初恋

あんず

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天使。

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「おじさんも辛かったですね。

スミマセン。

でも今の独り言じゃミナが傷付かなきゃならない理由がわからないです。

だって
おじさんは、おばさんの罠にかかったかもだけど
大切なミナを産んでくれて感謝してるってコトでしょう?

なのに何で
ミナがおばさんに『産まなきゃよかった。』って言われなきゃいけないか

俺、わからないです。」




おじさんは目を丸くしてる。



「そうだね。

義弥くんはちゃんと話しを聞ける子なんだね。

ありがとう。
俺のコト『辛かったですね』って言ってくれて。

そんなコト言われたの初めてだ……」


おじさんの目から大粒の涙が溢れ出した。
この人もミナと同じだ。

優し過ぎて1人で苦しんでいる
『弱いイキモノ』なんだ。

俺はおじさんの隣りに座って
おじさんの手を握った。



「偶然ね、本当に偶然。『天使』を見かけたんだ。


小さな女の子と一緒にいた。

結婚したのかなって思ったんだけど
女の子は美波と同じ歳くらいに見えたんだ。



彼女はシングルマザーだったよ。
15で子供を産んで保護を受けながら通信制の高校を出て大学まで卒業して
今、医者をしながら1人で子供を育ててる。


義弥くん解る?」



俺は言葉を無くして
胸が苦しくなった。


「ゴメンね。

こんな重たい話し。

今まで誰にも話したコトなかったのに。

君には不思議な力があるのかな?

だから美波も君といたいんだろうな。」



「おじさん……」
俺はおじさんの背中をさするのが精一杯だった。


「全ては俺が臆病だったから。

あの時『天使』にちゃんと気持ち確かめていたら、

彼女も葉月も

美波も傷付かなかったかもしれない。


彼女がシングルマザーってわかってから
いつも謝っている夢をみる。

声に出てたんだよ……葉月がそれに気付いて。

俺が葉月を苦しめた。

そして葉月が美波にあのコトバを刺してしまったんだ。」



おじさんは
まだ中学1年の俺の問いに答えてくれた。
今の話しに嘘は1つもないと思う。

「おじさん。ゴメンなさい。

辛い話しをさせてしまいました。


でもこの現状が変わらないのなら

俺がミナをもらいます。

ミナは俺が愛します。



俺にも辛いコトは有ります。
イヤな自分もいます。
汚い自分もいます。


でもミナは俺の全部を欲しいと言ってくれました。



俺はミナの綺麗なココロで癒されてます。

俺たちはお互いを必要としています。

まだ中学生だとか

男同士とか

そんな目で見ないで欲しいです。




スミマセン。

さっき会ったばかりなのに生意気で……」




「義弥くんありがとう。

俺と美波は君に救われたよ。

君はスゴいよ。出会えて嬉しいよ。

君は間違えないでね……」




バタンと扉が開いて大きな足音がする。

「ヨシ、ヨシ、ヨシ、義弥。」

ミナが叫んでリビングにやって来た。

俺は慌ててミナを抱き締めた。



「ヨシがいないよ。ダメだよ。

ヨシが消えちゃう。」

ミナは興奮して泣き叫んでいる。



俺はおじさんの前だけど

ミナを抱き締めながら一緒にソファに座り

キスをした。

ミナが俺のTシャツを脱がして

俺の胸に頭を擦り付けてくる。

「ミナ、ゴメンね。ちょっと眠れなかったんだよ?

おじさんにミナの可愛い話し聞かせてもらったんだよ?」

何度も
何度も
ミナの茶色い柔らかなクセのある髪を撫でる。

ようやくミナが落ち着いてきた。

気持ち良さそうに俺の肌に触れている。









「おじさん、まだ俺たち中学生ってわかってます。

でもミナはこうしないと落ち着かない。

ミナはずっと1人で眠れない夜を過ごしてきたんです。

幼稚かもしれないけど

俺たち真面目です。

ミナと一緒にいさせてください。」




ミナは聞こえているだろうが

眠そうにトロトロしている。

俺にしがみついて離れそうにない。






「義弥くん、すまないね。

今、とても驚いていて上手いコトバが出てこない。


初めてなんだ。

初めてあんな美波を見たんだ。


あんな感情剥き出しの美波、見たコトない。





やっぱり親、失格だ。


でも美波の父親で良かった。





義弥くん
美波の側にいてやって欲しい。

俺からもお願いします。」



そう言って
おじさんは俺に頭を下げた。




「はい。」
俺は頷いた。



眠りに入ったミナに声をかける。

「ミナ、ベッドに行こう?」

俺にくっついて離れそうにもない。

手を外そうとすると興奮してしまった。

「ヨシ、ヨシ、ヤダよ。離れないよ。」


俺はおじさんに頼んで毛布をとってきてもらい
このままソファで休むことにした。


ミナを抱き締めながら……


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