君色

あんず

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まぁるい武ちゃん。

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……美波さんの院内ピッチがテーブルの上で震えた。


「ちょっとゴメンね。


はい。    篠宮先生…………はい……


ありがとうございます。


はい…………聞いてみますね?」



美波さんは電話口を押さえながら美月を見た。


「美月? 武ちゃんが美月と会いたいって、

どうする?」





美月はソワソワし始めて俺の隣りに座った。


「武ちゃん?遊んでくれるの?」


「……たぶん?」


「行く!みんなで遊ぶ!!」


美月は嬉しそうに俺を見上げてニコニコして
俺の返事を待っているようだ。


「陸空センパイ、時間平気ですか?」

「「もちろん」」


「美月、武ちゃんとみんなで遊びたいか?」

美月はニコニコしたままだった。



「美波さん、お願いします。」









美波さんは俺の返事に頷き、今から行くと伝えていた。





「じゃあ、行こうか?」


みんな席を立ち、美波さんの後に続く…………


『わぁ~ん』と子供の泣き声に振り返る。









美月が小さい子供みたいに泣いていた。


俺は慌てて戻り

「美月どうした?」と声をかけた。


「しのぶ、ミキいっしょなの。」

そう言いながら両手を広げる。
泪をポロポロと零しながら真っ直ぐな瞳で俺を射抜く。


「お姫様は抱っこがいいのかな?」

美月の目線に屈んで声をかけると嬉しそうに


「しのぶにぎゅうするの。だっこなの。」

泪は零れているものの瞳は笑っていた。


俺は一安心して美月を抱き上げた。






陸センパイが扉を押さえてくれていた。


「ありがとうございます。」

「ん。」



「ミキちゃん、ノブくんの抱っこ嬉しいね?」

と空センパイが声をかければ
美月は嬉しそうに足をバタつかせた。


「美月危ないからちゃんとおつかまりだよ?」


ちょっと注意したらシュンとした美月……


可愛いと思った。












「ちょっと遠いけどノブくん大丈夫?」


「はい。美月を甘やかしたいですから。」


俺の言葉に美波さんも陸空センパイも声を殺して笑っていた…………。



「お前、どれだけ姫のコト好きなんだよ……」

陸センパイが笑いを押さえて言った。












どれだけって

…………離したくないくらいだけど……







恥ずかしくてそんなコト言えない。






「美月、可愛いから仕方ないですよ?」


そんな言葉でごまかした。





「美波さん、武ちゃんてどなたですか?」


「うん。」


美波さんは美月をチラッと見た。

最初に電話で『篠宮先生』と言っていたので
医師なんだろう。


「美月のお友達ですか?」


「小学生の頃からの友達だよ?なっ美月?」


「武ちゃんね、まぁるいの。

ふふっ。まん丸なの。」


「美月、嬉しいな?」


「ミキ、嬉しい。しのぶずっといっしょ。」





今の美月がどういう状態か不安だけど

『しのぶずっといっしょ』の言葉が

俺を安心させた。







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