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第一章

第31話 捕縛

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 お城を騎士さん達と出て、魅了魔法を解くためのぐるぐるを済ませた後、商人街の中でも王都で一、二を争う大きな商会の近くに来ました。

 どうやって? 馬車では音が五月蝿いため歩きで騎士さん達は革鎧に変え金属音を立たせないようにして足音も立てないように慎重に移動してきました。

 何か所かあった少人数の所にも騎士さんを残し、さらに移動。

 ここが商人街の中で一番魅了魔法があった場所で、魅了を解き少しザワザワとしているのが聞こえます。

 少ない人数の、商会にも別動隊が動いていますので、今頃は踏み込んでいるはずですから、僕達はこの商会に集中します。

 商会の入口から騎士さん達が門番さんと話をして大扉開いて貰い中に入ります。

 その際、一応抜け穴もコションから聞き出していて、そちらにも人員は配置済みなので逃げる事はまず無理です。

 案内してくれている門番さんに続き、お屋敷の中に入ったのですが、入って直ぐのホールに沢山の人達が集まり騒然となっていました。

「静まって下さい!」

 騎士さんの声に騒いでいた人達が一斉にこちらを向き、騎士さん達の姿を見て、止まりました。

 僕は小声でテラにお願いをします。

「じゃあテラ、一緒にお願い出来るかな? 僕だと詳しいところまで分からないから」

「任せておきなさい! んん神眼~!」

「ありがとう♪ 鑑定!」

 テラも僕も、騎士さん達の後ろから、こっそり称号を見て行きます。

 集まっていた十数名の内、二人の盗賊ギルド員がいましたので、騎士さんの手をつんつんして、小声で伝えると、隊長さんが商人さん達と話をしている内に素早く皆に伝達して行動を起こすタイミングを図ります。

「あの、僕があの寝間着の二人を」

「ライ、五人よ、偽装している奴が三人、あの壁際に並んでいる三人も盗賊よ」

 流石テラ師匠♪

「分かった、あの三人だね、皆さん僕がその五人を動けなくしますので拘束をお願いしますね」

 騎士さん達は半信半疑な顔ですが、頷いてくれました。

「行きますよ!」

 一気に魔力を回して上げると、中央に来て隊長の話を聞いていた二人は崩れ落ち、壁際の三人も、壁に背中を擦らせながらその場に座り込むように気絶しました。

 それを見た商人達は驚きこそしましたが、隊長さんが説明をして、寝間着の二人は商人さん達も鑑定をして納得し、壁際の三人も、装備していた腕輪を外すと偽装が外れ、称号が見えるようになりました。

「ここにいる人以外はどこにいるか分かりますか?」

「いいえ、今日はこの屋敷の持ち主、その壁際の三人に集められたのです」

 ふ~ん、この三人は偉い人だったのですね。

「ここにいる者達で商人ギルドの役職持ちは全員揃っております」

 商人ギルドの集まりがあったのですね、

「その、この寝間着で倒れている者は小さな商会で最近売り上げを伸ばしてきたあの三人の弟子と聞いていたのですが、この会では出席者ではありませんでした。この屋敷に住み込みしていたと聞いております」

 着崩れた寝間着ですもん、お話しする格好ではありませんし、他の人は清潔な白のシャツに高そうではあるけれど派手派手では無い服を着ていますものね。

「後は個々の商会にいるとは思いますが、王都から出ている者はどこにいるかまでは」

「ふむ、外は仕方がないか、よし話はここに残る者と進めて貰うとして、拘束を!」

 騎士さん達は素早く五人を拘束をし終え、外の馬車に放り込んでしまいました。

 次は魅了の魔力を崩した魔道具を回収して貰い、この屋敷の捜査のため騎士を十名残し残りはスラムに向かいます。

 ここには盗賊、暗殺のギルドがあるので、お城から騎士さんと衛兵さん達も追加で包囲、外に抜ける通りを全て封鎖、抜け道にも騎士さん達を配置してしまいます。

「ねえ、さっきの偽装の魔道具を全部使えなくしてからなら、ライでもギルド員を探れるわよね?」

「そっか! 夜だしみんなには寝て貰うつもりをしていたけど、それなら分かっちゃうよ♪ じゃあやっちゃうね、ほいっと!」

 お城の敷地よりは小さいので、十分スラム全体の気配を探れます。

「うんうん、沢山あるね。あっ! 地下にもいっぱいある! 騎士さん、偽装の魔道具と併せて気絶させちゃいますから、お願いしますね♪」

「はい、ライリール様、いつでも踏み込めます」

「ありがとうございます、せ~の、ほいっと!」

 ぐるぐるを一気に加速させて行き、偽装の魔道具を持っていた者はこのまま続けて、スラム全体を鑑定して行きます。

「ん~、偽装の魔道具をしていない方はギルド員ではない方ばかりですね」

「あら、そうなの? じゃあそろそろ、騎士さん達を動かす頃合いじゃない?」

「そうだね、隊長さん、そろそろお願い出来ますか?」

「分かりました。よし! 伝達! 踏み込むぞ!」

 小さな声ですが、騎士の皆さんは頷き、走り出しました。

 僕は隊長さんと一緒に、古ぼけた掘っ立て小屋に入り、入口以外に一つしか扉がない部屋に入り、奥の戸を開け進むと、ぽっかりと開けた中庭に出ることが出来ました。

 中庭にあるのは屋根付きの井戸だけですが、その井戸の裏側に地下に下りる階段が井戸の蓋で隠されてあり、そこが地下への入口のようです。

 隊長さんと僕が最初に入り、その後を次々と騎士さんが地下に下りて行きます。

 僕と隊長さんが一緒に、大人二人が並んで歩ける幅がある階段を下りて行き、突き当たりのドアは魔法の鍵なので僕がぐるぐるして開けちゃいます。

「任せて下さい、ん~、ほいっと!」

 カチャ

 軽い音を立て鍵が開きましたので、中に進みました。

「はわぁぁ! 広いし明るいですね!」

 そう、中は所々太い柱はありますが、一辺が二十メートルほどある広場で、その壁にはいくつもの扉があって、部屋があるみたいです。

「ああ、これ程広い地下を作り、拠点にしていたのですか······これは見付からないはずです」

 隊長さんも半ば呆れながら、部屋全体を見渡しています。

「では扉の鍵は僕が開けていきますね」

 端から順にぐるぐるさせて鍵を開けていきます。

 そして扉が無い所の奥はさらに通路がありそこにも扉が並んでいました。

 それから地道に鍵を開けて行き、やっと最後の鍵を開け終わりました。

「よし、完了!」

 だと思ったのですが、途中の部屋のさらに奥にまだ通路がありました······。

 それから三か所の通路が発見され、もう、眠くて仕方がない、「なっ! モイヒェルメルダー伯爵様がいたぞ!」「奥様もだ!」「なんて事だ! 二人ともギルマスじゃないか!」「拘束して、他の者とは別の馬車へ!」朦朧もうろうとして目も半分閉じた状態で開けきり、外に戻って誰も乗っていない馬車で寝させて貰いました。

 おやすみなさい······。

 ガタガタガタガタ

「ふぁぁぁ~、ん? 捕縛が終わって帰るところでしょうか」

 馬車の座席に寝ていたのですが、あははは、またムルムルとテラは胸に乗ってますね。

 そっと持ち上げ体を起こして、膝に乗せ、この事が終わった後どこに行こうか考えます。

「誰この人達? あっ! この馬車も捕まえる用の馬車だったのですね。あはは」

 見てみると、ギルドマスターさん達ですね(笑)、クションのパパとママですか······それに子爵なのね。

 ん~、この二人は痩せているのに、なぜクションはあそこまでブクブクしちゃったのでしょう?

 って、関係ないですね♪ これから夏だから海! を見たいところですね。確か東の森を抜ければ海があるはずでしたね。

 確かエルフさん達が住む森とは正反対で、魔物の宝庫と本に書いてありました。

 うんうん、危険かも知れませんが、でも海は必要ですね。

 でも、中々お城に到着しませんね? 起きてから結構時間が経ったように思うのですが?

「まあ、ぐるぐるさせて時間潰しを再開しましょう♪ ほいっと!」

 場車内から外へ広げて行くと······。

 あれ? 馬車の周辺にいる方達が偽装の魔道具を持っているのですが? どうしてでしょう?

 僕は、ムルムルとテラを座席に下ろし、馬車の天井の開口部をそ~っと梯子を登り開け、外を覗くと走る何台もの馬車を囲むように馬さんに乗って、真夜中の王都を結構な速度で進む、盗賊と暗殺ギルドの集団でした。

 ありゃ~、騎士さん達がいないので捕まえた人達を奪われちゃった様ですね、あはは。

 門に向かって、王都を出るつもりのようですね、正面に篝火かがりびで浮き上がって見える門がみえますし。ん~、もう少しで王都の門前ですね。

 でも~、逃がしませんよ~♪ 偽装の魔道具と、あわせてぐるぐるですね♪ ほいっと!

 この集団に付いて移動していて、偽装の魔道具を持っている人達全員の魔力を加速させて気絶させて行きます。

 次々に落馬する盗賊と暗殺ギルドの面々、乗り主がいなくなった馬さんは速度が落ち、馬車の速度も、人が全力疾走しているくらいから、ジョギング、徒歩、といった具合に徐々にゆっくりになり、門前で止まりました。

 門前では兵士達が、戦々恐々として、身構えていましたが二十メートルくらい手前で止まったので、ホッとした顔が見受けられました。

 僕は馬車の屋根に上り、門番さんに声をかけました。

「門番さん、お城の騎士さんに連絡して下さい、この方達は盗賊と暗殺ギルドの人達なので♪」

 門番さん達は、鑑定をした人がいるのか口々に、「本当に盗賊だぞ!」「こっちは暗殺ギルドだ!」「すぐに王城に走れ!」「こいつらを縛り上げるぞ!」「応援を呼べ!」と門前は真夜中だと言うのに、物凄く賑やかになってしまいました。

 王城に馬を走らせる者、気絶した者を縛り上げる者、僕の方に来る者。

「すまないが、君がこの者達を気絶させたのかい?」

「はい♪ 今夜、騎士さん達とこの人達を捕まえる作戦をしていました」

 そう言うと、訝しげな顔ですが、騎士さん達が来ればすぐ分かるのにね、あはは。

 騎士さん達が来たのは三十分ほど経ってからでした。
 
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