上 下
40 / 149
第一章

第40話 護衛依頼

しおりを挟む
 正門にぞろぞろと引き連れながら向かっていると、門番と衛兵長、ギルマスが揉めている声が聞こえてきた。

「駄目だ! リチウム男爵様の許しがなければお通しできません!」

 おうおう、外に集中していてこっちには気付いてないようだな。

「さらに夜です、来られた事はリチウム男爵様にお伝えしておきます、明日の朝においで下さい」

 四人の門番は侵入させねえように槍を横に寝かせ、門番の詰所からも四人の交代要員が顔を覗かせ様子を伺っている。

 だが、ギルマス達が俺達に気付いたようだ。

「あれはケントとプリムじゃないか、アイツらまたやりやがったのか? だがあの後ろの者達は知らないな……ん?」

「ははは、立つ瀬がなさそうですね。ですが……いやギルマス、あの者達、どこかで見たような」

「なっ! プリム、入っては駄目だと言っていただろ! 早く出なさい!」

 ギルマス達の動きで見つかったようだが、残りはコイツらくらいか?

『正門はそのようですね、裏門にも同数がいるようですが、どうしますか?』

 見回りと門番で三十人ほどしかいないんだな。屋敷を守るにしては思ったより少ないが……。

 よし、面倒だが眠らすのが一番簡単だな、だがアンラはまだ――っ!

(私が眠らせてこようか?)

 言ってる側からアンラは俺の横にトスっと着地してきた。

「それに後ろの奴らは誰だ! すぐに敷地内から出ていくのだ!」

 詰所にいた四人が俺達に慌てて詰めより、敷地から出るように、武器は手に持っていないが追いたててきやがる。

 だがアンラはするするっと俺の横から離れ、門番達が持っていた魔道具を、今度はそっと八人分気付かれないように取ってしまうと『眠りヒュプノス』をかけ、眠らせてしまった。

「おっ、また無詠唱の眠りヒュプノスだな、それも八人同時か」

「君達が出てきたという事はもしかして……」

 あきれ顔のギルマスに俺達の後ろからついてくる八人を見ている。

「おう、ここの地下に捕まってた人達だな、後は裏門に八人門番がいるはずだ。まあ、コイツらが暗殺ギルドかどうか分かんねえけどな」

「ああ、それは後で調べるから大丈夫だ」

 俺は門にたどり着き、閂を外しながらどうなったか話しておく。

 ギィと音を立て鉄格子の門が開き、まずは衛兵長に女達を任せる。

 その後ゾロソロと敷地に入ってくる衛兵達と冒険者達は、二頭引きの荷台に倒れている門番達を乗せていく。

「はぁ、ケント、俺達の仕事は積んでいくだけか? 暗殺ギルドだったんだろ? これでも対人に強い者達を連れてきたんだが……」

 荷台に積まれていく者達を俺の隣で見つめながらボソっとギルマスが頭をかきながら聞いてくる。

「おう。その通りだ、リチウムがギルマスで、壁を壊して下りた地下室の一番奥にサブマスがいたぞ」

「リチウム街の暗殺ギルドのギルマスにサブマスまで生け捕りか……」

 頭をかいていた手を顎に下ろし、無精髭をチャリチャリと音を立てて撫でながら俺の耳に口を寄せてきた。

「おいケント、村に帰るんだったな、村行きの商隊なんか車列の護衛依頼を請けていけ」

 俺にしか聞こえねえ小さい声でボソっとそんな事を言ってきた。

 どういう事だ? あっ、ランクアップのやつか!

「構わねえぞ、その商隊はいつ出るんだ? まさか何日も後って事はないだろうな」

 俺も声をおとし、積み終わった者達が屋敷に進んでいくのを見ながら聞くと。

「明日の朝だ、別のパーティーもいるがそこに入ってもらおうか」

「俺は構わねえが、そのパーティーは嫌がらねえのか? 取り分減るんだろ?」

 村に行く馬車ならそんな多くねえはずだから、一つのパーティーで良いはずだしよ、護衛が増えるだけ依頼報酬をふやすわけねえ。

 なら一人がもらえる報酬が減るだけだもんな。

「その通りだが、まあ、任せておけ、今回はいつもの小さい商隊じゃないからな」

 ニヤリと笑うギルマスは、俺達に早く宿に帰り、明日の朝一番に冒険者ギルドに来いと言って、裏門の方へ冒険者を連れて走っていった。

 助けた八人は、衛兵が二人付き、衛兵の詰所に案内していった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「護衛依頼を請けたケントだ、こっちは――」

「プ、プリムです、よろしくお願いします」

 昨晩はリチウムのお屋敷から帰った後、流石に疲れたのかすぐに寝てしまった。

 まあアンラは酒飲んで本を読んでたみたいだが朝、明るくなる前に起こしてくれた。

 まだ薄暗い内に冒険者ギルドに行き、依頼を登録した後、門前に急ぎ護衛する商隊のところまで来た。

 その中で、ちょうど積み荷のロープの緩みがないかや、車輪、車軸の点検を指示していたおっさんに、俺はこの商隊のリーダーと目星をつけて挨拶した。

「おお、間に合ったようで良かったです、私はこの商隊のリーダーでカルパと言います。今日からしばらくよろしくお願いしますね」

「カルパさんだな、よろしく頼むぜ。それから一緒に護衛をしていくパーティーは? 見あたらねえんだが寝坊か?」

 ここにあるのは馬車五台の商隊だ、三パーティーで護衛のはずなんだが……。

「あはは、開門までには来るでしょう、ケント君にプリムちゃんですね、冒険者ギルドから聞いています」

 ん? なに聞いてんだ?

 ニコニコと俺達の顔を見ながら納得顔で頷いている。

「ケント君は先日のスタンピードでもっとも活躍したと聞いておりますよ、プリムちゃんも街壁で衛兵達と魔法で応戦していたと。いやはや洗礼を受けて間もないと言うのに素晴らしい」

 握手を求めてくるおっさん……その後も根掘り葉掘り聞いてきたがよ、門番が出てきたぜ? 護衛が揃ってねえんだが大丈夫なんか?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

【R18】酔って溺れて沼の中

堀川ぼり
恋愛
お酒の勢いでワンナイトしてしまった後日、わざわざ会いに来たその男に部屋に連れ込まれる話 ※ムーンライトノベルズにも掲載しています

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

あかり
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身

青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。 レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。 13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。 その理由は奇妙なものだった。 幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥ レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。 せめて、旦那様に人間としてみてほしい! レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。 ☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

意地を張っていたら6年もたってしまいました

Hkei
恋愛
「セドリック様が悪いのですわ!」 「そうか?」 婚約者である私の誕生日パーティーで他の令嬢ばかり褒めて、そんなに私のことが嫌いですか! 「もう…セドリック様なんて大嫌いです!!」 その後意地を張っていたら6年もたってしまっていた二人の話。

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

処理中です...