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第三章

第97話 巣穴の奥で

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「うわぁ。足の踏み場も無いですね。地面がファイアーアントで埋まってますよ。これじゃあ山にも近付くことさえできませんよね」

「うじゃうじゃですよ~気絶していなかったらこの数ですと逃げ場はありませんね」

「真っ赤っかにゃね~。ゆっくり見てるにゃらさっさとやっつけないかにゃ?」

 ん~、でも次から次へと生まれてますからやっぱり女王蟻からやっつけないと中々減らないのも確かなんですよね~。

「ライ。女王はどんな感じなの? 気絶はしていないし魔力も生まれた時に減るけどまたすぐに戻ってるわよね?」

「そうなのですよ。地中深くにいる女王さんにぐるぐるを集中すればいけると思うので少しやってみますから、テラ、魔力の減りを見て貰えるかな? プシュケとリントは攻撃してくれてて良いよ」

任せて!やるにゃ!

「良いわよ。じゃあ始めて! んん神眼ー!」

「行くよ! 五分で結果が無ければ長期戦になるからね! ぐるぐるー、ほいっと!」

 女王以外のぐるぐるを止め、集中攻撃です。

「良い感じに減ってきてるわ。でもこれは時間が足りないわよ。やっぱり回復のようね、厄介だわ」

「それだと間に合いませんし他の子が起きちゃいますし。女王さん回復の魔道具でも持って············」

そうか回復の!それよライ!

「何々? 良い事思い付いたの?」

「なんにゃ?」

「ぬふふふ。回復をね、女王さんは魔法を使ってやっているのですよ♪ スキルかなって思っていましたが、魔力を使いながらです」

「良く気が付いたわライ。あれは古代魔法とまた系列が違うけれど古くからある魔法。魔物に特化した魔法だけど上位種はそこそこ使っているわね」

 プシュケとリントは思案顔で、でも魔法は止めずに撃ち続けてますから短い時間ですが上達していますね。

それね!それにゃ!

「くふふふ。その魔法をぐるぐるさせてあげれば~、そしてさらに子供を作るのも魔法みたいですから、そちらもぐるぐるさせちゃいます!」

 それなら魔力も増えないし、数も増えませんからね。

「じゃあやっつけちゃいましょう!」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 さて、今は洞窟の中にいます。表のファイアーアントは昨日と今日の朝からお昼までかかりましたが倒しきり、残りはひと山分の巣を片付けるだけです。

「ああ! またここにも分かれ道があるじゃない! まったくもうー、よく崩れないものね!」

「ファイアーアントはもう飽きたにゃ~」

「でもさっき宝石がありましたから頑張りましょー!」

「そうだよね、凄く沢山集めていたし、それも今まで二か所もあったよ」

 ファイアーアントは宝石を集める習性が
 あるようで、小さな部屋にゴロゴロと宝石が山になっていました。

「そ、それはそうね。そこは褒めて上げるわ、唯一そこだけはファイアーアントの良いところかもね」

 そんな感じで、巣の中でお泊まりしながら一週間。ようやく女王の前までやって来ました。

「でかいにゃー、それに綺麗にゃ」

「まあまあの大きさね。くふふふ。それにピカピカよ!」

「うんうん。一週間もかけて来た甲斐がありますよね」

 えっと、おーいみんな女王さんを見てあげようよ······。

 みんなが見ているのは、途中にあった宝石とは別格に大きな宝石の山。······僕が見ているのは、ヒュドラの胴体ほどある大きなお腹の女王さん。

 みんなは宝石にばかり目が行ってますので、見て貰えない女王さんが少し悲しげに見えたのは錯覚でしょうかね······。

「あはは。まあ喜んでるならそれで良いですよね。よし。お腹が大きいだけで、体は普通の子経ちの倍くらいしかありませんし、ウインドカッター!」

 シュンと飛んでいったウインドカッターは、なんの抵抗もなく女王さんの首を落として、ファイアーアントの討伐は完了しました。

「収納! あれ? 女王さんがいたところに何かな? テラ、女王さんの居たところだけど祭壇かな?」

「何! ライ! 今は宝石の鑑定に忙しいんだからね! じゃなくて、じょ、女王ね、あはは。何もう倒しちゃったの! えらいえらい」

 あはは。宝石に集中しちゃってたみたいですね。まあ慌ててるテラも、手をバタバタさせたりして可愛いので許してあげましょう。

「うん。ちゃんと倒せたよ。それでね、女王を収納したんですがあんなものが女王の下から出てきたので何かなって」

「そ、そうなのね。任せて。んん神眼~。へぇ、ライ祭壇よあれは、それも神器があるわ。みんな滅多に見れるものじゃ無いから見ておきなさい」

 そこでようやく宝石から目を離したプシュケと宝石の上で器用にお手玉していたリントがこちらを見ました。

「二人とも、滅多に見れない神器があるみたいなんだ、見に行かない?」

神器?神器にゃ?

「そうよ。かの世界樹イルミンスールの枝と、世界樹ユグドラシルの枝を絡め合わせて造られた杖よ。使用者がシンディとなっているから、あなた達には使えないけどね」

 宝石は収納してしまい、みんなで祭壇へ向かいます。

 祭壇の上には、ポンと置かれただけの杖が一本。女王さんが乗っていたのに、壊れた感じも、汚れも何もない綺麗で新品にしか見えない僕の身長くらいある杖でした。

「うんうん。見事な造りね、あの神が二人がかりで造っただけあるわね。杖の近くにいるだけで力を分け与えられてる感じになるもの」

 うんうん。本当に凄い力を持ってあるようです。魔力とは少し違った力ですが、凄いですね、魅入られるようです。

「はわ~。なんだか凄いのが分かる杖ですね。魔法の杖かぁ、私には少し大きいかな」

 そう言って手を伸ばしたプシュケ。

「うふふ。残念だけど使用者が限定されてるからどんなに力自慢や、それこそ神様でも簡単には持ち上がりもぉぉぉー! プシュケなんで持てるのー!」

「え? 触っちゃ駄目だったとか?」

 持てないはずの杖を、軽く片手で持ちあげたプシュケ、僕も神器持ち上げられるかな······。








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