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第一章

第28話 罪

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 アース兄さんをラクシュミー王女様とくっ付けちゃう事が出来ましたので、夕食会でシー兄さんとマリグノさんとくっ付けようと意気込み始めて一旦停止、やっぱりティの暗殺依頼の事をハッキリさせてからですね♪

「ライ、あなたまた何か突拍子もない事を考えてない? 大丈夫?」

 テラが僕の耳たぶを引っ張り小声で話し掛けてきます。

「ちゃんと考えていますよ♪ 相手の真相を確認してからにするから心配しなくても大丈夫♪」

「はぁぁ、さっきのお兄さんとお姫様の事はライが何もしなくても上手く行っていたの。あなたのお陰でもなんでもないのよ、そこは分かっているでしょうね?」

 うぐっ、た、確かにそうですね······。

「あはは、も、もちろん。慎重に進めるからね、あはは、はは」

「はぁぁ、頼むわよ、先走らないでね、ほら準備が出来たみたいよ」

 その声でメイドさんが執務室の中に入ってきており、夕食会の準備が整ったとお迎えに来てくれている事に気が付きました。

「うむ、マリグノ嬢も到着したのかね?」

「はい、別室にて待機中です、お呼びしましょうか?」

「くっくっくっ、シーリールよ、先に結果を知りたくは無いか? それにシャクティ、ライも、暗殺の件を解決してからの方が食事の味も良くなるであろう?」

 アース兄さんは見詰めあってそれどころではなさそうですが、ティ、シー兄さんは僕と同じく縦に首を振っています。

「あははは、よし、この執務室に呼んで貰えるか?」

「はい、ではすぐにお迎えに行って参ります」

「うむ、早めにな、奴が動き出す前に知っておきたいからな」



 メイドさんは一礼をした後部屋を出て行き、十分ほどでマリグノさんを連れて戻ってきました。

「ライよ、もう魅了は解けているのだな?」

 そうだよね、確認のため直接見て見ましょう。

 ありゃ? 首元に魅了の魔力が······あっ! それはそうですよね、魅了が解かれていたなら来ないと思いますし。

 って事は他にも人に直接ではなくて道具を使っている人がいるかもしれません!

「まだ残ってました。取り除きますね!」

 良く見ると、原因の物はネックレスの様ですね。

 先にぐるぐるさせながら魔力を崩して行き、外に出して丸め、吸い出し切ったところで収納しました。

 マリグノさんは、吸い出しかけた途端顔色が変化し、徐々に青くなり、ティを見てガタガタと震えだしました。

 吸い取りきり、収納する頃には跪き、もう土下座の様に手を床について頭も床に、ゴン、と音が鳴るほど叩きつけました。

「シャ、シャクティ様、この度は真に申し訳ありませんでした! どうか! どうか家には何の罪もございません! 私だけを罰して下さいませ!」

「マリグノ様、お顔を上げて下さいませ、マリグノ様は操られ、心にもない事をさせられた被害者と言う事になりますもの」

「ふむ、すまなかったな、その辺りの事を詳しく聞かせて貰いたいのだが」

「は、はい、あれは······」

 マリグノさんもティと同じ様に贈り物を貰い、その場で開けてしまった事。

 そこからはなぜか王子を慕う気持ちになり、付き従っていた事。

 王子はティの事を同じ様にして、自身の王位継承権を確実な物にするためだった事。

 それが中々上手く行かず、マリグノさんに暗殺者を雇わせた事。

 ラクシュミーにも、同じ様にする計画があった事。

 偽金の事も聞いたのですが、そこは分からないとの事。

「王様、僕は人についた魅了を目標に解除したので、こう言ったネックレスなどの魔道具に入っている魔力は、目標から外れていました、ごめんなさい」

 僕は頭を下げ謝ります。

「なので、今もお城の中に魅了に掛かった者がいて、王子に知らせてしまっているかも」

「何! それは不味いな、ライ、とりあえず今、ここからでも魔道具を解除出来るか?」

「マリグノさんの物を見てからしか気付けなかったので分かりませんが、やってみますね、ん~、ほいっと!」

 一気にお城を多い尽くすようにこの部屋から広げて行き、気配を探ります。

「あっ! あります! 解除しちゃいます!」

 ぐるぐるを加速させ、手元にまとめてしまいます。

「ほいっと!」

 量的に少なかった様ですぐに集まり、そのまま収納しました。

「少ないですが、地下から四個と、この階から三個の魅了魔法の魔力が集まりました! 王子様のお部屋は? 確かもっと上にありましたよね?」

 王子様の部屋に行くまで何度か階段の上り下りをしましたので、良く分かりません。

「この階は執務の部屋がほとんどです。王子様の部屋は最上階ですので、大丈夫だと思います」

 戻ってきていた宰相さんが教えてくれました。

「じぃ、ライと共に三個あった魔道具を回収してきて貰えるか?」

「分かりました。ライ様、よろしくお願いいたします」

「はい、すぐに行きましょう! まだ動いていませんので、では王様、行ってきます!」

 宰相さんと一緒に執務室を出て集まった方向を教えながら早足で進みます。

 すると、進む方向にある一つの部屋から怒鳴り声が聞こえてきました。

「宰相さん、場所はあの怒鳴り声のする場所に間違いなさそうです」

「なるほど、では入りましょう」

 コンコンコン

『ぬっ、どなたかね』

「宰相にございます」

『おお! ちょうど良いところへ! どうぞお入り下さい!』

 カチャ

「宰相様! 実は! ん? 宰相様、このお子は?」

 迎え入れてくれた部屋は執務用の部屋のようで三人の方が作業できるよう三つの机が置かれた部屋でした。

 その三人は初めに宰相様を見て、その後に僕を見て問いかけてきました。

「はい、ディーバ公爵様のお嬢様、シャクティ様の婚約者になられた、サーバル男爵家のライリール様にございます」

 ここは自己紹介ですね、最近自己紹介ばかりしているような気もしますが、きちんとしないとですね。

「初めまして。サーバル男爵家三男、ライリール・ドライ・サーバルです。この度シャクティとの婚約が決まり、王様へご報告に来たところです」

「おお! それはそれはおめでたい事です。剣聖殿のご子息ですな、ふむ、ライリール殿がまだ赤子の際にお目見えしたきりでございますな。おっと、私も名ばかりの男爵をしております、モーブスと申します、私は剣聖殿には剣を学びに、妻は賢者様に魔法を学びに行っておりました」

「ほわぁ! では僕の兄弟子様ですね♪ あっ! そうです、モーブス様! 王子様から何か貰いませんでしたか、今その事でこちらに来たのですが?」

「ぬおっ! そうでしたか、私も今その事で今から王様へご報告に行こうとしていたのですよ! おいお前達もネックレスを出すのだ!」

「「はっ!はっ!」」

 皆が持っていたのは引きちぎられたネックレスが三つ、数もあってますし、形もさっきマリグノさんの物と同じです。

「間違いないようですね、宰相さん、ここは?」

「はい、ここは商人とのやり取りを受け持つ者達の執務室です、モーブス男爵様、もしや何か禁止されている事をやらされたのですか?」

 モーブス男爵さん達は苦虫を噛み潰したような表情で語りだします。

「こちらのネックレスもそうですが、呪術系の魔道具や麻薬も仕入れておりました、取引先の証拠もあります、はぁぁ、これで男爵家も私の代で終わりそうです」

 だけって事は新興の男爵家なのですね。せっかく功績を立て、叙爵したのに可哀想です。

「あの、宰相さん、なんとかなりませんか? 魅了で操られていたのですから」

 宰相さんは、にこやかに笑顔を作ります。

「ふふふ。ライリール様はお優しいですね。もちろん王様へ進言いたします、ライ様の兄弟子でもありますからね」

 兄弟子のモーブスと残りの二人、それに僕はほっと胸を撫で下ろし、宰相さんの提案で、悪事の証拠をまとめ、すぐに王様の執務室に戻りました。
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