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第一章
第103話 アンデッド狩り
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出だしから躓いてしまったな……。
俺もクローセをリュックから出そうとしていた時、持ち上がりそうだった蓋がビクともせず、ミシッと小さな音を立てただけだった。
「もう! 生意気な木箱ね! えいっ!」
アンラは木箱の前でしゃがむと、人指し指の爪だけ伸ばし、右から左へ木箱に向けてその爪を動かした。
「うんうん、これでよし♪ 私の行く手をはばむなんて、一千年は早いわよ、じゃあ行ってくるわ、ケントも頑張ってね~」
「お、おう、アンラも怪我とかするんじゃねえぞ」
「ほ~い♪」
真横にまっぷたつになった木箱の上側を持ち上げポイッと捨てると、中を覗き込んでから、ぴょんと飛び込んでいった。
大丈夫か? 姿は消したんだろうな……眠そうなクローセと思わず目を合わせてしまったが『誰だお前は!』とか『何者だ! どうやってここに来た!』とか木箱の底から聞こえてくる。
「アンラ……見付かってんじゃねえかよ……」
『ああー忘れてたぁぁー! 良いもーん、やっつけてやるんだから! かかってきなさい! そりゃ! とうりゃぁぁぁー!』
ドスン、バキッと下が騒がしくなったから、そっと中をクローセを持ったまま覗きに行ったんだけどよ……五人と思っていたが、十人くらいいるじゃねえか……。
箱の底から階段になっており、五メートル四方くらいしかない小さな部屋の壁際は、食料なのか木箱が積み重ねられ、真ん中には木箱で作られたテーブルがあり、人数を数えると十人もいることが分かった。
奥に扉があるから別の部屋もありそうだが、見えた扉は開かれているし、この騒ぎだ、全員この一部屋の集まっているだろうな。
アンラは爪を伸び縮みさせて、短剣を持ち、襲いかかってくる黒ローブ達の両腕両足に突き刺し、動きを止めた後、一人ずつ腹を殴り蹴りして倒してしまった。
「だ、大丈夫そうだな……」
「……にゃ~」
その後だが服だけ残して色々とむしり取りながら、眠りを素早くかけたのを見て、呟いた俺にクローセが返事をしてくれた。
「はは、まあなんとかなったようだし、クローセ、また手伝ってくれっか?」
「ん~にゃ」
そう言ってすぐにクローセを地面に下ろしてやると、ちらりとドリアードの方を、次にまわりの魔物達を見て『仕方ないなぁ』って聞こえるような返事をした後、トテトテと鉄製の檻に向かって歩きだした。
俺もクロセルを抜いて走り出し、地面を蹴って檻を一気に飛び越え、魔物がひしめくところに飛び込んだ。
「うぉぉぉりゃぁぁぁ!」
着地するところにいたオークの顔を潰す勢いで踏みしめ、ぐらついた足元も気にすることはない。
「フゴー」
安定した足元を確保するため、クロセルに気合いを込め刃を伸ばして、左足を軸にオークの顔の上でぐるりと体を回転させた。
スパッとまわりに固まっていたオーク達の首を切っ先が届く範囲を切り飛ばし、最後に足場にしたオークから飛び降りると同時に首を刈っておく。
「クロセルありがとうなっ! クローセは――」
首を切り飛ばされたオークはクロセルが次々と収納してくれるため、難なく地面に着地して、目についたスケルトンに向けて走りながらクローセをちらりと見た。
檻の中から飛び出したクローセは、空中で大きくなり、四足の魔物がいるところに向かって飛び込んだ。
着地した場所の魔物達を一気に吹き飛ばし、この前と同じで走り始め、次々と数匹ずつぶっ飛ばしながら崖とは違う方に走り、姿が見えなくなったのだが、吹き飛ばされている魔物達が遠くなっていくのが分かった。
『あちらも収納は任せて下さい。次は左にアンデッドの気配があります』
スケルトンの集まりを切り払っていたんだが、切った途端に脱力したようにバラバラと崩れていった。
クロセルが言った通りアンデッドも問題なく倒せそうだ。
そして言われた通り左を見ると、オークのアンデッドが見え、足元にはコボルドや、ゴブリンのアンデッドまでいやがった。
だが動きは遅いため先にアンデッドじゃない魔狼やコボルドなんかの足の速い奴らが襲いかかってくる。
それも薙ぎ払い、アンデッドに向かって突き進んだんだがあっという間に広げた足場を侵食されてしまう。
「くそっ! 多すぎだってえの! そりゃ!」
またクロセルに気合いを入れて体を回転させながら近付いてきた奴を片っ端から切り払う。
『数が多すぎます! それにオークウォーリアがこちらに向かっています!』
オークウォーリアだと!
何度もぐるぐると回転切りを繰り返しながら、魔物達の頭を余裕で超すデカいオークがこちらに向かって来ているのが見えた。
そのオークウォーリアは、足元の魔物達を手に持つ丸太を振り回して吹き飛ばしてズンズンと近付いてくる。
アレはやべえな、あんな丸太で殴られたらたまったもんじゃねえ。
「フシャー!」
俺とは反対側に行ったクローセが威嚇音を発しているのが聞こえた。
回転切りをしているから見えたんだが、クローセの方にはデカいオーガがいるのが見え、ソイツと対峙しながらまわりにいる奴らを手足や、尻尾を使い吹き飛ばしている。
『あちらはオーガリーダーです! クローセなら問題ありません! ケント、オークウォーリアは、単体ではなく連結してきますよ!』
「おう! アレだけデカいんだ、動きはそれほどじゃねえ、任せとけ!」
俺もクローセをリュックから出そうとしていた時、持ち上がりそうだった蓋がビクともせず、ミシッと小さな音を立てただけだった。
「もう! 生意気な木箱ね! えいっ!」
アンラは木箱の前でしゃがむと、人指し指の爪だけ伸ばし、右から左へ木箱に向けてその爪を動かした。
「うんうん、これでよし♪ 私の行く手をはばむなんて、一千年は早いわよ、じゃあ行ってくるわ、ケントも頑張ってね~」
「お、おう、アンラも怪我とかするんじゃねえぞ」
「ほ~い♪」
真横にまっぷたつになった木箱の上側を持ち上げポイッと捨てると、中を覗き込んでから、ぴょんと飛び込んでいった。
大丈夫か? 姿は消したんだろうな……眠そうなクローセと思わず目を合わせてしまったが『誰だお前は!』とか『何者だ! どうやってここに来た!』とか木箱の底から聞こえてくる。
「アンラ……見付かってんじゃねえかよ……」
『ああー忘れてたぁぁー! 良いもーん、やっつけてやるんだから! かかってきなさい! そりゃ! とうりゃぁぁぁー!』
ドスン、バキッと下が騒がしくなったから、そっと中をクローセを持ったまま覗きに行ったんだけどよ……五人と思っていたが、十人くらいいるじゃねえか……。
箱の底から階段になっており、五メートル四方くらいしかない小さな部屋の壁際は、食料なのか木箱が積み重ねられ、真ん中には木箱で作られたテーブルがあり、人数を数えると十人もいることが分かった。
奥に扉があるから別の部屋もありそうだが、見えた扉は開かれているし、この騒ぎだ、全員この一部屋の集まっているだろうな。
アンラは爪を伸び縮みさせて、短剣を持ち、襲いかかってくる黒ローブ達の両腕両足に突き刺し、動きを止めた後、一人ずつ腹を殴り蹴りして倒してしまった。
「だ、大丈夫そうだな……」
「……にゃ~」
その後だが服だけ残して色々とむしり取りながら、眠りを素早くかけたのを見て、呟いた俺にクローセが返事をしてくれた。
「はは、まあなんとかなったようだし、クローセ、また手伝ってくれっか?」
「ん~にゃ」
そう言ってすぐにクローセを地面に下ろしてやると、ちらりとドリアードの方を、次にまわりの魔物達を見て『仕方ないなぁ』って聞こえるような返事をした後、トテトテと鉄製の檻に向かって歩きだした。
俺もクロセルを抜いて走り出し、地面を蹴って檻を一気に飛び越え、魔物がひしめくところに飛び込んだ。
「うぉぉぉりゃぁぁぁ!」
着地するところにいたオークの顔を潰す勢いで踏みしめ、ぐらついた足元も気にすることはない。
「フゴー」
安定した足元を確保するため、クロセルに気合いを込め刃を伸ばして、左足を軸にオークの顔の上でぐるりと体を回転させた。
スパッとまわりに固まっていたオーク達の首を切っ先が届く範囲を切り飛ばし、最後に足場にしたオークから飛び降りると同時に首を刈っておく。
「クロセルありがとうなっ! クローセは――」
首を切り飛ばされたオークはクロセルが次々と収納してくれるため、難なく地面に着地して、目についたスケルトンに向けて走りながらクローセをちらりと見た。
檻の中から飛び出したクローセは、空中で大きくなり、四足の魔物がいるところに向かって飛び込んだ。
着地した場所の魔物達を一気に吹き飛ばし、この前と同じで走り始め、次々と数匹ずつぶっ飛ばしながら崖とは違う方に走り、姿が見えなくなったのだが、吹き飛ばされている魔物達が遠くなっていくのが分かった。
『あちらも収納は任せて下さい。次は左にアンデッドの気配があります』
スケルトンの集まりを切り払っていたんだが、切った途端に脱力したようにバラバラと崩れていった。
クロセルが言った通りアンデッドも問題なく倒せそうだ。
そして言われた通り左を見ると、オークのアンデッドが見え、足元にはコボルドや、ゴブリンのアンデッドまでいやがった。
だが動きは遅いため先にアンデッドじゃない魔狼やコボルドなんかの足の速い奴らが襲いかかってくる。
それも薙ぎ払い、アンデッドに向かって突き進んだんだがあっという間に広げた足場を侵食されてしまう。
「くそっ! 多すぎだってえの! そりゃ!」
またクロセルに気合いを入れて体を回転させながら近付いてきた奴を片っ端から切り払う。
『数が多すぎます! それにオークウォーリアがこちらに向かっています!』
オークウォーリアだと!
何度もぐるぐると回転切りを繰り返しながら、魔物達の頭を余裕で超すデカいオークがこちらに向かって来ているのが見えた。
そのオークウォーリアは、足元の魔物達を手に持つ丸太を振り回して吹き飛ばしてズンズンと近付いてくる。
アレはやべえな、あんな丸太で殴られたらたまったもんじゃねえ。
「フシャー!」
俺とは反対側に行ったクローセが威嚇音を発しているのが聞こえた。
回転切りをしているから見えたんだが、クローセの方にはデカいオーガがいるのが見え、ソイツと対峙しながらまわりにいる奴らを手足や、尻尾を使い吹き飛ばしている。
『あちらはオーガリーダーです! クローセなら問題ありません! ケント、オークウォーリアは、単体ではなく連結してきますよ!』
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