最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

15話 ライ

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 夜の繁華街に来ていた。初めて来るから目がクラクラする。目のやり場にも困る。
「トート、大丈夫?」
 アイシャさんが心配そうな顔で自分の顔を覗く。
「だい、大丈夫です」
「ぷはっ。顔真っ赤だぜ」
「な、なんでそんな冷静何ですか」
「俺達は何度も来てるからな。それに割と居心地いいし」
「居心地いいですか?」
 自分は遠慮気味に辺りを見渡す。
「仮面を被っていますから目立ちたくなくっても目立ってしまうんです」
 レオさんが指で自身の仮面を叩く。
 確かに慣れてしまったから気にならないが初めて見る人が見ると驚くだろう。しかし夜の繁華街で見ると周りが派手な分、むしろ地味に見える。
 ラズリさんが足を止める。
「着きましたね」
『羊のいざない』と書かれている。
 自分は理解が追いつかなかったが、パイロンの皆さんはどんどん先行く。慌てて追いかける。
 中に入ると色々な意味で華やかで固まる。
「おや、カワイイ坊や」
 美しい女性が突然、自分の顎を撫でる。
「へっ!?いや・・・」
「お姉さんと遊ばない」
 耳元で囁かれる。自分は頭と目がクラクラする。するとグイッと体が引っ張られる。
「おい、あんまりいじめんな」
 フィールさんが自分を引っ張り、言う。
「あら、あんた達の知り合い?なーんだ残念」
 女性がガッカリして言うがあまりガッカリしていない様に見える。
「お二人共早く。こちらです」
 レオさん達は既に2階にいた。
「行くぞ」
「あの、助けてくれてありがとございました」
「あぁ、気にするな」
 そう言い歩き出す。自分は後に続く。
 ラズリさん達の先頭にいる女性の後に続く。
「こちらです」
 扉を女性が手で指す。
コンコンコン 
「パイロンの皆様です」
「入ってー」
 軽い口調で言う。声からして男だろう。
「では、失礼します」
 女性は一礼して立ち去る。ラズリさんは扉を開ける。
「久しぶりだね。パイロン」
 すみれ色の髪に黒目のイケメンが笑顔でこちらに手を振るう。
「久しぶり、ライ」
「兄さんも。情報は入っているよ」
「(兄さん・・・)えっ!?お兄さん!」
 自分はレオさんとライさんを交互に見る。
「はい、俺の唯一の肉親で弟のライです」
 確かによく見ると似ている。
「あ、あの自分は・・・」
「トート、15歳、魔法フィジカル。魔法が原因でいじめにあい見返そうと軍隊に入隊。のちに皇帝の命によりパイロンの隊に入る。だろう?」
 自分はポカーンとしてしまう。
「どうして?」
「ライは凄腕の情報屋なんです。来る前にも言いましたが俺達の欲しい情報をくれるんです」
「それが僕の仕事だからね」
「ついでに言えば何でも屋でもあるんだ。欲しい物は大体手に入れてくれる」
 フィールさんが感心したように言う。
「まっ、立ち話しもなんだし座って」
 ライさんは手招きをする。
「ラズリすまないが例のものはまだなんだ」
「それはいい。今日はトートにここまでの道案内とお前の招待だ」
「招待?」
「明日トートの歓迎会をやるんだよ。どうだ」
 レオさんが言う。
「僕も?トートいいの?」
「はい、ぜひ大勢の人の方が楽しいですし」
「じゃあ行くよ。よろしく」
 にっこり笑う。

 ライさんが玄関まで送って来くれた。
「じゃあ、また明日ね」
 手を振るう。
「ありがとございました」
 自分達は再び歩き出す。

 ー翌日ー
 ピンポーン
「皆さんお客さま様です」
 執事長が声を張って言う。
「はい。今行きます」
 自分は急いで行く。
「よう。トート昨日ぶり」
 ライさんが手を振るう。
「ライさん早いですね」
「久しぶりに色々見て周りたかったんだ」
「ライ、早いですね」
 2階からレオさんが顔を出す。
「屋敷を見て周りたかったんだ。トート借りていい?」
「屋敷の案内トートにはまだしてないんです」
「じゃあ、僕が案内するよ。どうだい。一緒に見て周らないかい」
「はい、お願いします」
 自分は色々と見て周った。一番驚いたのが図書室だった。壁一面に本が敷き詰められている。
「デカいですね」
「ラズリが本好きなんだ。皇帝がいっぱいくれたんだ」
「そうだったんですね」
「意外かい」
「いえ、絵になると言うか」
「言えてる」
 自分は寡黙で紅茶を飲みながら本を読むラズリさんを想像する。
「行こう。僕のお気に入りの場所教えてあげる」
「うわーぁ」
 花が一面に咲き隅々まで手入れされた庭園があった。
「綺麗ですね」
「あぁ」
「ライ様、トート様」
 後ろから突然声が聞こえ2人で跳ね上がる。
「うぉ」
「メイド長!」
「あちらにお茶の用意をしました」
 手で場所を指す。そこにはガゼボがあった。
「ごゆるりと」
 一礼すると去っていった。
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