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第一章

第2話 旅立ちの準備

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 ラビュリント方面行きの馬車を探したのだが、人気のようで空きがなく、明日に次の馬車が出るまで待たなくてはならなくなった。

 一応朝一出発の便を予約だけをしたのだがまだまだ日が高い。宿を探してあいつらに渡して無くなった装備や備品を揃える事にする。

 ······つもりだったがこの門近くは昼なのに宿がことごとく埋まっており、泊まる場所が確保できない。どうするか······今なら隣の村まで行けるが村で宿が取れるかどうか分からないしなぁ。

 仕方がないのでラビュリント方面に出る門とは反対側の門近くの宿を探す事にした。

 この街は三つの門があり、一つは魔の森に面した冒険者達が多く集まる門、一つはラビュリント方面、もう一つはこの国、セレン王国の王都方面に向かう門、そして俺が今向かうのは王都ヘ向かう門だ。そっちの門近くにもそこそこ宿はあった筈だからな。

 一時間ほど街の中を巡回する馬車に揺られ宿がいくつかある所で下ろしてもらった。一緒に明日の馬車を予約した男性一人女性二人の三人パーティー(ハーレムやろうが!)と、ソロの女の子(うんうん、可愛い娘だな)、行商人だろう小柄なおっちゃん(荷物の感じから薬師かな?)が一人、俺を入れて六人は目の前の同じ宿に入り、全員が問題なくすんなりと宿が取れた。

 俺は着替えやその他諸々を買い揃えるため宿を出て近くを探し回る事にする。

「まいったな、こっち方面はあまり来たことがないから全然分からんぞ」

 適当に歩き、武器防具の店を見つけ、魔狼の革鎧と、ツノガエルのフード付きのローブ、ローブの色は黒にした。

 武器だが予算的に両刃のロングソードを一本か、刃渡り四十センチ弱の片刃のダガーを二本か、······ふむ、ダガーにしよう。

「後はリュックもツノガエルだよな。雨が降ろうが中身は濡れないし、ローブと同じ素材の物で~っと」

「兄ちゃん。リュックならこれはどうだ?」

 店のおっちゃんが今まで自分用に持っていた物とそう変わらない大きさのリュックを見せてくれる。

「ほう、良さそうだな。一度背負ってみても良いかな?」

「好きにすると良い、ほれ」

「ありがとう」

 背負ってみると体にピタリと合い、重さを感じさせない。

「良いな。これを貰うよ」

「この鎧とダガー、ローブも買いで良いのか?」

「ああ、全部もらう。それと砥石といしや針と糸も一緒に頼む」

「なんじゃ? 魔物にでも追いかけられて落としてきたのか?」

「あはは······まあそんなところだ」

「くっくっく。そうではなさそうだがまあ良い。少し待て」

 装備はそのまましたままで金を払い、店を出る。

 それから色々と日用品、着替え、食料品を揃え、後は魔道具とポーション。

「ん~、無くても良いが目の前に店があるし見ておくか」

 宿の真ん前にあるのだが、出掛けたすぐの時に見付けてあったので入ってみる事に。

 店に入るところで薬師だろうと思っているおっちゃんが出てきて宿の方に帰っていった。

 おっちゃんも夕食までの暇潰しに覗きに来たようだな。

 色々と見て回ったが、特に必要のない、ありきたりな物ばかりで、買わずに俺も宿に戻ることにした。

 宿に戻ると宿の客だけでなく、食事のために来ているようで、そこそこの客がテーブルを埋めている。

 その事からここの食事が美味いのだと俺に教えてくれる。

「お客さん。もう食べるかい?」

 声をかけてきたのは料理を運ぶ宿の受け付けをしてくれた女性だ。俺より少し歳上であろう人が聞いてきたので、数瞬考えて食べることにした。

「ああ、頼めるか?」

「好きなところに座って。飲み物は?」

「軽めの物で」

「エールか、ワインだね」

 まわりを見ると、今日のメニューはよく煮込まれた肉のシチューの様だ。

 それなら。

「ワインで」

「あいよっ。席は好きなところにって言ったけど二人掛けの所にしてね」

「ああ」

 客室に上がる階段橫の席に座り、料理を待つが、ちょっとした間にみるみる客が増え満席になってしまう。

 料理を持ち俺の方にくるお姉さん。

 階段から降りてきた薬師のおっちゃん。

「お待たせ。ん? お客さん夕食かい? 今は席が埋ったところだからねぇ」

「相席でも良いぞ。そっちが嫌ならすすめないが」

「悪いねお客さん。相席でならすぐに料理を持ってくるが」

「お願いします」

 え? 女性の声?

「じゃあ飲み物は?」

「ワインを一杯だけお願いします」

 やっぱり女性の声だぞ······フードを目深にしているから顔は見えないが、向こうは立っていて俺は今座っているので顎から鼻くらいまでならかろうじて見える。······女性だな。間違えて背の低いおっちゃんと思っていたが······申し訳ない。

 俺は心の中で謝罪してボトルで頼んだワインをお裾分けすることを心に誓った。

 俺は食べ始め······うん、美味いな。

 薬師の女性はフードを取らずシチューを食べ、ワインを飲む。

 シチューを食べきった俺は、空になっていたグラスに注ぎワインを飲む。

 女性も食べきり、ワインが無くなって立ち上がろうとしたところを見計らい、女性のグラスにお詫びのワインを注いであげる。

「一人で飲むのも寂しいので、少し一緒に飲んでくれませんか?」

 注いでおきながら飲んでくれませんかは無いだろ。

 この手法は以前にこうすれば女性は許してくれると聞いた。

「あ、ありがとうございます」

「いえいえ。明日からはしばらく同じ馬車に乗る者同士ですからお近づきの印として」

「うふふ。はい、いただきます」

 色々と話をしながら名前はエイア。俺と同じ歳という事、髪の毛はほとんどの者が金髪や茶色の髪なのに対して珍しく、俺と同じ黒髪。

 対称的な透き通るような白さの小さな顔に大きな瞳が緑色だ。ちなみに俺は焦げ茶色と地味なんだが。それにエイアは耳がとがっているからエルフかな。

 それとこの旅の目的はラビュリントへ王都から向かう途中との事、薬師のスキルがあり、ラビュリントへは素材の仕入れを自身の目で見てやるため、との事が分かった。

 二人で三本のワインが無くなるまで飲み、お開きとなり部屋に戻る事にしたのだが······。
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