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第一章

第135話 捕まる?

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「ところでよ、俺達はなんでここに連れてこられたんだ?」

「ああそうか、いや、すまない。あのオルトロスは君が連れてきて、パーティー暁の狼の功績を妬んだ自作自演と言う声が出ていてな」

 ギルドマスターは頭をかきながら謝ってきた。

「は? んな分けねえだろ、まぁ、オルトロスがあのリーダーから出したから、騒ぎのきっかけは作ったがよ」

「本当にすまない。そんな訳で逃げられない高い塀で囲われ、牢屋の鍵を二回開けないと出ることもできないこの場所に連れてきたんだ」

 今度は深く頭を下げ、説明を続ける。

「まあ、リチウムのギルドマスターで、コバルト公爵様の依頼を請けている君達を疑う方が馬鹿だった」

 顔を上げ、申し訳なさそうな顔でもう一度頭を下げた。

 そんなことをしていると、暁の狼の五人が近付いてきたのが分かった。
 弱くなって、すっかり自信を無くしてるのかと思っていたが、なんでか俺達を睨み、拳を握りしめながらズンズンと力強く地面を踏みしめながらやってきた。

「ギルマス! ソイツらなんだな! おいクソガキ! お前らのせいで俺達は死にかけたんだぞ! どんな卑怯な手を使ったか分からねえが、俺達の力を返しやがれ!」

「ま、待て――」

 ギルドマスターの止めるのも聞かず、俺の胸ぐらを掴もうとしてるんか、左手を胸元に伸ばしてきた。

 ははっ、この手の組手訓練は、クソ爺と死ぬほどやって来てるからなっと。

 俺は慌てず伸ばしてきた左手に右手を乗せて、親指を掴み、曲がらねえ方にひねり、曲げてやる。

「あがっ! は、離しやがれっ!」

 親指をしっかり掴んだまま、さらに曲がるようリーダーの腕の外側を回るように体を入れてやる。

「いだだだ!」

 体が痛みに耐えられず、左に傾いたところで俺は左手を右手に添えて引き下ろし、リーダーの傾きを大きくするように手助けしてやる。

「ぬあっ!」

 後は転けないように、慌てて踏み出そうとした足を踏んで止めやるとつんのめり、もう足を出して転倒を止めることはできない。

 リーダーの体の下に入った足を引き、今度は親指を持った腕をひねりながらさらに体制を崩してやる。

 ドタンと立っていられずに、うつ伏せに倒れたところ、左腕をリーダーの背中の上に押し付け、体重をかけながら一気に親指を限界まで曲げてやる。

「イガァァー!」

 ゴキンと手に響き、痛いやり方で関節を外してやった。

「なあギルドマスター、このリーダーは悪もんなんか? いきなり掴みかかって来やがったしよ」

 俺の下で痛がってるから親指を離し、今度は人差し指と小指を握ってやる。

「待て待て待て待て! ギ、ギルマス! コイツ指を折りやがった! 早く捕まえろ!」

「やかましいな。ふんっ!」

 ゴキンゴキと握っていた二本も関節を外してやる。

 ここまで来たらついでだしな。

「よいしょっと!」

 ゴキンゴキと残り二本も関節を外し、リーダーの上から退いてやろうとしたら、アンラがロープを渡してくれた。

「ったくよ、いきなり襲いかかりやがって、おっ、ありがとうな」

「えへへ~、どういたしましてだよ~。でも優しいんだぁ~折らずに間接を外すだけ~、それだけで許しちゃうなんてさぁ~」

 アンラが口をとがらせて、頬っぺたを膨らませながら渡してくれたロープを使い、後ろ手に縛ってしまう。

 一部始終を見ていたギルマスと暁の狼メンバーは、そこでやっと正気に戻り、まずはギルドマスターが。

「あ、いや、うん。そうだな、今のはソイツが悪い……悪いが、力が弱ったと言っても、三十四階層まで行ったパーティーリーダーをこうも簡単にとはな……」

「ん? いや、コイツそんなに強くねえぞ、あっ、そうか、パーティーとして強いってことだな、納得だ」

「あががが、は、早く上から退け、そしてほどけクソガキ。ギルマス、何してるんだよ、コイツが俺達に呪いをかけて弱くしたんだろうが」

 足をバタバタさせて暴れやがる。

「ギルマス、なぜこのガキを捕まえない! 今回の功績でダンジョン街、モリブデンで最高ランクのAランクパーティーになった暁の狼を率いるリーダーがやられてるんだぞ!」
「そ、そうだ! 俺達に呪いをかけてオルトロスなんて魔物まで使い、祭りをぶち壊した罪人だぞ!」
「領主のモリブデン伯爵からも捕縛の依頼が出てるんですよ!」
「……いや……待て、あれって黒髪のガキじゃないよな? 確か容姿は銀髪で長髪だったような……」

 リーダーの上から退いて立ち上がると、暁の狼メンバー四人から色々言われてっが……。

 まとめっと、モリブデン伯爵から捕縛依頼が出てて、ダンジョン最高到達記録を出したからAランクパーティーに上がって、さっきから言ってる祭りをぶち壊し、コイツらに呪いをかけたと……。

「無茶苦茶な話だよな。あっ、まあ、オルトロスをお前らのリーダーから引き剥がして、祭りを騒がしたんは俺だから、騒ぎは起こしたことになるんか」

「きゃはは♪ そだね~ケント、謝っとけば?」

 その通りだと思い、ギルドマスターと、俺から少し離れたところで俺に文句を言ってた四人に向かって『すまねえな』と頭を下げておいた。

「あっ、お兄さん達ってさぁ~、あの後モテなくなったでしょ~。お兄さん達ってば、レイスが振り撒いてた魅了でモテてただけだしね~」

「え? あっ、そう言えばよく見るとあまり格好良くないかも……あの日は格好いい! からまあ格好いいに変わったけど、今は全然普通の人にしか見えないもんね」

 アンラとユウ姉ちゃん達が離しているのを聞いた暁の狼達は『祭りの次の日に俺……フラれた』『……俺も翌日だった』『――お前達もか!』『……マジかよ全員フラれてたのか……』『……』なんて事を。

 リーダーはなんとか膝立ちになってたが、地面を向いて声もなかった。
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