上 下
10 / 32

第10話

しおりを挟む
 
 地上に来て今日で三日目だ。

 日曜日、仕事は休みと昨日聞いたから今日は何して過ごそうか。

 俺は布団に転んだまま天井を見つめていた。当たり前だがする事もなく、お腹も減っていた。

 カエさんと別れた後俺はまたコンビニに寄っておにぎりを二つ買って帰り夜に食べた。

 飲み物は水道水を飲んでいるが、地下に比べると結構まずくて驚いていた。

 そういえば給料日はいつなんだ?

 このまま給料がもらえないとなるといつか飢え死にする。

 しばらくは限界までお金を使わないようにしなければ。

 目標の死なないが達成出来ない。

 ふと机に目を向けると、昨日カエさんにもらったスイッチが目に入った。カエさんに会えれば空腹もまぎれるかも。

 試しに押して見るか。

 スイッチを手に取りボタンを押し込む。
 カチッと音がする。

 しかし、何も起こらない。

 もしかしてからかわれた?

 いかにもおもちゃっぽいスイッチだ。
 そんな機能付いているわけないか。

 冷静に考えれば分かる事だが、昨日の俺は浮かれていた為そんな当たり前の事さえ気づかなかった。

 俺はスイッチをその辺にぽいっとし、いつのまにか眠っていた‥‥。



 ふぁ~。
 大きなあくびと共に目が覚めた。



 どのくらい眠っていたんだろう。
 相変わらずの天井、今日はずっとこのままごろごろ過ごすのかぁ。

 今何時だ?

 俺が時計を見ようと横を向くと


「うわっ!!」


 一瞬心臓が止まるかと思った。

 何故ならそこにはカエさんがいたのだ。

 驚き過ぎて言葉が詰まっていると、カエさんが俺に近づき言った。


「推しましたよね?」


 えっ、もしかして押したってスイッチの事か?

「あ、スイッチ‥‥の事ですか?」

「そうですよ、私に会いたくなったんじゃないんですか?」

「え、あ、あのぉ‥‥そうです?」


 状況が飲み込めない。

 なんでうちに?
 それにどうやって入った?

 俺が考えているとカエさんは言った。


「私、男の人の部屋に呼ばれるのって初めてで。こうゆう時って料理とかするってドラマで見た事あったからとりあえず買い物して来たんですけど、キッチン借りてもいいですか?」

 料理?
 俺は無意識に首を縦に振っていた。

「じゃあキッチン借りますね!」

 満面の笑みで立ち上がりキッチンに向かうカエさん。

 
 これは‥‥夢??

 しばらく布団の上であぐらを組んだままキッチンに立つカエさんを見ていた。

 すぐにトントントンという音がした。

 何を作ってるんだろう。

 地上での手料理とはどんな物なのか。
 やけに時間がかかっている。

 が、不思議と退屈ではない。
 何故ならカエさんをずっと見ていられるからだ。

 色んな音や匂い、俺はワクワクしていた。

「もう出来ますから~」

「はい」

 まるで餌を待っているペットのような気分だった。

 カエさんがそう言ってからほんの数分で料理が運ばれてきた。


「おぉ~」

 俺は思わず言った。

「お口に合うか分からないんですけど」

「じゃあ、いただきます」

 俺は腹ペコだった為、カエさんの作った料理にがっついた。


 が、‥‥ん?!
 なんだこの食感。
 すごく硬くてまるで岩みたいだ。
 
 味は‥‥苦い。


「‥‥どうですか?」

 カエさんは少し不安そうな顔で聞いてきた。

「と、とっても美味しいですよ!」

「よかった~、ハンバーグなら嫌いな人いないと思って、作った事なかったけど挑戦してみたんです!」

 カエさんの顔がパァッと明るくなった。

 はんばーぐ、地上では定番の料理なんだな。俺の口には少し合わないと思った。

 しかし、カエさんがせっかく作ってくれた物、残すわけにはいかないと思い頑張って完食した。

「ごちそうさまでした」

「全部食べてくれたんですね!嬉しいです!」

「喜んでもらえてよかったです」

 無事お腹は満たされた、そして頭もちゃんと回ってきた俺は聞いてみる事にした。


「あのぉ、一つ聞いていいですか?」

「はい」

「うちにはどうやって‥‥」

 カエさんは少し考えてこう答えた。

「あぁ、スイッチですよ」

「スイッチ?スイッチってこれですか?」

「はい。押したら来るって言ったじゃないですか」

「言ってたけど、本当に来るとは思ってなくて。それに来るって言っても瞬間移動かなんかですか?部屋の鍵も閉まってるしどうやって入ったんですか?」

「ふふっ。それは秘密ですよ」

「秘密って‥‥」

「言っちゃったらもう会えないかもですよ?それでもいいんですか?」

「それは嫌だけど‥‥」

「細かい事は気にしない気にしない」

 気にしないって言われても‥‥。

 このスイッチ何?!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

美咲の初体験

廣瀬純一
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...