それまでの自由な生活に比べると天と地の差です。
おかげ様で印象操作魔法なんてものを後々作り上げることになってしまいましたし。
便利ですけどね?変装せずとも周囲の印象をいじって私の正体を分からなくさせたりとか。
結果、私が立派に聖女を務めているという印象を教会の人たちは抱くようになり、『聖女たるもの』といった文句を言われることも激減しました。
でも、決定的に最悪なことが起きたのが10才の時。
「聖女リュミエラ様。貴方は我が国の第一王子アダム殿下の婚約者候補に選ばれました。」
第一王子アダム・スティヤート。
侯爵令嬢だった頃から、いい噂を聞きませんでした。
見た目は良いが、中身が酷い。
常に上から目線で、女性に対しては特に酷い。
これは今の私が保証します。マジです。
あの男の頭には女性を尊重する、なんて発想が微塵もありませんでした。
まあでも昔に比べたらマシなんですかね?
何せ真実の愛に目覚めたそうですし?
話を戻しまして、そんな男の婚約者候補になるなんて当時の私も全力で拒否しました。
当たり前ですよね。
でも、あっちが私に執心だったのです。
「来てやったぞ、聖女とやら。さすが教会のシンボルなだけあって、そこらの貴族令嬢共とは違うな。気に入った。度々来てやるから精々もてなせ。」
「おい、私が来てやったのだぞ。聖女の仕事などより私をもてなすことを優先しろ。」
「さすが聖女だな。甘やかされ育った貴族令嬢共と違ってわきまえている。それに、いい意味で地味だ。」
これが当時の王子です。
今も口調とか表面的な部分は直りましたけど、中身が全然変わっていないんですよね。
フレンダに同情するわ。
不自由を強制してくる教会。
女性を、私を見下してくる王子。
寛容な私にも我慢の限界があるんですよ。
というわけで作りました、魔法人形!
私の魔力で動き、簡単なことなら勝手にやってくれる優れもの!私が魔力を送り続ける限り、治癒の魔法も使えるから聖女の仕事は全部任せられました。
王子との会話も人形が見聞きしたものが伝わってきますし、私の声も送れるので問題なし!
面倒なことは人形に任せ、私は自由を得ました。
1
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる
珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて……
ゆっくり更新になるかと思います。
ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m
【完結】悪役令嬢代行します!〜転生した貧乏令嬢はお金の為にひた走る〜
桃月とと
恋愛
伯爵令嬢エミリアは実家が没落した。
母はすでになく、父は「冒険者になる!」と家を出てしまっていた。エミリアの父は自分のせいで出来た借金をどうにかしようと、家族を残したまま、一攫千金を狙って国外へ旅立った。
「せっかく貴族に転生したっていうのに! あのクソ親父!!!」
そう。エミリアは転生者だったのだ。
だが没落するまで現状に満足し、転生者知識を使うことなく生きてきた為、今更どうしようもなくなってしまっていた。商売を始める元手すらないのだ。
「すまないエミリア……お前を学園へやる金もないんだ……」
「嘘でしょー!!?」
父の代わりに奔走する兄に告げられ絶望するエミリア。この世界、16歳を迎える貴族は須らく王立学園へ入学する。もちろん学費は高額であるが、その学園を出ていない貴族はまともな婚姻も就職先も望めない。
裕福であるはずだった実家に寄生するつもりでいたエミリアはこちらの面でも何の準備もしてこなかった。
「人生詰んだ……」
そんなエミリアの噂を聞きつけてか、一台の豪華な馬車がやってきた。どうやら最近噂の公爵家のものらしい。
「エミリア嬢、娘の代わりに『悪役令嬢』をやってもらいたい」
「はああ!?」
『悪役令嬢』なんて単語、久しぶりに聞いたエミリアだったが、
「もちろん報酬は弾む。この家を建て直すには十分なはずだ」
「喜んでー!」
そうして始まったエミリアの学園生活。入学後、すぐに彼女は気が付いた。
「ここ、いけこれの世界じゃね?」
俺様王太子 アーサー
腹黒眼鏡宰相の息子 ベイル
ミステリアスな大神官の息子 レイル
女ったらしの隣国王子 イクリス
マッチョおっとり騎士団長の息子 ガイヤ
どう考えてもこの顔ぶれ、前世で彼女の姉がハマっていた乙女ゲーム『いけめんこれくしょん』の世界だ。
だがどうやら少々ゲームとは違う様子……ヒロインであるアイリスの様子がおかしい。それに攻略キャラクター達も……。
「この! 親の七光りどもがぁぁぁ!」
今日も今日とてエミリアの怒号が学園に響く。
エミリアは無事学園を卒業できるのか!?
いい縁談をゲットできるのか!?
それがだめならホワイト企業に就職したい!!!
そんなエミリアのドタバタなお話。
※ただノリと勢いの作品です。ご注意ください。ノリと!勢いです!
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
私を陥れたつもりのようですが、責任を取らされるのは上司である聖女様ですよ。本当に大丈夫なんですか?
木山楽斗
恋愛
平民であるため、類稀なる魔法の才を持つアルエリアは聖女になれなかった。
しかしその実力は多くの者達に伝わっており、聖女の部下となってからも一目置かれていた。
その事実は、聖女に選ばれた伯爵令嬢エムリーナにとって気に入らないものだった。
彼女は、アルエリアを排除する計画を立てた。王都を守る結界をアルエリアが崩壊させるように仕向けたのだ。
だが、エムリーナは理解していなかった。
部下であるアルエリアの失敗の責任を取るのは、自分自身であるということを。
ある時、アルエリアはエムリーナにそれを指摘した。
それに彼女は、ただただ狼狽えるのだった。
さらにエムリーナの計画は、第二王子ゼルフォンに見抜かれていた。
こうして彼女の歪んだ計画は、打ち砕かれたのである。
亡国の大聖女 追い出されたので辺境伯領で農業を始めます
夜桜
恋愛
共和国の大聖女フィセルは、国を安定させる為に魔力を使い続け支えていた。だが、婚約を交わしていたウィリアム将軍が一方的に婚約破棄。しかも大聖女を『大魔女』認定し、両親を目の前で殺された。フィセルだけは国から追い出され、孤独の身となる。そんな絶望の雨天の中――ヒューズ辺境伯が現れ、フィセルを救う。
一週間後、大聖女を失った共和国はモンスターの大規模襲来で甚大な被害を受け……滅びの道を辿っていた。フィセルの力は“本物”だったのだ。戻って下さいと土下座され懇願されるが、もう全てが遅かった。フィセルは辺境伯と共に農業を始めていた。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる