上 下
7 / 28

7

しおりを挟む
生徒会室は3階の西側にあり、"生徒会室"と筆書きで古めかしく書かれたクラスプレートはくたびれたサラリーマンのように垂れ下がっていた。

佐藤先生はノックも無しに生徒会室に入っていった。僕は入り口から中をそれとなく覗くと何人かの役員らしき生徒がパソコンの前で書類を作成していた。


「よお、清水、悪いな忙しいところ」
「佐藤先生、待ってましたよ」


佐藤先生が役員と思われる、身長がやけに高い清水という男子生徒に声をかける。
書類を何枚か渡すと、会話をし始めた。




今だ!2人で会話をしている隙に僕はそーっとその場から
右足だけそろりと後ずさりさせた。


その時佐藤先生のおでこに無数の皺が走るのが見えた。まずい!

「松川ァ!」
「ひっ、はいぃ」
「今バックレたら……!!どうなるか…分かるな!?」
「ひぃいい!!」

どうして僕が逃げようとしたのが分ったんだ?もしかして僕より察しが良いのか?  
そんなに背後から負のオーラ出さないで、お願い!


そして……まだ入り口にいる僕を部屋になかば強引に招きいれた。ぐぬうぅぅ御主には負けた! と一人負け侍の心境。

「こいつがさっき話した松川だ」

「へぇー、この子が、わかりました。じゃあウチで引き受けますんで」

「ああ、宜しく頼むわ、じゃあな松川、しっかりな!」


そういうと佐藤先生はドアをやや強く締め出ていった。ドアが閉められると僕はいきなりの展開に何を話していいやら全く訳がわからず、挨拶だけでも形だけしようとしどろもどろ自己紹介をしてみた。

「あ、あの、松川です」

「君の事は知ってるよ、何人かから聞いてるから、あと同級生だからため口でいいよな?」


えっ、何人かって誰? 先生以外に僕の事知ってるやついるの?

僕は動揺して思わず口がうまく回らず変な感じで

「えっ?同級生?1年なんでしゅか?」

うわ、ダセ~!なんですかとタメ口で言おうとしてへんな赤ちゃん言葉になっちまった。

「へ?しゅか?」

そう言うと清水君はあっけに取られた後少しだけ笑うのを我慢するような苦笑をしていた。口元を左右にそんなに歪めて笑うの堪えなくてもいいよ、馬鹿にされるのは慣れてるから。


そして清水君の苦笑につられるように、生徒会室の奥のほうで書類を作成していた別の女子と思われる役員の笑い声が大きく聞こえてきた。

「ぷっ!あっははは!なにそれ~!1年なんでしゅか、だって~!めちゃ面白い~!……あぁっ!」

奥に座っている爆笑の女子役員を、すかさず清水君がたしなめる。

「おい、そこ笑いすぎ! しかも笑いすぎて他校に出す書類しくじってるし、それ、お前が全部書き直しな。この際だからこっちに来なよ。新しい人、佐藤センセから紹介してもらったから」

「は~い」


そう言うと奥のほうから清水君程ではないけど、僕より少しだけ背が高くて色白でロングの女子が近づいてきた。なんか目が青いんだけど?ハーフ?

「田中、紹介するよ、こちら松川君だ。ここにいる笑い声にちょっと品が無いのが田中。下の名前は怒るから後で自分で聞いてね」

「ゲス海、そんな事言って…、後で覚えてろよな!」
さっきまでの調子をコロっと変え、田中さんという女の子がこちらに向き直った。
 
「さて!あなたが松川くんね、よろしゅくお願いしま~す。あとさっきの書類判子ずれっちゃたから作り直し手伝ってちょーだい!」

「はい、あの…、よろしくお願いします」

顔が紅潮してくるのをごまかそうと、少し体を横向きにして隠しながら早くこの瞬間が終わることを、切に願う。女子は苦手なので表情はまともに見れない。

「あれ、なんか顔が赤いよ、どうしたの?ねえ?」

「いや、なんでもないです」


頼む、これ以上話しかけないで! あと近い!距離が近すぎ! ストⅤでも接近戦は苦手なのに。否が応でも僕の視界には田中さんの顔が入り込んでくる。なんの嫌がらせ?でも、僕が女嫌いということはここの人たちは知らない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...