プレパレーション

9minute

文字の大きさ
上 下
5 / 43

第五話

しおりを挟む

 初デート当日は久しぶりに髪を巻いたりメイクも気合いを入れておしゃれを頑張った。玄関の全身鏡で最終チェックをし、家を出る。風がとても冷たいが、いい天気だ。

 待ち合わせは告白された公園になった。私の住んでいるところは周りに何もないからデートには不向きだ。

 少し早めに着いた為まだ柊生はいなかった。休日ともあって公園にはちらほら人の姿が。私がきょろきょろしていると、急に柊生が現れた。

「ビックリした、今来たの?」

「うん、ももちゃん気づかないんだもん」

 それもそのはず、いつも制服を着ていた柊生の私服はとてもおしゃれで流石今時の子だなぁと思っていた。私はバイトのしすぎで感覚がおばさんになっている。

「じゃあどこ行く?」

 一応聞いてみた。

「俺んちすぐそこだから来る?」

「えっ、いきなり?」

「あ、ごめん。また気持ちが先走ってたわ。ももちゃんが可愛すぎるからイチャイチャしたかった」

「ちょっと何言ってんの?」
 
 柊生は本当にどんな恋愛をしてきたらそんな事普通に言えるようになるんだ?

「じゃあももちゃんが行きたいとこ行こ」

「そうだなぁ、私マフラーとか見に行きたい。バイトばっかでゆっくり見る時間なかったんだよね」

「オッケー!決まりね」

 そして、私たちはウインドーショッピングを楽しんだ。その中で柊生の好きな物や嫌いな物、ハマってる物とかの話になった。

「柊生はよくクレープ買ってるけど甘い物好きなの?」

「普通だよ。ただももちゃんに会いたいから買ってるだけ」

「でも始めから私の事知ってたわけじゃないでしょ?」

「うん。でもフラフラしてる時にももちゃんが店に入って行くの見てタイプだったから追いかけて店入ったら働いてた」

「柊生っていっつもそんな感じなの?」

「そんな感じって?」

「結構ぐいぐいくる感じ」

「だって一期一会じゃん。それにタイプの人に会う確率って少ないのにみすみす逃すわけにいかないし」

「なんかたくましいね。思いのままに突き進んでて」

「後悔したくないし、一目惚れしたのももちゃんが初めてだったから」

「そうなの?慣れてたように見えたからよく声かけてるのかと思ってた」

「ひどいなぁ、誰でもいいわけじゃないよ」

「ごめんごめん」

 なんか‥‥すごく嬉しい。

「てかお腹空かない?」

「そうだね、何か食べよっか」

 私たちは遅めのランチを済ませると、腹ごなしに少し歩くことに。

「今度こそ俺んちで休もうよ」

「‥‥うん」

 イチャイチャしたいって言ってたけど、そうゆう事になるのかなぁ。でも流石に心の準備がまだなんだよなぁ。それなのに柊生は心なしかテンションが高めだ。

「おじゃまします」

「どうぞー、誰も居ないから安心して」

「ご両親は出かけてるの?」

「殆どいないね」

「そうなんだ」

 私は柊生の部屋に案内されると、とりあえず空いているところに座った。

「ももちゃん今日何時まで大丈夫?」

「うちは基本何時でも大丈夫だよ」

「泊まりも?」

「それは流石にダメだけど」

「なーんだ、ちょっと期待しちゃったじゃん」

「ごめん」

「じゃあお詫びにキスして」

「そのくらいでお詫びしないといけないの?」

 そう言いながらもキスをすると、柊生が抱きついてきた。

「ちょ、ちょっと待って」

 これ以上続けると怪しくなりそうだった為私は一旦止めた。

「なんでやめるの?」

「まだ心の準備が‥‥」

「ごめんね。つい興奮しちゃって」

「今日のところは帰ろうかなぁ」

「来たばっかなのに?」

「でも日も暮れてるし明日もバイトだから」

「じゃあ送るよ」

 結局その日は何も進展はなく、いつものように家の近くまで送ってくれた。

「いつもありがとね」

 柊生の後ろ姿を見送って家に入った。
 久しぶりのデートはやっぱり楽しかった。今とっても恋愛してるって感じ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

私のどこがダメですか?

9minute
恋愛
私の人生どこで間違えたのか。 過去を振り返れば後悔ばかりの毎日。 その度に死にたくなり、自分を呪いたくなる。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...