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第一章

第88話 洞窟へ

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 夜営地に到着した俺達は、馬に水をやるため水場に繋ぎ、マルガリータ、ミラーノとサイラスの三人に馬の世話を任せ、俺はまたヤードと先客から少し離れたところにテントを一つ張り、そのテント前に焚き火を準備する。

「アイテールさ、じゃなくてアイテール、この後待つのですか、じゃなくて待つのか?」

 あのシュウソ子爵に聞いたこの夜営地には見張りがいるらしく、俺達は普通の冒険者パーティーで、たまたまここで夜営をしている形にしているから、喋り方も緩くしようと言ってたのだが、ぎこちなさが逆に怪しまれてしまうかも知れない。

「くくっ、もう良いぞ、喋りにくそうだし。もう一つのパーティー組んで間もないって設定に変えよう」

「はい。助かります。部長とかは長く付き合いがあって、あんな感じですが、元々見下す言い方と敬う言い方を使い分けていたのですが、明らかに上の方と分かった後はあの喋り方は、無理なのですよ、結構小心者なので」

「くくっ、まあ良いさ、できれば見下す喋り方はやめた方が良いがな。おっと、誰か来るぞ」

 ヤードと話をしながら石で囲った中に乾燥した草を置き、その上に細い枝を置いたところへ生活魔法で火を付け、火が大きくなったところに太めの枝を加え、焚き火の準備ができたところに、少しはなれた隣で夜営をするだろう冒険者風の男達三人が近付いてきた。

 俺はヤードと目で合図しながら男達の鑑定をした。

「当たりだ」

 小さくヤードにしか聞こえないように伝える。

 そのすぐ後男達が声をかけてきた。

「よう。あんたら馬で移動か? 急ぎの依頼みたいだな」

「ああ。依頼内容は契約上言えないがな、あんたらは歩きのようだな、この辺りで何か採取でもあるのか?」

「そんなもんだ。この辺りは魔物もあまり出ないが、この渓谷内の林は気を付けな、狩りの罠が大量に仕掛けられているらしいからな、たきぎ拾いで入るにしても手前だけにしておけよ」

 なるほど。罠があると警告しておけば奥には行かないって事か。

「ああ。情報ありがとう、その時は気を付ける事にするよ」

「ああ。そうしてくれ」

 そう言った後離れていった。

「どうしますか? 罠があると教えてもらいましたし、まあ、アイツらが歩いた足跡を辿れば簡単に避けて行けますがね。暗部はその修練をしていますので、サイラス部長もできますよ」

 ほう。それは助かるな、俺は鑑定をしながら進むつもりだったが、その分俺は索敵や、見張りの対応に集中できる。

「そうか、なら初めは俺が先行して罠を解除して行こうと思っていたんだが、避けて通れるならまとまって行動した方が良いな」

 馬をテントの近くに繋ぎ直して軽く夕ごはんを済ませた後、辺りはいくつかの焚き火で照らされたところ以外が闇に包まれ、そろそろテントに入る者が出始めた。

 俺は隣タナトス王国騎士団の五人、俺達のところに来た三人と後二人を焚き火の前で話をしているまま結界で捕縛。

「よし、あの五人はもう動けない。声も出せないからもう大丈夫だ。後のパーティーは騎士団ではないから気にする事はないな。林の中に二人いるからそいつは俺が今から捕まえてくるから、そうだな、テントの中にでも放り込んでおくか」

「中身は空だからな。アイテール、一人で大丈夫か? 一人は俺が受け持っても良いぞ」

「大丈夫だマルガリータ。入ったところにいる奴はすぐに結界で閉じ込めてしまうからな。しかし······1000人ほどいるんだ、馬車や馬の通れる道がどこかにあると思うんだが」

「いや、シュウソ子爵の話では、全て徒歩らしい。食料の持ち込みも、パーティー単位で魔法の鞄を使い、ほぼ毎日交代で近くの町や村に買い付けに行くらしいからな」

「なるほどな。よし、俺が林に入って、二人を引きずってくるから、少しだけ待機していてくれ」

 みんなが頷くのを見て俺は立ち上がり、テントの裏に回って夜営地側から誰にも見られていない事を確認した後、林に入った。

 適当に小さな光で足元を照らし、いくつか適当に小枝を拾いながら一人目の見張りの近くまで進み、潜んでいる木の根本まで来ると、木のごと結界を張り、音が漏れないようにしておく。

「よう。そんなところに上って何か採れるのか? 木の実があるようには見えないが」

 俺が話しかけると、驚いたのかガサッと音を立てた。

「あ、ああ。木の実は無い。ボアに追いかけられてな。木に上って隠れていたんだ」

(何者だコイツは。完全に気配を消していたはずだぞ······だが冒険者なら優れた索敵ができる者もいるのか、だとすれば相当高ランクだろうな。仕方がない、適当に夜営地組に合流するか)

 念話で聞いたが間違いは無さそうだな。

 男は木から飛び下りて、俺の前に立ったところで結界をかけ、捕らえておく。

「ボアは近くにはいなさそうだぞ、タナトス王国の兵士さん。見張りはもう一人、同じように捕まえてくるが、それまでは襲われる心配もないから安心しろ」

 俺はそう言って、もう一人の見張りの方へ行く時、驚愕の表情に変わったが、放って俺はもう一人の元に向かい、同じように捕らえた後、引きずり夜営地に戻り、テントに見張り二人を放り込んだ後、今度は五人で林に入った。

 林に入った後、しばらく罠もなく順調に進み、途中からはサイラスとヤードの二人が奴らの歩いた後を辿り、所々罠を解除して進むと、高さ五十メートルはある崖にあった裂け目を守る兵士の姿が見えてきた。

 もちろん俺達は、見張りを捕まえた時のように生活魔法の光は使わず、夜目の魔法をかけ真っ暗な闇の中を近付いているため、向こうからは全く見えないはずだ。

 裂け目を守る兵士四人は、小さな篝火かがりびの近くで崖にもたれ掛かかっていたため、その姿のまま結界で動けなくしてやる。

「よし、もう外には見張りはいない。全てあの裂け目の奥のようだ。行くぞ」

 俺達は堂々と姿を見せ、目だけで俺達を追う見張りの兵士達を置いて、洞窟の入口である裂け目に足を踏み入れた。
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