18 / 32
第18話
しおりを挟むカエさんは少しため息をついて話し始めた。
「まだこのスイッチの本当の機能を伝えていませんでしたね」
「本当の機能?」
「はい。このスイッチ、押したら問答無用でその押した人の近くにワープするんです」
「まあワープしてるんだろうなとは思ってましたけど」
「今日なんかはたまたま私入浴中だったんですよ。だから服も着てなくて」
「そうゆう事だったんですね」
「だからスイッチを渡す相手は慎重に選ばないとダメなんです」
「そりゃ外なんかで押したら大変な事になりますもんね」
「はい、なるべく部屋で押してもらうようにしてもらえたら‥‥」
このスイッチを渡す相手は慎重に選ぶ‥‥自分の見る目も問われるわけか。
そして俺はこのスイッチを絶対無くしてはならないと言うプレッシャーが重くのしかかったと同時に街中で押さなくて本当に良かったとホッとした。
しかし、国はそこまでして少子化対策をしたいとは女性をなんだと思ってるんだ。
俺は更に胸糞が悪くなった。
「あのぅ、アニさん?」
「はい?」
「もしかして言わなかった事怒ってますか?」
「怒ってなんかいないですよ。でもそうゆう大事な事は最初から言って下さいね、今日はとても驚きましたから」
「本当にごめんなさい」
「謝らなくてもいいですよ、それより問答無用でワープって酷いですね」
「そうですよね。でもアニさんにならいつでも会えるだけで私嬉しいですから」
そう言いながら頬を染めるカエさんは、俺のTシャツを見に纏い、それも中は裸だ。そんな格好で俺の隣に座っている。
俺は理性を保ちながら一線を超えないように頑張っていた。
何故なら何が起こるか分からない不安と、一線を超えてしまうとカエさんともう会えないのではないか、俺はただのステップに使われているのではないかという疑念が拭えなかったからだ。
そう、このスイッチの役割が初体験を済ませる事なら、その後の事は未知だ。
「カエさん、服を取りに帰りますか?」
「え?今からですか?」
「はい、その格好では落ち着かないでしょうし」
「気にしないで下さい。私は平気ですから」
「俺ちゃんとした服持ってなくてすみませんね」
「大丈夫ですよ。アニさんを感じられて嬉しいです」
そう言いながらカエさんは腕を組んできた。
「カ、カエさん?近いですよ‥‥」
「嫌ですか?」
上目遣いで俺を見つめるカエさんの姿と、腕に感じる柔らかい物のせいで俺は鼓動が速くなっていた。
「い、嫌なわけないじゃないですか!」
「そうですよね、なんだか私ドキドキしてるみたいです。聞こえますか?」
「ん?」
俺がそう言った瞬間カエさんは膝立ちをし、自分の胸を俺の耳に当ててきた。
「な!何やってるんですか?」
そう言いながらも俺の頭を抱きしめるようにしているカエさんの胸の間で、目の前にある膨らみに思いっきりかぶりつきたいと不覚にも思ってしまった。
「これで聞こえますか?」
「は、はい。すごく」
「‥‥まだ、ダメですか」
ダメだ。カエさんの誘惑に負けてしまいそうだ。それに、食べて下さいと言わんばかりに自分の胸を俺の口元に近づけてくるカエさん。
まだ気付かれていないだろうが、俺の俺は今大変な事になっている。分からないようにあぐらをかいている膝を少し立てている。
離れて欲しい気持ちと離れるとバレるし、この最高な状況を止めて欲しくない気持ちとで俺の頭の中はパニックになっていた。
一体どうしたら‥‥。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる