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第一章
第92話 平穏な日々
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両手両足を縛り終え、王都に向かう商隊、ちょうどさっき王子様に反抗した兄ちゃんがそこの商会長の息子だったそうで、王子様達が乗ってきた馬車を修理して、車列に加え、王都へ連れて帰ってくれる事になった。
王都に行った後、とりあえず王子様達はお城に届けて、王様と公爵様に渡してもらう手紙を書いておくことにした。
(衛兵で良いんじゃないの? お城には入るなって言われていたし、とりあえず三日ほど起きないようにしたから、それまでには王と公爵にも手紙が届くんじゃない?)
それもそうかと、兄ちゃんに伝え、王都に向けて走り出す馬車を見送って、俺達も村に向かって出発した。
雨に降られることも、魔物におそわれること……ゴブリンが少し邪魔しやがったが、覚醒するまでもなく、テルル、セレンと協力して難なく倒し、みんな怪我もなく村に帰り着いた。
テルルとセレンは王都で馬車を返すんだが、一度リチウムの街にある、ギルマスの宿によるらしい。
俺もそっち方面に行くなら乗せてもらえば楽だったのにと思わなくはないが、乗り合いで行くしかねえな。
アシア達は、一度家にお土産を置きに帰り、プリムとテルル、セレンと一緒に馬車で教会に向かった。
「クソ爺帰ったぞ」
教会に帰ってきて呼んだが返事はなく、裏から薪割りの音が聴こえてきたから裏にまわるとやっぱり薪割りしてやがったか。
「クソ爺帰ったぞ、ほら土産だ」
「おっと、おかえりケント、そう何度も土産を買ってこなくても良いぞ、その分良い装備を買っておけ」
投げた土産は斧を持っていない手で掴み取り、口ではそう言いながらニヤッと笑いながら、革製の手袋を懐にしまい、俺の後ろにいるプリム、テルル、セレンの事を見てやがる。
「ふむ、そちらの二人は初めてだな。いらっしゃい、ケントが世話になっているようだ、ここの教会を預かるクルトと言いう。まだまだなにも分かってない若僧ですが、仲良くしてやって欲しい」
クソ爺はそう言うと、テルルとセレンを見て頭を下げた。
「クルト殿、頭を上げてください、もちろん一緒に依頼を請けた仲間ですし、少々口は悪いですが、正しいことは正しい、悪いことは悪いと言える、こんな方はそうはいません。こちらから仲良くして欲しいと言いたい人物ですのでご心配なく」
「私も同じ思いですね、クルト殿の教育が良かったのでしょう」
なんか、けなされて褒められて、背中がむず痒いぜ。
「そうか、ありがとう、しかし、今日帰ってくるとは知らなかったからな、困ったな、夕食の食材が何も無いぞ……よしケント、今日はアシアのところで飯にしよう、私がご馳走しよう」
クソ爺は斧と割っていた木を片付け、用意してくると、教会に入っていった。
「よし、晩ごはんも決まったことだし、馬の世話を終わらせっか」
「そうね、アシアのお父さんが作る料理、ここまで来る間に話を聞いて楽しみにしていたから嬉しいわ」
「そうなんか、んじゃ早速やっちまおう、馬車はそのままで大丈夫だから、俺は馬を外してしまうから、ちと待ってくれっか」
そう言いさっさと馬の元に走りより、馬具を外してしまう。
ブラシと岩塩を御者台の足元にある木箱から取り出し、待っていたテルル、セレン、プリムを引き連れ教会裏から小川に向かう。
三人は固まりなんか楽しそうに話をしてる。
よく考えっと、俺、テルルとセレンとはあんまり喋ってないよな?
(そだね~、道中ほとんど私と念話で喋ってたし。プリムがたまに念話で入るくらいだったんじゃない?)
だな、後は護衛依頼の相談くらいだよな。
まあアシアとエリス、プリムとは仲良くやってくれてたから良いけどよ。
五分も行かずに小川に出ると、二メートルほどの木をくりぬいた桶の底にある水抜き穴を栓でふさぎ、水桶で水を掬い、中を満たしていく。
桶は二つしかなかったから俺とセレンが二人で作業している間に残りの二人にはブラッシングしてもらう。
中々デカい水桶だからちと重いが、十杯ほどだからあっという間だ。
「良いところねセレン、街道沿いだけど、この村には初めてよったわね」
「そうね、アシアのお父様の料理を楽しみにまた来ちゃうかもね、リチウムでお母様にあった帰りにもよりましょうよ、みんなにも会いたいし――」
俺は楽しそうに話す三人を横目に岩塩を与え、近くの岩に座りながらアンラと今後の事を話している。
(とりあえずはテルル達とリチウムに行っちゃう? ちょっと遠回りだけどあそこからなら乗り合い馬車も沢山出てるんじゃない? それとその後だよね?)
おお! それは考え付かなかったぜ、そうだな、小さな村が結構あるんだよ、それから数ヶ所街があって、最後がダンジョン街か……馬車を用意しちまう方が良いかもな。
(それ賛成~♪ そのダンジョンってさ、大きな湖のそばだよね? 私が封印される前も確かあったダンジョンかも? 確かバアルがいたんじゃなかったかな?)
馬が落ち着いたので、教会に向けて戻る。
バアル? ソイツも悪魔なんか?
(そうだよ~、ソラーレと一緒でスライムみたいなぷよぷよな奴なんだけど、私みたいには可愛くないわね)
まあお前は可愛いけどよ、人の事は可愛くないとか言わねえ方がいいぞ
教会が見えてきて、表に回ると、クソ爺が既に待っていた。
「ケント、馬は厩舎に入れてこい。皆は私が先に連れていっておく」
「おう、セレン、手綱預かるぞ、俺もすぐに追い付くからよ」
セレンが引いていた手綱をもらい、みんなが村の中心に歩き出したのを見て、俺も馬を引き厩舎に向かう。
馬を厩舎に入れた後、リュックは邪魔になるから部屋に置いて、もちろんクロセルは持ってくが、眠そうなクローセは寝かせておくため寝台に乗せ、干し肉を隣に置いておく。
「連れていかないの? 可哀想じゃない、抱っこして連れていってあげなさいよ」
「そうだな、クローセ、ちと抱っこするからよっと、んじゃ行くか」
そして教会から出て、アンラと二人で村の中心に向かう。
「そうだ、さっき言ってたバアルだったか、悪者なんか?」
「ん? 悪魔だからね~、自分に優しく相手には厳しく、まあ、強さでいけば私が勝つけどね♪」
まあ、会って悪者ならやっつければ良いか。
王子様達と別れてからここしばらくは暇ではあるけど、平和だな。
よし、明日の出発後は気合いを入れて修行しながら依頼の旅だ、気合い入れっぞ!
王都に行った後、とりあえず王子様達はお城に届けて、王様と公爵様に渡してもらう手紙を書いておくことにした。
(衛兵で良いんじゃないの? お城には入るなって言われていたし、とりあえず三日ほど起きないようにしたから、それまでには王と公爵にも手紙が届くんじゃない?)
それもそうかと、兄ちゃんに伝え、王都に向けて走り出す馬車を見送って、俺達も村に向かって出発した。
雨に降られることも、魔物におそわれること……ゴブリンが少し邪魔しやがったが、覚醒するまでもなく、テルル、セレンと協力して難なく倒し、みんな怪我もなく村に帰り着いた。
テルルとセレンは王都で馬車を返すんだが、一度リチウムの街にある、ギルマスの宿によるらしい。
俺もそっち方面に行くなら乗せてもらえば楽だったのにと思わなくはないが、乗り合いで行くしかねえな。
アシア達は、一度家にお土産を置きに帰り、プリムとテルル、セレンと一緒に馬車で教会に向かった。
「クソ爺帰ったぞ」
教会に帰ってきて呼んだが返事はなく、裏から薪割りの音が聴こえてきたから裏にまわるとやっぱり薪割りしてやがったか。
「クソ爺帰ったぞ、ほら土産だ」
「おっと、おかえりケント、そう何度も土産を買ってこなくても良いぞ、その分良い装備を買っておけ」
投げた土産は斧を持っていない手で掴み取り、口ではそう言いながらニヤッと笑いながら、革製の手袋を懐にしまい、俺の後ろにいるプリム、テルル、セレンの事を見てやがる。
「ふむ、そちらの二人は初めてだな。いらっしゃい、ケントが世話になっているようだ、ここの教会を預かるクルトと言いう。まだまだなにも分かってない若僧ですが、仲良くしてやって欲しい」
クソ爺はそう言うと、テルルとセレンを見て頭を下げた。
「クルト殿、頭を上げてください、もちろん一緒に依頼を請けた仲間ですし、少々口は悪いですが、正しいことは正しい、悪いことは悪いと言える、こんな方はそうはいません。こちらから仲良くして欲しいと言いたい人物ですのでご心配なく」
「私も同じ思いですね、クルト殿の教育が良かったのでしょう」
なんか、けなされて褒められて、背中がむず痒いぜ。
「そうか、ありがとう、しかし、今日帰ってくるとは知らなかったからな、困ったな、夕食の食材が何も無いぞ……よしケント、今日はアシアのところで飯にしよう、私がご馳走しよう」
クソ爺は斧と割っていた木を片付け、用意してくると、教会に入っていった。
「よし、晩ごはんも決まったことだし、馬の世話を終わらせっか」
「そうね、アシアのお父さんが作る料理、ここまで来る間に話を聞いて楽しみにしていたから嬉しいわ」
「そうなんか、んじゃ早速やっちまおう、馬車はそのままで大丈夫だから、俺は馬を外してしまうから、ちと待ってくれっか」
そう言いさっさと馬の元に走りより、馬具を外してしまう。
ブラシと岩塩を御者台の足元にある木箱から取り出し、待っていたテルル、セレン、プリムを引き連れ教会裏から小川に向かう。
三人は固まりなんか楽しそうに話をしてる。
よく考えっと、俺、テルルとセレンとはあんまり喋ってないよな?
(そだね~、道中ほとんど私と念話で喋ってたし。プリムがたまに念話で入るくらいだったんじゃない?)
だな、後は護衛依頼の相談くらいだよな。
まあアシアとエリス、プリムとは仲良くやってくれてたから良いけどよ。
五分も行かずに小川に出ると、二メートルほどの木をくりぬいた桶の底にある水抜き穴を栓でふさぎ、水桶で水を掬い、中を満たしていく。
桶は二つしかなかったから俺とセレンが二人で作業している間に残りの二人にはブラッシングしてもらう。
中々デカい水桶だからちと重いが、十杯ほどだからあっという間だ。
「良いところねセレン、街道沿いだけど、この村には初めてよったわね」
「そうね、アシアのお父様の料理を楽しみにまた来ちゃうかもね、リチウムでお母様にあった帰りにもよりましょうよ、みんなにも会いたいし――」
俺は楽しそうに話す三人を横目に岩塩を与え、近くの岩に座りながらアンラと今後の事を話している。
(とりあえずはテルル達とリチウムに行っちゃう? ちょっと遠回りだけどあそこからなら乗り合い馬車も沢山出てるんじゃない? それとその後だよね?)
おお! それは考え付かなかったぜ、そうだな、小さな村が結構あるんだよ、それから数ヶ所街があって、最後がダンジョン街か……馬車を用意しちまう方が良いかもな。
(それ賛成~♪ そのダンジョンってさ、大きな湖のそばだよね? 私が封印される前も確かあったダンジョンかも? 確かバアルがいたんじゃなかったかな?)
馬が落ち着いたので、教会に向けて戻る。
バアル? ソイツも悪魔なんか?
(そうだよ~、ソラーレと一緒でスライムみたいなぷよぷよな奴なんだけど、私みたいには可愛くないわね)
まあお前は可愛いけどよ、人の事は可愛くないとか言わねえ方がいいぞ
教会が見えてきて、表に回ると、クソ爺が既に待っていた。
「ケント、馬は厩舎に入れてこい。皆は私が先に連れていっておく」
「おう、セレン、手綱預かるぞ、俺もすぐに追い付くからよ」
セレンが引いていた手綱をもらい、みんなが村の中心に歩き出したのを見て、俺も馬を引き厩舎に向かう。
馬を厩舎に入れた後、リュックは邪魔になるから部屋に置いて、もちろんクロセルは持ってくが、眠そうなクローセは寝かせておくため寝台に乗せ、干し肉を隣に置いておく。
「連れていかないの? 可哀想じゃない、抱っこして連れていってあげなさいよ」
「そうだな、クローセ、ちと抱っこするからよっと、んじゃ行くか」
そして教会から出て、アンラと二人で村の中心に向かう。
「そうだ、さっき言ってたバアルだったか、悪者なんか?」
「ん? 悪魔だからね~、自分に優しく相手には厳しく、まあ、強さでいけば私が勝つけどね♪」
まあ、会って悪者ならやっつければ良いか。
王子様達と別れてからここしばらくは暇ではあるけど、平和だな。
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