64 / 115
エウダイモニア
62話 誘拐
しおりを挟む
一週間は何もなかった。まるで嵐の静けさのような。トートは不安が募る。
「・・・ト」
ドン
「い・・・スー」
「余所見すんな」
「すいません・・・」
「気持ちは分かりますが訓練は手を抜いてはダメですよ」
レオはアタナシアナの方を見る。つられてトートも見る。
アタナシアナはアイシャと共に魔力循環の練習をしていた。
トートはその光景を見た後、腰にある銃を取り出し眺め、仕舞い立ち上がる。
「もう一度お願いします」
トートは訓練を終え、一足先に屋敷へと戻った。
「ただいま帰りました」
「帰ったよー」
「おかえりなさいませ。皆さん」
「トートは何処に?」
レオが聴くと執事長とメイド長が顔見合わせる。全員に不安の表情が見える。
「帰ってきてないんですか?」
「どうした?」
ラズリが部屋から出てくる。
「ラズリ!トート見なかった?」
「いや」
全員が顔を見合わせる。
「俺は訓練所、付近探してきます」
「私も行く」
「俺はここら辺探す」
「執事長達はアタナシアナを頼む。ライの所に行く」
ー数時間後ー
パイロン、ライ、セリアが屋敷のリビングに集まる。
「今、『影』に情報収集させてるよ。でも・・・」
全員が分かっていた。トートは公爵家にいると。
バン ドン
「痛ってぇ」
「袋を取れ」
トートは顔の袋をされていた。それを勢いよく取られる。
「トート」
トートの目の前には公爵が高級なデスクに腕を突き拳にアゴを預け、椅子に座っていた。その目は相変わらず冷酷でトートを見ていなかった。
「縄を外せ」
「はっ」
手首に巻かれた縄を外される。
「何のようでしょう?」
トートは公爵に勝てる程の実力は十分にある。しかし長年の呪いがそれを許さない。あの人には絶対に逆らってはならないという呪縛。
「お前を嫡男として向かい入れてやる」
やるっか相変わらずだな。
トートは静かにため息を吐く。
「だが、その前に家族を蔑ろにした罰を受けて貰う」
えっ、トートは戸惑いの表情を浮かべる。
「連れれていけ」
トートの手首に魔力遮断の手錠を着けられる。
「離せ・・・離せ!」
抵抗しようとするが、何故か上手く力が入らない。
ドン バン ガチャ
トートは暗く、埃とカビの生えた部屋に閉じ込まれる。
「出して!!」
ドンドンドン
「出せ!」
バン
「出して・・・」
力なく蹲る。
そこはトートが昔、住まわされていた部屋。辛い過去。昔の自分ではないそう思っていた。しかし何に変わっていない。自分に嫌気がさす。
「まず、公爵家のことを話すね」
フェルナンデス公爵家、建国から皇帝に支えてる帝国唯一の公爵家。皇族の血も受け継いでる為、その権力は絶大で国の中枢を担っている。
現公爵家の家族構成は夫セトと後妻ネフティス、子供(トートを除く)息子と娘が一人ずつ。前妻は病死して、その後今の奥さんを向かい入れた。現在、奥さんは妊娠中。
前公爵とは違い現公爵は横暴で他者を見下す、不届者で公爵家の支持率は現在低迷中だ。
「つまり、トートを後継ぎにして、パイロンの後ろ盾を得て支持率アップをし、さらに皇帝の娘と結婚されることでその地位を絶対としようとしている?」
「またはトートを皇帝にして実権を握ろうとしているにかも」
ん~、全員が悩む。
「全部最悪だな」
ドドドン バン
メイド長が珍しくドアを勢いよく開ける。
「皇帝陛下がお越しになりました!」
全員がしっかり嫌な顔する。
「突然すまないな」
「失礼・・・」
執事長がお茶とお菓子を持ってきたがラズリが遮る。
「協力するのかしないのかはっきりしろ」
ラズリの態度に執事長が目を丸くする。
ヤーセ持ってきてくれ、っと皇帝が指示を出す。執事長がお茶を出し速やかに立ち去る。
「娘が歳の離れた男と結婚してもいいのか?」
フィールが確信を持って言う。
「何も分かっていないな」
ため息混じるに茶を啜る。
「何だと!」
フィールは立ち上がるがレオが制す。
「どういうことでしょう?」
皇帝が睨みながら問う。レオの殺意を感じ取ったフィールが静かに座る。
「(珍しく怒ってんな)」
ライは皇帝の哀れみも込めて静かに茶を啜る。
「貴族の結婚は仕事の一部だ。我はもちろん公爵も戦略結婚をした。愛など求めてどうする」
「(愛ね・・・)」
ライは茶を眺める。
バチン
皇帝が左を向く。その頬は赤く染まっていた。
「大人の都合に子供を巻き込まないで!」
ずっと黙っていたセリアが皇帝の頬を叩いた。
「仕事の一部?ふざけないで!産んだんだから感謝しなさい!?エゴを押し付けるくらいなら産まないで!」
声を荒げる。
「・・・ト」
ドン
「い・・・スー」
「余所見すんな」
「すいません・・・」
「気持ちは分かりますが訓練は手を抜いてはダメですよ」
レオはアタナシアナの方を見る。つられてトートも見る。
アタナシアナはアイシャと共に魔力循環の練習をしていた。
トートはその光景を見た後、腰にある銃を取り出し眺め、仕舞い立ち上がる。
「もう一度お願いします」
トートは訓練を終え、一足先に屋敷へと戻った。
「ただいま帰りました」
「帰ったよー」
「おかえりなさいませ。皆さん」
「トートは何処に?」
レオが聴くと執事長とメイド長が顔見合わせる。全員に不安の表情が見える。
「帰ってきてないんですか?」
「どうした?」
ラズリが部屋から出てくる。
「ラズリ!トート見なかった?」
「いや」
全員が顔を見合わせる。
「俺は訓練所、付近探してきます」
「私も行く」
「俺はここら辺探す」
「執事長達はアタナシアナを頼む。ライの所に行く」
ー数時間後ー
パイロン、ライ、セリアが屋敷のリビングに集まる。
「今、『影』に情報収集させてるよ。でも・・・」
全員が分かっていた。トートは公爵家にいると。
バン ドン
「痛ってぇ」
「袋を取れ」
トートは顔の袋をされていた。それを勢いよく取られる。
「トート」
トートの目の前には公爵が高級なデスクに腕を突き拳にアゴを預け、椅子に座っていた。その目は相変わらず冷酷でトートを見ていなかった。
「縄を外せ」
「はっ」
手首に巻かれた縄を外される。
「何のようでしょう?」
トートは公爵に勝てる程の実力は十分にある。しかし長年の呪いがそれを許さない。あの人には絶対に逆らってはならないという呪縛。
「お前を嫡男として向かい入れてやる」
やるっか相変わらずだな。
トートは静かにため息を吐く。
「だが、その前に家族を蔑ろにした罰を受けて貰う」
えっ、トートは戸惑いの表情を浮かべる。
「連れれていけ」
トートの手首に魔力遮断の手錠を着けられる。
「離せ・・・離せ!」
抵抗しようとするが、何故か上手く力が入らない。
ドン バン ガチャ
トートは暗く、埃とカビの生えた部屋に閉じ込まれる。
「出して!!」
ドンドンドン
「出せ!」
バン
「出して・・・」
力なく蹲る。
そこはトートが昔、住まわされていた部屋。辛い過去。昔の自分ではないそう思っていた。しかし何に変わっていない。自分に嫌気がさす。
「まず、公爵家のことを話すね」
フェルナンデス公爵家、建国から皇帝に支えてる帝国唯一の公爵家。皇族の血も受け継いでる為、その権力は絶大で国の中枢を担っている。
現公爵家の家族構成は夫セトと後妻ネフティス、子供(トートを除く)息子と娘が一人ずつ。前妻は病死して、その後今の奥さんを向かい入れた。現在、奥さんは妊娠中。
前公爵とは違い現公爵は横暴で他者を見下す、不届者で公爵家の支持率は現在低迷中だ。
「つまり、トートを後継ぎにして、パイロンの後ろ盾を得て支持率アップをし、さらに皇帝の娘と結婚されることでその地位を絶対としようとしている?」
「またはトートを皇帝にして実権を握ろうとしているにかも」
ん~、全員が悩む。
「全部最悪だな」
ドドドン バン
メイド長が珍しくドアを勢いよく開ける。
「皇帝陛下がお越しになりました!」
全員がしっかり嫌な顔する。
「突然すまないな」
「失礼・・・」
執事長がお茶とお菓子を持ってきたがラズリが遮る。
「協力するのかしないのかはっきりしろ」
ラズリの態度に執事長が目を丸くする。
ヤーセ持ってきてくれ、っと皇帝が指示を出す。執事長がお茶を出し速やかに立ち去る。
「娘が歳の離れた男と結婚してもいいのか?」
フィールが確信を持って言う。
「何も分かっていないな」
ため息混じるに茶を啜る。
「何だと!」
フィールは立ち上がるがレオが制す。
「どういうことでしょう?」
皇帝が睨みながら問う。レオの殺意を感じ取ったフィールが静かに座る。
「(珍しく怒ってんな)」
ライは皇帝の哀れみも込めて静かに茶を啜る。
「貴族の結婚は仕事の一部だ。我はもちろん公爵も戦略結婚をした。愛など求めてどうする」
「(愛ね・・・)」
ライは茶を眺める。
バチン
皇帝が左を向く。その頬は赤く染まっていた。
「大人の都合に子供を巻き込まないで!」
ずっと黙っていたセリアが皇帝の頬を叩いた。
「仕事の一部?ふざけないで!産んだんだから感謝しなさい!?エゴを押し付けるくらいなら産まないで!」
声を荒げる。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
赤鬼弥幸の妖傀奇譚-ヨウカイキタン-
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
夜闇を駆け回る狐面の男、夜狐(やっこ)。正体は、いつも教室の端で寝ている男子高校生、赤鬼弥幸(あかぎやこ)。
弥幸が纏っている不思議な空気に引き寄せられたかのように、同じクラスの女子高生、翡翠星桜(ひすいしおん)が彼を観察していた。
ある日の夜、星桜は恨みの具現化である【妖傀(ようかい)】に襲われてしまう。そこに、今学校出流れている噂の人物。狐面の男、ナナシと名乗る男性が現れ、一瞬にして倒してしまう。
この出会いで、星桜はナナシと名乗る男性、学校では謎の存在である弥幸について知っていくことになる。そして、自分自身が持っている特別な力についても──
※なろう・カクヨムにも投稿しております
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞
橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる