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第二十六話
しおりを挟む忙しい三日間が終わり、約束の15日。
この日は学校が終わるのがとてつもなく長く感じたけど、その分気分も良く過ごせた。
学校が終わる頃、スマホにメールが届いていた。冬馬さんからだ。
今着いたよ。
窓の外を見ると冬馬さんの車が校門の近くに止まっているのが見えた。
「なに見てんの?」
ゆいが不思議そうに窓の外を見る。
「冬馬さんと今日デートなんだぁ」
「よかったじゃん!てかやっぱ年上はいいもんですか」
「そうだね、頼りがいあるし、何より大人なんだよねぇ」
「それはよかったですね」
少し呆れ気味なゆい。
「もー、ゆいから聞いてきたんだよ!」
「ごめんごめん!ほら、早く行かないと!」
「じゃあお先!」
ゆいにそう言うと私はいつもより早く階段を駆け降り、靴に履き替え門まで走る。
「お待たせしました」
息を切らせながら言った。
「そんな急がなくても」
そう言って笑う冬馬さんにキュンとした。
店で会う時とはまた違った印象で新鮮に感じたからかな。
「じゃあ乗って」
「はい」
私は助手席に乗り込むとシートベルトをした。
「じゃあどこか行きたい所ある?」
「そうですね‥‥せっかくなんで映画とか見に行きません?」
「おっ、いいね!俺当分映画なんて見てないよ」
「私もです、最後に見たのなんて高一の時ですよ。それもよく分からないSF映画で正直眠たかったし」
「はははっ!じゃあ今日はももちゃんが見たいのを選んだらいいじゃん」
「そうしますね!」
学校から映画館へは車だと30分ほどかかる。しかし、いつもより少し長めのドライブをしているようで私には車の振動も心地よかった。
着く頃にはすっかり外も暗くなっていた。
「冬馬さん、そう言えば私制服のままですけど大丈夫ですか?」
「なにが大丈夫?」
「だって、冬馬さんはすごくオシャレしてるのに私は制服ってなんか釣り合わないですよね」
「そんな事気にしてるの?俺は制服姿のももちゃん可愛くて好きなんだけど」
「そ、そうですかぁ?」
「それに制服姿を見れるのもあと少しなんだからそのままでいいよ」
「分かりました」
車を近くのパーキングに止め、少し歩く。
まだまだ外は寒い、乾燥肌の私はハンドクリームを手に塗るついでにさりげなく膝にも塗った。
「俺にも少し塗って?」
「はい」
冬馬さんの手の甲にハンドクリームを少ししぼりだす。
「ありがとう」
「冬馬さんも乾燥肌なんですか?」
「仕事柄手はやっぱ荒れるよね。でも接客があるからガサガサは流石に印象良くないから一応気は使ってるよ」
「女子力高いんですね」
「それって褒め言葉だよね?」
「もちろんですよ!」
「ならありがとう」
そうこうしているうちに映画館に着き、上映作品一覧を見る。
「あっ、これ面白そうじゃないですか?」
「どれどれ?ホラーかぁ、ももちゃん怖いの平気なの?」
「平気どころか大好きですよ!これにしません?」
「いいよ!じゃあそうしよう」
機械でチケットを発券し、ドリンクとポップコーンを買って席に着く。
長い予告が終わり、映画が始まるとスクリーンに集中してしまい、結局映画を楽しんでしまった。本当は冬馬さんとあーでもないこーでもないと言いながら見たかったのに。
明かりがつく前に冬馬さんに出ようと言われたので足元に気をつけながら冬馬さんの後を歩く。
「どうだった?面白かった?」
出た所で冬馬さんが聞いてきた。
「面白かったです、結局集中して見ちゃって。冬馬さんはどうでした?」
「俺も意外と楽しめたよ、それに時々ももちゃんの顔も見てたけど」
「えっ?そうなんですか!全然気が付きませんでした」
「そう、俺が見ても全部気付かないから横顔眺めれて眼福だったよ」
「それは言い過ぎですよ!」
とは言いつつも冬馬さんにそんな事を言われて上機嫌になった。
「てかお腹空かない?どっかで食べようよ」
「そうですね、次は冬馬さんが決めて下さい」
「分かった!じゃあ洋食と和食どっちがいい?」
「それ結局私が決めるのと一緒じゃないですかー」
「ごめんごめん、でも俺はももちゃん優先だから!」
意地悪とも優しさとも取れる笑みで私を見てくる冬馬さん。
「わかりましたよ、じゃあ洋食で」
「おっけ!それならおすすめのお店が近くにあるからこのまま歩いて行こっか!」
そう言いながら冬馬さんが私の手を握って歩き出した。確かに冬馬さんの手はあかぎれひとつない綺麗な手だった。
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