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第一章

第16話 公爵領へ その二

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 夕方小さな町に到着しました。

 門番に聞き衛兵さんの詰め所を聞こうとしたのですが、裸ん坊では町に入れられないとの事で、衛兵さんを呼んでくれることになり、門前で待つ事に。

「だから言ってたでしょ、裸は良くないんだから、今夜その事について教えてあげるわ!」

 テラがなぜかやる気満々でムルムルの上にいます。

「はい、テラ師匠お願いいたします、でも、ライの物とは形が違うのですね、もじゃもじゃしてますし、私はライの物は可愛いと思いますがあっちのは嫌ですね、見たくありませんわ」

「そうだね、ここまで来たら逃げる事も出来ないだろうし、パンツだけ戻しておこうか、え~っと、出す時に履かせてしまえば良いよね、ほいっと!」

 ん、上手く行きました、盗賊達は少しほっとした顔をしてますが、もうすぐ奴隷ですよ~。

 パンツを履かせて数分、衛兵さんが来てくれました。

「盗賊を捕まえたと聞き来たのだが、その裸の奴らか?」

「はい、夜営中に武器を持って僕達の馬車を寄越せと言ってきましたが返り討ちにしました」

 盗賊と僕達を見比べ少しいぶかしげな顔をしています。

「鑑定! ふむ、確かに強盗だな、だが······良いだろう五名か大銀貨だな、詰め所まで来て貰えるかな」

 まだ疑わしそうな顔ですが、盗賊は受け取ってくれそうです。

「はい、よろしくお願いします」

 衛兵さんの後をゆっくり馬車を進めついて行きます。門を入ると、僕達を追い抜いて先に町に入っていた商人さんがお待ちかねで、門を入ってすぐの詰め所前で僕達が入門したのを見て、ほっとした顔をしていました。

 僕達はそのまま詰め所の前に馬車を停め、馬車にくくりつけてあった盗賊達を連れて、商人さんと共に中に入りました。

「ん? そちらの方は?」

 衛兵さんが一緒についてきた商人さんに気が付き聞いてきました。

「この方はその盗賊を、盗賊と知らず護衛依頼をしていた商人さんです、犯罪奴隷として購入するそうです」

「初めまして、王都で商いを営んでおります、コンメルと申します」

「すまないがそうはならんな、この者達は解放せねばならんのだ」

 へ? 何を訳の分からない事を。

「どうしてでしょうか? 明らかに犯罪者ですよね?」

「うむ、この者達は、Aランク冒険者という事も多少あるが、貴族の三男様が三人、後の二人も四男、五男だ、この者達は既に成人し、貴族でも何でもないのだが、親の貴族に不敬罪としてこの町の衛兵が裁かれかねないと言う懸念があるのだ、報酬は払わせて貰うが」

「そうだ! 俺は男爵家の三男だ! 今回は見逃してやる、さっさとこのロープを外し、馬車は俺達が貰ってやる」

「そうだぞ衛兵! 早く解放しないか! 替わりにそのガキ共を捕らえろ!」

「「オラやれや衛兵!やっちまえよ!」」

 なにやら、盗賊達が騒ぎだしますが、それは僕も同じことですよね、それに馬車はあげませんよ。

「あははは、それなら衛兵さん大丈夫ですよ、僕もサーバル男爵家三男ですから」

 一応持たされていた、貴族であると証明するサーバル家の紋章が入ったナイフを見せました。

「ん? サーバル男爵家! 剣聖様の! こ、これは! いや、しかし同じ男爵家、よろしいのですか?」

 目を見開き、確認した衛兵さん、心配してくれるんだ、お父さん結構有名なんだね、剣聖、帰った時に聞いてみましょう。

「大丈夫ですわよ、私はブラフマー公爵家の嫡子ですから」

 ティが、ニヤニヤ悪戯っ子の顔をして、追い討ちをかける、その事を証明する証拠はないが、あはは。

 それを聞いた、衛兵さんはもとより、商人さんと盗賊まで跪きました。

「た、大変申し訳ありませんでした! すぐ奴隷の準備をいたします!」

「はい、お願いしますね」

 先ほどまでの疑いの目が嘘のように、変わり、バタバタと準備を始める衛兵さん、盗賊達は、跪いたままもう何も文句は言わない。

 その後は滞りなく奴隷化が終わり、奴隷商人さん立ち合いでコンメルさんに譲渡が終わりました。

 お小遣いも増えて、今夜の宿を探そうと詰め所を出る時、コンメルさんが話しかけて来ました。

「シャクティお嬢様、ライお坊っちゃま、今夜の宿を紹介させて貰いたいのですが、既に決まった宿はありますでしょうか?」

「コンメルさん、僕の事はライで良いですよ、成人すれば普通の人になるのですから、宿はこれから探そうと思ってますよ」

「私の事も、ティでよろしいですわ、えっと確か、そう! お忍び中ですの♪ お母様も、お父様と一緒にたまにやっておりますわ」

「おお、分かりました、ではライ君、ティちゃんと、お呼びさせて貰いますね、お宿ですが、この町での私がいつも利用している宿がございます、この山間の町に相応しく、山の幸が豊富な料理がとても美味しい宿です、如何でしょうか?」

 うん、僕はそれが良いかな、山の幸は楽しみです、家の近くの山に山菜や猪を良く取りに行ってましたよね、マシューさん達が、思い出すと、食べたくなってきました。

「僕は、お願いしようと思うけど、ティはどうしたい?」

「私も、山の幸、興味がありますので泊まってみたいです」

「分かりました、ではご案内しますね」

 コンメルさんに続いて詰め所を出て、お互い馬車に乗り込み、コンメルさんの馬車について行きます、もちろん奴隷達は馬車を追いかけ小走りに走っていますが。

 明日の朝に出る門の、ほど近くに中々立派な宿に馬車を停め、馬さんは厩舎に預けて宿の中へ、少しだけ良い物をあげてねと担当の方にお願いして。

 きちんとお金も払いましたよ。

 中に入ると料理が売りと一目で分かる、テーブルが沢山置かれた広いロビーにはほとんどの席が埋り、食事を楽しんでいます。

 僕達は受け付けに進み、一泊二食で一人銀貨一枚のお風呂付きに決めました。

 食事はいつでも良いとの事で、このままいただくことにしました。

 テラはまたテーブルに飾ってある花を花瓶から抜き取り頭に刺していますが、木に咲く花のようで、少し重そうなので、ムルムルがソファーのようになりへこんでます。

「テラ、それは重くないの? ムルムルがへこんじゃってるし」

「ん? 大丈夫よ、私は強いのよ! その私の騎獣たるムルムルだって大丈夫よ! ね、ムルムル」

 ぷる  ぷ る

「いやいや、重そうだよ! ぷるぷるがいつもと違うよ!」

「そうなの? 仕方がないわね、さっさとやってしまいましょう! ほいっと!」

 テラが気合いを入れた時からむくむくと木が育ち、数十倍の大きさになり、テーブルが、“ミシッ” っと音を立て出したので、慌てて木を支えます。

 最初はテラの二倍程度の二十センチくらいだったかな、それくらいの高さしかなかったのに、今は見上げ、天井に届き、先は曲がるほどまで成長してしまいました。

「ヤバですって!」

 僕は木を抱え、宿の外に飛び出し、厩舎前の馬さんが少し運動できる広場に木を、テラ付きを持ってきて、一息つきました。

「テラ! 流石に大きくなりすぎじゃないのこれ!」

「中々の大食いね、でももうお腹いっぱいみたいよ、そ~れっと!」

 テラの頭から引き抜かれて行く根っこ、抜けきったので下ろしたのですが、ズズズっと広場の中央に根を張って、さらに成長し十メートル以上の高さがある花が満開の木に育ちました。

「テラ、これマズいかも、いきなりこんな木が生えたら皆ビックリしちゃうよ」

 ぞろぞろと食事をしていたお客さんや、お店の、たぶん料理をしていた人、お玉を持ってるし、が広場に出てきて、いきなり生えた木を見上げ、口は半開きになってます。

 僕のところに、ムルムルを抱えたティが、やって来ました。

「凄く大きくなりましたね、この木は何て名前の木なのですか?」

「僕は知らないかな、あはは」

「そこのあなた! あなたがこの木を外に出してくれたのかい?」

 あっ、受け付けをしてくれた方ですね。

「はい、いきなり大きくなって慌てて、お騒がせしてすいません」

「いやいや、この木があのまま食堂で大きくなっていた事を考えると、私の宿が壊れていた事でしょう、ありがとうございます」

 あれ? 僕達がやったとは思ってないのかな?

「あの、あのですね、この木が大きくなったのは、この木に栄養をやってしまったからで」

 さて、なんと説明したものか。
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