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25 私の大好きな人
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フェルミア様に手を引かれヒュードリック様の研究所に連れて来られ、マリアさんの魔眼の正体を聞き…
気持ちの整理を付ける間もなく色々と物事が変動してしまって目が回ってしまいそうな気分でした。
思えば、昔フェルミア様と一緒に遊んでいた時も今と同じく置いてけぼりでしたね。
私がフェルミア様とお会いしたのは4才の時、ジークハルト兄様の婚約者候補を屋敷に招いた時です。
魔眼で運命の赤い糸を見て、兄様の婚約者に最も相応しい女性を決め婚約成立まで導こう、と考えた私は皆さんが居る部屋に忍び込みました。
兄様を囲む婚約者候補には糸が見えず、残念に思って自室に帰ろうとすると不意に抱き付かれました。
『あなた可愛いわね!婚約者決めとか面倒だったけど、天使みたいな子に会えて幸運よ!』
それがフェルミア様との初対面です。
兄様よりも私に興味深々な彼女は結局、その日別れの挨拶をする時まで私としか話されませんでした。
そして、その別れの挨拶の時に魔眼で2人の間に糸を見付けました。情熱的な赤い色の糸を。
私も初めてお話する同年代の女の子、それも私に直球な好意を向けるフェルミア様が大好きになり、全力で兄様との婚約成立を押したものです。
そうして無事に成立した後は兄様とフェルミア様、私の3人で仲良く遊びました。
庭で駆けっこするのが多かったと思います。
当時体の成長が少し遅めだった私は2人と外で遊ぶ時ついていけず、何度も置いてけぼりにされました。
ですが、そういう時はいつもフェルミア様が私のそばに走って戻ってきてくれました。
『ごめんなさい、置いていっちゃって。今度同じことをしてしまった時は遠慮なく名前を呼んでね。大好きなセラフィム様のもとにすぐ戻るから。』
本当に、昔から私のことが大好きな方なのです。
アルビオン殿下と婚約し、妃教育に苦戦する私を休憩に誘い『よく頑張ったね』と言ってくれました。
先に学園へ通われるようになってからも兄様の倍以上の頻度で手紙を送ってくださいました。
生徒会を辞退させられた時も、後日お茶に招かれ『何もできなくてごめんなさい』と謝り、乙女の園の会長になったことを伝えると『頑張ってください』と応援してくださいました。
本当に私のことが大好きな方で、私も大好きな方…
アルビオン殿下との赤い糸が無いことを悲しんだ日は無いけど、フェルミア様との糸は何度も願いました。
だから、そんなフェルミア様が私以外の人のために自分を犠牲にするなんて許せません。
「…ち、違います!私はマリアさんのためにしているわけでは無くて、セラフィム様の幸せのために彼女の幸せを壊す罪滅ぼしのつもりで…!」
私の説教を受けている最中、フェルミア様がそんなことを言い出しました。
私の幸せのため、それ自体は嬉しいです。ですが、
「マリアさんが魔眼を失い、絶賛彼女の魔眼の能力や魔眼中毒で正気では無いアルビオン殿下が元に戻ることができたら私が幸せになる、と…?」
「ええ。アルビオン殿下は賢い方ですから元に戻れば再びセラフィム様を最も愛する方になる筈です。」
殿下が私を…?そんな素振り今まで1度も見たことがありませんし、信じられないです。
そんな不確かな愛なんて今更求めません。
「フェルミア様の言う通りの未来になったとしても、私は決して幸せになんてなれないです。」
私が断言すると、フェルミア様は困惑されます。
「だって、そこには貴方がいないじゃないですか。」
「そ、それは…仕方のないことです。セラフィム様の本当の幸せのためには…」
仕方がない、その言葉が無性に苛立たせました。
ええ、もう良いでしょう。
王太子の婚約者や公爵令嬢でいるために我慢してきた気持ちを貴方にぶつけます。
貴方を止めるためにはこれも仕方のないことです。
「私はですね、フェルミア様。貴方がいないと幸せになれないと言っているのです。アルビオン殿下に愛されず婚約破棄されようとも、他の誰が私のまわりから立ち去ろうとも関係ありません。私は、私が大好きなフェルミア様さえ居ればそれで良いのです!」
私の言葉を聞いてフェルミア様が顔を真っ赤にされていますが、構いません。
「何度貴方をミアと愛称で呼ぶ兄様に嫉妬したか分かりません!私だってミア様、ミア義姉様とお呼びしたかったのに王妃教育で禁止されたのです!初めて愛称で呼ぶ人は殿下にしなさいと!なぜですか!?なぜ好きでもない、私を好きかも分からない方を先に愛称で呼ばないといけないのです!」
言い切った、と私は清々しい気分になりました。
一方、フェルミア様は顔を隠されていますが、隠せていない耳が真っ赤で照れているのが丸分かりです。
ちらっと、そう言えば研究所にいた2人に視線を向けると、ヒュードリック様は興味深そうにこちらを見つめ、マリアさんは青かった顔を真っ赤にしています。
…これはやり過ぎましたね。
♣︎お知らせ
今作品は次回でひとまず最終回を迎えます。その後、いくつかの視点でエピローグをしていく予定です。
どうか最後までお付き合いください。
気持ちの整理を付ける間もなく色々と物事が変動してしまって目が回ってしまいそうな気分でした。
思えば、昔フェルミア様と一緒に遊んでいた時も今と同じく置いてけぼりでしたね。
私がフェルミア様とお会いしたのは4才の時、ジークハルト兄様の婚約者候補を屋敷に招いた時です。
魔眼で運命の赤い糸を見て、兄様の婚約者に最も相応しい女性を決め婚約成立まで導こう、と考えた私は皆さんが居る部屋に忍び込みました。
兄様を囲む婚約者候補には糸が見えず、残念に思って自室に帰ろうとすると不意に抱き付かれました。
『あなた可愛いわね!婚約者決めとか面倒だったけど、天使みたいな子に会えて幸運よ!』
それがフェルミア様との初対面です。
兄様よりも私に興味深々な彼女は結局、その日別れの挨拶をする時まで私としか話されませんでした。
そして、その別れの挨拶の時に魔眼で2人の間に糸を見付けました。情熱的な赤い色の糸を。
私も初めてお話する同年代の女の子、それも私に直球な好意を向けるフェルミア様が大好きになり、全力で兄様との婚約成立を押したものです。
そうして無事に成立した後は兄様とフェルミア様、私の3人で仲良く遊びました。
庭で駆けっこするのが多かったと思います。
当時体の成長が少し遅めだった私は2人と外で遊ぶ時ついていけず、何度も置いてけぼりにされました。
ですが、そういう時はいつもフェルミア様が私のそばに走って戻ってきてくれました。
『ごめんなさい、置いていっちゃって。今度同じことをしてしまった時は遠慮なく名前を呼んでね。大好きなセラフィム様のもとにすぐ戻るから。』
本当に、昔から私のことが大好きな方なのです。
アルビオン殿下と婚約し、妃教育に苦戦する私を休憩に誘い『よく頑張ったね』と言ってくれました。
先に学園へ通われるようになってからも兄様の倍以上の頻度で手紙を送ってくださいました。
生徒会を辞退させられた時も、後日お茶に招かれ『何もできなくてごめんなさい』と謝り、乙女の園の会長になったことを伝えると『頑張ってください』と応援してくださいました。
本当に私のことが大好きな方で、私も大好きな方…
アルビオン殿下との赤い糸が無いことを悲しんだ日は無いけど、フェルミア様との糸は何度も願いました。
だから、そんなフェルミア様が私以外の人のために自分を犠牲にするなんて許せません。
「…ち、違います!私はマリアさんのためにしているわけでは無くて、セラフィム様の幸せのために彼女の幸せを壊す罪滅ぼしのつもりで…!」
私の説教を受けている最中、フェルミア様がそんなことを言い出しました。
私の幸せのため、それ自体は嬉しいです。ですが、
「マリアさんが魔眼を失い、絶賛彼女の魔眼の能力や魔眼中毒で正気では無いアルビオン殿下が元に戻ることができたら私が幸せになる、と…?」
「ええ。アルビオン殿下は賢い方ですから元に戻れば再びセラフィム様を最も愛する方になる筈です。」
殿下が私を…?そんな素振り今まで1度も見たことがありませんし、信じられないです。
そんな不確かな愛なんて今更求めません。
「フェルミア様の言う通りの未来になったとしても、私は決して幸せになんてなれないです。」
私が断言すると、フェルミア様は困惑されます。
「だって、そこには貴方がいないじゃないですか。」
「そ、それは…仕方のないことです。セラフィム様の本当の幸せのためには…」
仕方がない、その言葉が無性に苛立たせました。
ええ、もう良いでしょう。
王太子の婚約者や公爵令嬢でいるために我慢してきた気持ちを貴方にぶつけます。
貴方を止めるためにはこれも仕方のないことです。
「私はですね、フェルミア様。貴方がいないと幸せになれないと言っているのです。アルビオン殿下に愛されず婚約破棄されようとも、他の誰が私のまわりから立ち去ろうとも関係ありません。私は、私が大好きなフェルミア様さえ居ればそれで良いのです!」
私の言葉を聞いてフェルミア様が顔を真っ赤にされていますが、構いません。
「何度貴方をミアと愛称で呼ぶ兄様に嫉妬したか分かりません!私だってミア様、ミア義姉様とお呼びしたかったのに王妃教育で禁止されたのです!初めて愛称で呼ぶ人は殿下にしなさいと!なぜですか!?なぜ好きでもない、私を好きかも分からない方を先に愛称で呼ばないといけないのです!」
言い切った、と私は清々しい気分になりました。
一方、フェルミア様は顔を隠されていますが、隠せていない耳が真っ赤で照れているのが丸分かりです。
ちらっと、そう言えば研究所にいた2人に視線を向けると、ヒュードリック様は興味深そうにこちらを見つめ、マリアさんは青かった顔を真っ赤にしています。
…これはやり過ぎましたね。
♣︎お知らせ
今作品は次回でひとまず最終回を迎えます。その後、いくつかの視点でエピローグをしていく予定です。
どうか最後までお付き合いください。
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