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第二章
生徒会-03
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一瞬、何を言われたか理解が出来なかったが……何とか認識できた。
生徒会へ所属して頂きます、とは。何とも妙な言い方だ。これでは、オレが生徒会に所属する事が確定しているような言い方じゃないか。
「あー、すみません。オレ別に生徒会って興味無くて。お断りさせて貰おうかと」
申し訳なさそうに、だが本心では何とも思わず断りの言葉を口にしたオレに、彼女は首を横に振った。
「貴方は帰国子女で、まだ日本語を理解できてないようですね。柔らかな言葉遣いをした事が裏目に出ましたか。ではもう一度言い直します。――生徒会に所属しなさい。これは命令です」
有無を言わさぬ、と言わんばかりの言葉で、彼女はオレにそう命じるのだ。
「……あのさ、オレ命令される立場に無いんじゃ」
「これは城坂聖奈理事長にも了承を得た、正当な命令です。あなたに拒否権はありません」
「あーもー、意味分かんねぇ。何で姉ちゃんがそんな事を了承して、しかもオレの意思を無視して、生徒会なんぞに所属させようとしてんのか。訳を言ってくれよ」
少しだけ苛立って、敬語を外して話し始める。もとより一年Aクラス所属という事は、同い年な筈だからだ。
「あなたに、知る権利はありません」
鋭い視線をオレから外す事無く言い放った秋沢の言葉に――相変わらず沸点が低いのか、苛立ちを隠せずに力強く立ち上がってしまう。椅子は床に転がって、ガランガランと大きな音を奏でた。
「知る権利もねぇ、拒否権もねぇ!? お前らオレをバカにしてんのか!?」
「では説明しましょう。書記が足りないからです」
「他の奴にやらせろよそんなの。オレには関係無い」
「何度も言わせないで頂きたいですね。これはあなたのお姉様である、城坂聖奈理事長にも了承を」
「じゃあこれも説明しろよ。なんでオレなんだ」
「ですから――あなたに、知る権利はありません。なので、説明も致しません。言葉の意味が、分かりますか?」
ダメだ、こいつに何を言っても無駄なようだ。オレは部屋の中を見渡し、きちんと説明をしてくれる奴を探そうとした所で――部屋の壁に背を付ける、一人の男が目についた。
男は、首元まで伸びた蒼髪と、知的に見えるシルバーの眼鏡、スッと綺麗に伸びる目、鼻、顔立ちが印象強い美少年……と言うべき男だった。彼は、オレと視線が合うとフフッと微笑み、秋沢に向けて語り掛ける。
「会長。人間は逃げ場を失うと反発する生き物です。彼に納得のいく説明が出来ないと言うのならば、別の方法で納得をさせるべきではありませんか?」
「では久瀬先輩。貴方はどうすれば良いと言うのですか?」
「簡単です。命令では無く、交渉にすべきなのです」
青年はオレへと再び視線を向けると、僅かに頭を下げながら自己紹介をしてくる。
「僕は久瀬良司、生徒会長補佐を行っている。所属はパイロット科三年Aクラスだ。宜しくね、城坂織姫君」
「はぁ、よろしく」
「では、交渉と行こうか。隣、いいかな」
オレが先ほどまで座っていた椅子の隣に、パイプ椅子を持ってきて腰かけた久瀬先輩とやらは、オレにも「座りなよ」と進言してくる。少しはこちらの話を聞いてくれるつもりらしい。先ほど転がせたパイプ椅子を整え、再び腰かけた。
「君を呼んだ理由は、会長が言った通りだ。書記が足りなくてね、君に入ってもらいたい」
「オレは生徒会なんかに興味無い。それでもオレにやれってんなら、訳を話してくれって言ってるんだ」
「君の怒りは仰る通りだ。僕とて興味の無い所に所属しろ、異論は認めないと言われれば、断りの言葉一つでも言うだろう」
「じゃあ、説明してくれるのか?」
「それがね、無理なんだ。正確に言うと分からないんだよ」
溜息をついた久世さんは、やれやれと言うように苦笑を浮かべた。
「分からない? 生徒会が、生徒会の役員を強引にスカウトする理由が?」
「そうだ。僕達は理事長に命令されただけでね。生徒会と言う組織は、武兵隊と同じく理事長直属の組織であるからして、こちらも命令を拒否する事は出来ないんだ」
「理事長って、姉ちゃんなんだよな」
「その通り。君のお姉さんに命じられ、君のお姉さんの言葉に従う他ない。それを拒否すれば、僕達はおそらくこの学校に居られなくなる」
「姉ちゃんは、そんな事をするような人じゃ」
「するよ。城坂聖奈はする。彼女は自身の目的の為に手段を選ばない。君が生徒会に所属しなければ――」
オレから目を逸らし、少しだけ遠い目を浮かべた彼の言葉に、しかしオレは頷く事は出来ない。この人たちが学校に居られなくなるだろうが何だろうが、オレには説明を受ける権利があるだろう。
「だから、僕は君に一つ提案がある」
「……提案?」
「僕と、今ここにはいないが、もう一人パイロット科に所属する一年が居てね。二対二の模擬戦を行おうじゃないか」
「何を」
「僕達のチームが勝てば君は生徒会に入る。君と、君が用意した人員のチームが勝てば、この話は水に流そう。これでどうだい?」
聞く分には、何の問題が無いようにも思える。が、しかし――
「俺には、何のメリットも無いんだけど」
そう、メリットが皆無なのだ。別にオレはこの勝負を受けようが受けまいが、生徒会に入るつもりは無い。むしろ受ける事によって生徒会に入らされるかもしれないと言うデメリットが生まれてしまうのだ。こちらにとって分が良い提案でなければ、跳ね除けても問題はない。
生徒会へ所属して頂きます、とは。何とも妙な言い方だ。これでは、オレが生徒会に所属する事が確定しているような言い方じゃないか。
「あー、すみません。オレ別に生徒会って興味無くて。お断りさせて貰おうかと」
申し訳なさそうに、だが本心では何とも思わず断りの言葉を口にしたオレに、彼女は首を横に振った。
「貴方は帰国子女で、まだ日本語を理解できてないようですね。柔らかな言葉遣いをした事が裏目に出ましたか。ではもう一度言い直します。――生徒会に所属しなさい。これは命令です」
有無を言わさぬ、と言わんばかりの言葉で、彼女はオレにそう命じるのだ。
「……あのさ、オレ命令される立場に無いんじゃ」
「これは城坂聖奈理事長にも了承を得た、正当な命令です。あなたに拒否権はありません」
「あーもー、意味分かんねぇ。何で姉ちゃんがそんな事を了承して、しかもオレの意思を無視して、生徒会なんぞに所属させようとしてんのか。訳を言ってくれよ」
少しだけ苛立って、敬語を外して話し始める。もとより一年Aクラス所属という事は、同い年な筈だからだ。
「あなたに、知る権利はありません」
鋭い視線をオレから外す事無く言い放った秋沢の言葉に――相変わらず沸点が低いのか、苛立ちを隠せずに力強く立ち上がってしまう。椅子は床に転がって、ガランガランと大きな音を奏でた。
「知る権利もねぇ、拒否権もねぇ!? お前らオレをバカにしてんのか!?」
「では説明しましょう。書記が足りないからです」
「他の奴にやらせろよそんなの。オレには関係無い」
「何度も言わせないで頂きたいですね。これはあなたのお姉様である、城坂聖奈理事長にも了承を」
「じゃあこれも説明しろよ。なんでオレなんだ」
「ですから――あなたに、知る権利はありません。なので、説明も致しません。言葉の意味が、分かりますか?」
ダメだ、こいつに何を言っても無駄なようだ。オレは部屋の中を見渡し、きちんと説明をしてくれる奴を探そうとした所で――部屋の壁に背を付ける、一人の男が目についた。
男は、首元まで伸びた蒼髪と、知的に見えるシルバーの眼鏡、スッと綺麗に伸びる目、鼻、顔立ちが印象強い美少年……と言うべき男だった。彼は、オレと視線が合うとフフッと微笑み、秋沢に向けて語り掛ける。
「会長。人間は逃げ場を失うと反発する生き物です。彼に納得のいく説明が出来ないと言うのならば、別の方法で納得をさせるべきではありませんか?」
「では久瀬先輩。貴方はどうすれば良いと言うのですか?」
「簡単です。命令では無く、交渉にすべきなのです」
青年はオレへと再び視線を向けると、僅かに頭を下げながら自己紹介をしてくる。
「僕は久瀬良司、生徒会長補佐を行っている。所属はパイロット科三年Aクラスだ。宜しくね、城坂織姫君」
「はぁ、よろしく」
「では、交渉と行こうか。隣、いいかな」
オレが先ほどまで座っていた椅子の隣に、パイプ椅子を持ってきて腰かけた久瀬先輩とやらは、オレにも「座りなよ」と進言してくる。少しはこちらの話を聞いてくれるつもりらしい。先ほど転がせたパイプ椅子を整え、再び腰かけた。
「君を呼んだ理由は、会長が言った通りだ。書記が足りなくてね、君に入ってもらいたい」
「オレは生徒会なんかに興味無い。それでもオレにやれってんなら、訳を話してくれって言ってるんだ」
「君の怒りは仰る通りだ。僕とて興味の無い所に所属しろ、異論は認めないと言われれば、断りの言葉一つでも言うだろう」
「じゃあ、説明してくれるのか?」
「それがね、無理なんだ。正確に言うと分からないんだよ」
溜息をついた久世さんは、やれやれと言うように苦笑を浮かべた。
「分からない? 生徒会が、生徒会の役員を強引にスカウトする理由が?」
「そうだ。僕達は理事長に命令されただけでね。生徒会と言う組織は、武兵隊と同じく理事長直属の組織であるからして、こちらも命令を拒否する事は出来ないんだ」
「理事長って、姉ちゃんなんだよな」
「その通り。君のお姉さんに命じられ、君のお姉さんの言葉に従う他ない。それを拒否すれば、僕達はおそらくこの学校に居られなくなる」
「姉ちゃんは、そんな事をするような人じゃ」
「するよ。城坂聖奈はする。彼女は自身の目的の為に手段を選ばない。君が生徒会に所属しなければ――」
オレから目を逸らし、少しだけ遠い目を浮かべた彼の言葉に、しかしオレは頷く事は出来ない。この人たちが学校に居られなくなるだろうが何だろうが、オレには説明を受ける権利があるだろう。
「だから、僕は君に一つ提案がある」
「……提案?」
「僕と、今ここにはいないが、もう一人パイロット科に所属する一年が居てね。二対二の模擬戦を行おうじゃないか」
「何を」
「僕達のチームが勝てば君は生徒会に入る。君と、君が用意した人員のチームが勝てば、この話は水に流そう。これでどうだい?」
聞く分には、何の問題が無いようにも思える。が、しかし――
「俺には、何のメリットも無いんだけど」
そう、メリットが皆無なのだ。別にオレはこの勝負を受けようが受けまいが、生徒会に入るつもりは無い。むしろ受ける事によって生徒会に入らされるかもしれないと言うデメリットが生まれてしまうのだ。こちらにとって分が良い提案でなければ、跳ね除けても問題はない。
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