上 下
201 / 241
第五章

第201話 王都に入りましたよ

しおりを挟む
「あっ、あぁぁぁぁー! 思い出しました! 湖で遊んでる場合じゃありませんよ! せっかく急いで来たのに!」

 そうです、王城に資料を持っていかないといけないのを、楽しすぎてすっかり忘れ、三十分くらいは遊んでしまいました。

「はぁ、遊びすぎました。えと、じゃあとりあえずどこに向かいますか? 王都の別邸などはあるのですか?」

「ふう、そ、そうだな、少しはしゃぎすぎたようだ。別邸はもちろんあるぞ、管理の者が、三人住み込みでいるはずだ」

「あー楽しかったわね、じゃあその別邸に上から入って、その三人を確めてから王城ね」

「なんじゃ、もう終わりかの? まあ仕方なかろう。じゃが、門から入らなくても良いのか?」

 そうですね『えぇぇぇー!』を聞きたい気もありますが、ここは我慢ですね。

 なので僕は湖すれすれ飛行から上昇に切り替えて、高度を揚げます。街全体を見れるように高くまで上昇すると。

「ふむ。あの真ん中が王城で正門があそこだとすると、ああ行ってこうだから、ライ殿、あの水色の屋根から王城の方へ三邸行った小さな屋敷が私のだ」

「でもお庭は広いですね、僕は広いお庭が良いと思います」

「うむ、小さいながら池や林とは中々手入れも大変じゃろうに」

「今度、果物の木でも植えてあげるわよ、ほら行きましょう」

 そして、目測で転移しました。

 パッ

「到着です。あれ? ······沢山、二十人以上の人がいますね? それも、魔道具付きです」

「ちょっと見てみるわね。んん神眼~、称号は大丈夫だけど。ライ、一応気絶させて庭に連れてきなさい」

「うん。じゃあ。ぐるぐる~、ほいっと! それから転移! も一つ収納!」

 んと、二人のメイドさんと庭師っぽい方はすっぽんぽんでうつぶせになって気絶していますので、服とパンツを履かせておきます。

 他の方達なのですが。

「小さい子ばかりですね? ナガト男爵さん、この子達は?」

「分からん。この屋敷はな、年に二回王城での集まりに来るのだが、その時に数日間だけ使うのだが」

「あれじゃない? 洗脳する子達。ナガト、この近くの屋敷で、普段あなたみたいに住んでないお屋敷はあるの?」

「ある。貴族街の半分ほどがそうだ。住んでいるのは城勤めの貴族くらいだろうな、後は小さな領地にいるはずだから、領主はほぼここの屋敷と同じような感じだな······だがまさか、こんな王城近くで、こんなに沢山の子供を」

 ナガト男爵さんは子供達を見ながらそう呟きました。

 薄汚れたワンピースのようなものを着せられた子供達。

 ナガト男爵さんと相談して、まずはこの三人に話を聞くことにしました。

 聞くと、これまた驚きだったのですが、王都の地下にはクモの巣のように地下道が張り巡らされていて、貴族達がいる時は地下にある収容所に子供達を入れ、帰った後は、屋敷で宰相さんの言いなりに育てているそうです。

 メイドさんに頼んで地下道の地図を出してもらい、見てみると。

「うわぁ、王城以外の地下がほとんど駄目じゃないですか、ん~と、そうですね、今は地下には少ししかいません。少しと言っても二十人とちょっと、ここと同じ感じでしょうか? まあ、魔道具も付いていますから、ぐるぐる~、ほいっと! 転移! 収納! よしよし、あっ、また裸ん坊ですね、ほいっと!」

「たぶん二十人の子供に分けて管理してるのかもね、ほら、この三人にも話を聞いて、ってそうね、ライ、この人達は、お屋敷に送っちゃいましょう。面倒だけど、いくつお屋敷があるか分からないけど、相当な数になりそうだもん」

「そうですね、そうだ! えっとカヤッツは············いました。マリーアも一緒ですからついでに来てもらいましょう! 転移!」

 パッ

 転移で連れてきた二人は抱き合って、ちゅってしています。

「ライ! 可哀相でしょ!」

ラ、ライ坊っちゃん!ラ、ライ坊っちゃん!

「ごめんなさい二人とも、ちゅの邪魔しちゃったね。あのね、この子供達を一旦サーバルに連れていって欲しいんだ。たぶん人攫いの犠牲者なんです。それでですねお屋敷で一旦預かって、どうするかなんですけど」

 二人は真っ赤な顔でしたが、僕の話を最後まで聞いてくれました。

「はぁ、ライ坊っちゃん、分かりました、アマンダにも協力してもらいます」

「ライ坊っちゃんの事だからこの······四十人ほどでは終わらないのですよね? マシューにも動いていただきます」

「それからね、この子達は――」

 洗脳の話や、貴族達と兵士の宰相さんによる奴隷化の話もしておきました。

「なんて事を、分かりました、子供達にも一応奴隷の腕輪を嵌め、様子を見ながら対応いたします」

「その六名の者にはお世話の手伝いもしてもらいますので、そのまま一緒に送って下さい」

「ありがとう。カヤッツにマリーア、アマンダさんとマシューにもよろしく伝えて下さい」

 二人は深く頷いてくれましたので、転移で送りました。

「じゃあ、貴族街をやってしまいましょう」

その前に、ナガトさんに貴族街の地図を見てもらいながら、まずは地図にある自分のお屋敷に印をしてもらい、一つずつ回っていくつもりです。その際、王城勤めで悪者の名簿に名前が乗っている人のお屋敷から回る事にしました。

悪者のお屋敷は、三十人もお城で働いているようで残りも全部あわせると、六十七ものお屋敷がありました。

さあ、頑張っちゃいましょう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...