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第一章

第61話 メイドと前王妃

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「それでレンとサンは何しに来たんや?」

「そんな事も分からないのか? 決まっているだろう。アイテールには私に忠誠を誓ってもらうためだ」

「なにを言ってるのレン。私にですよ。次期国王になるのは私なのだから、妹の旦那には私の派閥をまとめてもらう役目があるからね」

 はは······なんだよこの王子様達は。本気で言ってるなら本格的にエイアの女王が良いと思えてくるぞ。

「なに! このこの!」

「なにする! くぬくぬ!」

 お互いほっぺをつねり出したぞ······エイアのお兄さんだよな? それも十八歳と聞いたが、まるで子供じゃないか······。

「はぁ、あんたらほんま子供やな。全然成長してへんやんか。そんなんやからおじさんもあんたらに、王位継がせる準備もせえへんのや! とりあえず邪魔やから出てけ! どあほ!」

 そう言うと部屋に入ってきて、すぐのところに立っていた二人に向かって、セレーナがソファーから加速して向かい――!

 ドガッ!

「「ヘゴッ!フギャ」」

 手で押したのだが、王子二人は踏ん張る事もできず、部屋の外へ――!

 ドン!

 その勢いのまま、向かいの壁にぶつかり。ずるずると廊下に崩れ落ちた。

「そこの王子担当の護衛さん。コイツら適当な部屋に放り込んどき、朝までたぶん起きひんから足でも持って、引きずって行ってええからな」

 部屋の前にいた護衛にそう言うと部屋の戸を閉めた······。

「良いのか? 王子様だろ?」

「いつもの事ですわ。こんなの日常茶飯事です、ですから気にしなくて大丈夫ですわ」

「ま、まあ、親戚同士だから良いのかにゃ。あれにゃら私の弟達より子供に感じるにゃ、あんな喧嘩のしかた、十歳までしかしてにゃかったにゃよ」

「じゃあ私達はおじさんに、あの王子達の先生と学校の事相談してくるから」

「ああ、王子様達の言ってた事が本当なら今からでも教育し直さないと本当にパナケア王国の未来が心配だよ」

 入れてもらったお茶をゆっくり楽しんだ後、王様に話をして、部屋に戻るそうだ。今夜はエイアと馬車で旅して初めて一人で寝る夜。

 思ったより寝台が広く、肌寒く感じたが寝る事にした。

 夜も静かなもので、朝日で目が覚めるまで熟睡してしまった。

「ふぁっ、久しぶりに警戒無しで寝たな。よし、起きるか」

 顔を洗うとしっかり目も覚め、装備を整えていると、コンコンと戸が叩かれ『お目覚めですか。朝食の準備が整いました』と戸の外から声がかかった。

「ああ、起きてる。少し待ってくれるか」

 そう言い胸当てを装備し、ダガーは収納しておく。

 リュックを担いで戸を開けるとメイドが軽く会釈をして。

「アイテール様、おはようございます。朝食の場に案内いたします」

「ありがとう。待たせたな。すまないが案内頼むよ」

「はい。こちらです」

 綺麗な姿勢で俺の前を歩くメイドについて廊下を進むと、すれ違うメイド達が壁際によって止まり、頭を下げ俺達が通りすぎるまでその姿勢のままだ。

 エイアとセレーナを奥さんにするとこんな感じになるんだな。俺はただの冒険者だって言うのな。まあ叙爵して伯爵になるんだから、こんな事にもなれないとな。

 そして、昨晩夕食を食べた食堂につくと、両開きの戸を前で護衛している兵士達が開けてくれて、止まることもなく中に入ったのだが、空いてる席は俺ともう一人誰か待ちのようだ。

 みた感じは王様に王妃様。公爵様と奥様、エイア、セレーナ、リーンが円卓に座っていて王子様達じゃない誰かがもう一人来るみたいだな。

「おはようございます。お待たせしてすいません」

「おはよう。良く寝れたか? それとも一人で寂しく、寝れなかったとか?」

「こ、公爵様、子供じゃないのですから。王城という事で安心して寝れましたよ」

 案内してくれたメイドが椅子を引いてくれた。

「ありがとうございます」

 はぁ、この至れり尽くせりも、なれないなと思う。するとどうしてか、そのメイドは俺の横にあった最後の席に、スッと座ってしまった······おいおい怒られないか? と心配になったが――!

「合格じゃな。前から言っておったようにレン、サンはもう外に出すが良い。そうだな、適当に男爵を叙爵してやっても良いぞ、それ以上の爵位は要らん。辺境伯のところに兵士見習いとして送るが良かろう。それからヒュギエイアを正式に王位継承権一位とし、広めよ」

 え? なんだこのメイド······。

「くくく。お母様、良くお似合いですよ」

 え? って事は王様のお母さん······前王妃様がなんでメイド姿で俺を案内してくるんだよ!? そうか、廊下のメイド達は俺じゃなくて前王妃様に頭を下げてたのか!

「うむ。私も気に入っておる。たまに新人のメイドが普通に話しかけてくれてな。あの二人の噂を教えてくれるんだが、酷いものだぞ。辺境伯には、厳しく指導するように言っておく事だな。レン、サンが次にこの王城に入れる時は、著しい戦果があった時であるとな」

「ええ。それと、レン、サンの教育係と受け持ちの教師達は今ごろ拘束されている。夕方には詰問も終わり、裏に誰かいないか分かるだろうな」

 俺は立ち上がり、前王妃様の方を向き。

「あの、前王妃様、案内と椅子をありがとうございます。なにか気に触ることをしていないか不安ですが、これからよろしくお願いします」

「ぜ、前王妃様。リーンですにゃ。じゃなくてリーンです。私もよろしくお願いします」

 リーンも立ち上がってそう挨拶をした。

「うむ。エイア、セレーナは私の大事な家族だ。アイテール、リーン。良き夫、友でいてやってくれ。それからひ孫は早く頼むぞ? 産着は私が作ってやるからな」

「おばあ様、お任せ下さいませ。私もセレーナ、リーンもいますからすぐですわよ」

「エイア、セレーナ。あなたはまだ子供がどうやって産まれるか習っていませんでしたね。リーンはお分かりかい?」

「ひゃっ、ひゃい! 近所のお姉さんから教わりましたから、お分かりです!」

 ほう。リーンも知ってるのだな。確か爺ちゃんは『好きになった女の子を大切にしていたらその内産まれる。その時は、その子にありがとうと言うんだぞ。子供にもな』だったな。

「じゃあ、エイアとセレーナに教えてあげて。じゃあ朝食にしょう」

 そして王様がメイドに用意するよう言った時、扉の外で――。
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