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第十一話
しおりを挟むアラームの音で目が覚めた私はカーテンから漏れる明かりを薄目で見て、さっき眠りについたばかりなのにと時間がとても早く感じた。結局ちゃんと寝れたのは2時間程だった。
急いで準備をし、眠たい目を擦りながら学校に行った。
しかし授業をまともに聞ける元気もなく、むしろ睡眠を誘う授業ばかりで‥‥。
殆ど寝て過ごした為記憶も曖昧なままバイトに向かった。
店のドアを開けると冬馬さんが食い気味で聞いていた。
「おはよう!よく寝れ‥‥‥てないよね」
「学校で寝てたので大丈夫です」
「それは悪い事したね」
「冬馬さんは悪くないですよ、昨日の状況じゃあ仕方ないですから」
「今日も昨日ほどではないけど雪が降ってるね」
「本当、寒くて死ぬかと思いましたよ」
寒いせいか昨日も今日もお客さんは少なめだった。閉店時間まではまだ少しあったが早めに閉めることになった。
「よかったら送ろうか?」
閉店準備をしながら冬馬さんが聞いてきた。
「今日は普通に帰れるので大丈夫です」
「‥‥わかった」
冬馬さんが鍵を閉め、店の前で分かれようとしていた時、向こうの方から柊生がこちらに歩いてくるのが見えた。
「あれって」
冬馬さんが柊生に気付いた。
「じゃあお疲れ様です」
私は冬馬さんと柊生が会うのが気まずく感じた為そそくさと挨拶をして柊生の元に向かった。
私が駆け寄ると柊生の顔がパッと明るくなった。そして一言。
「ももちゃん、久しぶり」
柊生は悪びれた様子もなく嬉しそうだった。
「うん、とりあえず場所移動しよ」
私がそう言うと、自然と公園の方に向かった。その時柊生は冬馬さんの方を時々振り返りながら歩いていた。公園に着き、ベンチで話をする事にした。
「ももちゃん寒くない?」
「うん」
「早速だけどさ、俺は別れたつもりなかったんだ」
柊生は申し訳なさそうに少し先を見つめていた。
「うん」
「よく考えればそうだよね。俺が一人で勝手に怒ったまま帰ったし、連絡もずっと取らなかったから自然消滅と思われても仕方ないって思った」
「‥‥うん」
「でもそれならもう一回言うよ。俺と付き合ってください」
柊生は私の方を向いて真剣な眼差しで見つめてくる。その眼差しに何故かドキッとした自分がいた。
「う‥‥‥ん」
ずっと目を逸らさない柊生に、私はまるで自分の意思とは別にうんと言わされてしまったようだった。
「ほんと?よかった‥‥ももちゃん電話の時も冷たかったし不安だったんだ」
「柊生といる時間は楽しいし喧嘩しないカップルなんていないよね」
「うん、そうだよ!ありがとう!」
そう言って柊生は抱きついてきた。
「大袈裟だよ」
そう言いつつも柊生に対して母性本能が働くのか頭をポンポンしている自分がいた。年下って可愛いな‥‥。
そして嬉しそうに笑う柊生、まるで子犬のように。少し同情もあったのかな。それに柊生の笑った顔は好きだった。中身はまだ幼いが、一途に思ってくれているのが唯一の救いだ。
時刻は夜の9時を回ったところ。
公園の街灯に照らされている雪がやけに綺麗に見えた。
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