君色

あんず

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お人好し。

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最後に職員室に行った。



「楠木、ありがとう。」

俺がそう言うと

楠木は職員室のドアを開けた。


「池田先生、河野くんの案内終わりました。」


「あ~お疲れさん。

河野、コレ全部やる。やっとけなぁ~」


「えっ?     1人で?」


「ん~     楠木、頼むわぁ。」


「……はい。」


「ちょっ     先生、悪いよ?」


「楠木、悪いのか?」


「大丈夫です。」


「ほら、大丈夫だって。

河野、良かったな。」


「失礼します。」

そう言って楠木は中学3年のテキストと
問題集を運ぼうとした。


「楠木、俺自分で運ぶから……」


少し間が空いてから

「じゃっ」と

半分だけテキストを持った。


「ありがとう。」

「ん。行こ。」



2人で職員室を出た。





「楠木?用事あるんじゃないの?

編入生の面倒押し付けられてイヤじゃないの?」









「金、土、日以外は時間取れるし

僕も復習になるから大丈夫。」


「いいのかよ?」


「ただ、どこでやる?

学校の自習室や図書室だと話しながらできないし……。」


「楠木がイヤじゃなければ

俺んちでいい?」



「ん、大丈夫。」


「じゃあ来週からよろしくな?」

俺は右手を差し出した。


楠木は少し躊躇ったようだが

握手してくれた。


「がんばろうね。」

「サンキュ。」





やっぱり

楠木はお人好しだ。







握った楠木の手が

とてもキレイで

細くしなやかな指を

ずっと離したくないと思った。











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