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12.納得いかない!
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両親は既に他界しており、どちらも黒髪黒目ではなかったそうだ。
田舎の村で生まれたヴァルクは、産まれてすぐ村を追い出された。大きくなってから親に聞いたらしいので、本当はもっと酷い状況だったかもしれない。幸い両親は、悪役によくある毒親ではなかったようで愛情を受けて育った。ただ、その幸せも長くは続かず、物心がついた頃に父親がヴァルクを庇って人間に殺され、母親もその数年後に流行病で亡くなってしまっている。それから歳を数えていないようだが、ゲームでは俺と同じ19歳だ。
父親が人間に殺されているのだから、恨んでもしかたないだろうに、母親は『人を恨んではいけないよ』と口癖のように言っていたという。
我が子を黒の悪魔にさせないためか、悪口などは一切言わなかったらしい。
両親が亡くなってから母親の言葉を信じて街へ行ったりもしたようだが、良くて怖がられ、悪ければ殺されそうになることが何度もあったという。
——よく、今まで生きていたものだ。子供なのに、誰にも頼れず、1人で。もともと魔力量が多いお陰で物理的な対処は問題なくできても、心は辛かっただろうに。
しかも、先程の言葉は母親の死に際の言葉らしい。
『今は辛いかもしれないけど、生きて....。生きてさえいれば、外見に惑わされず中身を見てくれる人が必ず現れるから。諦めないで...愛してるわ、ヴァルク。ひとりにして、ごめんなさい.....』
その言葉を聞いた時、耐えきれずに俺の涙腺は崩壊した。
「っ...ふ、....ごめっ....うっ....」
ヴァルクは泣いていないのに、俺が泣いたらダメだろ....!
頭ではわかっていても、一度溢れてしまった涙はなかなか止まってくれない。拭っても拭っても溢れてくる。
「サクヤ!?どうした?どこか痛むのか?」
突然泣き出した俺を見て、ヴァルクがどうしたらいいかわからないのかあたふたとしている。
うん。痛い。だけど、その当時のヴァルクの気持ちなんて、俺なんかが想像できるはずもない。だから、なんて言葉をかけたらいいかわからず、慌てるヴァルクを嗚咽を噛み殺しながら抱きしめた。
「サク....ヤ........?」
ヴァルクにしてみたら、突然の涙とハグだったようで、動揺がこちらにも伝わってきた。
それでも離さずにぎゅっと抱きついていると、戸惑いながらも、俺の背中に腕を回して、まるで子供をあやす時のようにゆっくり背中を撫でてくれる。
そのままの状態でヴァルクが耳元で囁いた。
「......本当にお前は、.....いつも俺の欲しいものをくれるな.....」
へ....?俺なんにもあげてないけど....?
嗚咽にかき消されそうなくらい小さな声で囁かれた言葉に、心当たりがない。
今日渡した服のお金は、ドロップアイテムを換金してそこからもらうことになってるから、俺があげることにはならない。
言葉の意味を考えていたら涙もほとんど止まったので、ヴァルクから身体を離し、変な声が出たら困るので首だけ傾げる。
だが、ヴァルクは言うつもりがないのか、「止まったか?」とだけ言って溢れた涙を指で優しく拭いてくれた。
「ん.....」
言うつもりがないのなら仕方ない。それよりも、なんか急に恥ずかしくなって顔を背けた。
「どうした?まだ痛むか?」
「う、ううんっ!大丈夫!」
だからちょっと離れてくださいっ!いや、俺が抱きついたんだけどね!?至近距離のイケメンは心臓に悪いんですよ....。
「ところで.....、友達、とは具体的になにをするんだ....?」
俺の涙も完全に止まり、そろそろ解散かな、というところでヴァルクが言った。
一瞬え?と思ったが、よく考えたみたらそうだ。昔の話を聞いた限りでは家族以外の人とはまともに話せなかったようだし。
「んー、別に決まってるわけじゃないよ。ご飯行ったり、ダンジョン行ったり?ヴァルクはなんかやりたいことないの?」
「...................思いつかない」
頑張って考えていたがすぐには思いつかなかったらしい。そりゃそうか。
「あ!じゃあ来週は一緒にお昼食べない?俺買ってくるからさ!」
「........いいのか?」
「もちろん!そういやヴァルクって普段なに食べてんの?」
「.......主に魔獣だな」
小さい頃から1人でも生きていけるように、魔獣を倒す術はもちろん、血抜きや解体、食べれる草や果物の見分け方なども教わったらしい。
「すご!....ねぇ、いいこと思いついたんだけど!」
「なんだ?」
「来週はさ、お泊まり会しない?」
「......?なんだ?それは」
「友達の家に寝泊まりすんの!ヴァルクはまだ街に入れないから、俺がダンジョンに行くよ!楽しそうだろ?」
「.......つまり、一日中サクヤと一緒にいれる、ということか?」
「そう!ダンジョンにも行ってみたかったし、昼間はダンジョン探索して、夜はヴァルクがいつも食べてるやつ食べながらくだらない話いっぱいすんの!」
考えただけでも楽しそう!もちろんヴァルクがしたいこと思いついたらそれやってもいいしね!
「.........ああ、それは楽しそうだな」
「っ....!」
わ、笑ったーー!一瞬だったけど!
目も少し細まり、口も少しだけ弧を描いていた。
イケメンの笑顔の破壊力やばー!
「じゃあ来週はダンジョン集合でいい?」
いいもの見たな~とにこにこしながら問うと、ヴァルクは少し考えてから「いや」と言った。
「またここで落ち合おう」
「え?でも面倒じゃない?」
「大丈夫だ」
....まあ、俺的にはありがたいけどね?ダンジョンまでの道うろ覚えだし。ヴァルクがいいって言ってるんだからいっか。
「ありがと。じゃあ来週、お昼前にまたここで」
「ああ」
◇◇◇
ヴァルクと別れてからまっすぐギルドへ戻ると、いつもはない人だかりができていた。
なんだ?なんかあったのか?
少し離れたところから窺うと、中心にいるのはどうやらロベルトのようだ。普段あまり表に出てこないロベルトに今がチャンスとばかりに女の人たちが殺到している。
おーおー、おモテになるこって。
ロベルトは少し鬱陶しそうな顔をしているが、羨ましい限りだ。俺も顔はイケメンなはずなのに、なぜか全然モテない。中身がモブだとバレているんだろうか?しかも、最初はいい感じでも、職業がテイマーだと言うと大抵引かれる。
そんな人気ないの?みんなブルーのかわいさ知らないくせに!第二の人生までモテないって酷いよ神様!
.....さて、少し待ってみたものの、人の波が引く気配はない。これじゃあドロップアイテムも渡せないし出直そうかな。ってかなんであの人外に出てきてるの?
出直そう、と思った直後、ロベルトと目が合った。金色の瞳がすうっと細められ、女の人を無視しながらこちらへと向かってくる。
え、え、なに?なんか怒ってる?怖いんだけど。
反射的に逃げようとしたことも、怒りを助長させてしまったようだ。
あっさりと腕を掴まれ、「なぜ逃げようとした?」と言い放つ声がかなり低い。
「そ、そんな顔してたら誰でも逃げるから!なんで怒ってんだよ!」
「.......遅い。寄り道はするなと言ってあっただろ」
「は....?」
なに?そんなことで怒ってたの?
「別に寄り道なんてしてな——うわっ!?」
不意にロベルトの目が大きく見開かれたと思ったら、腕を強く引かれ、浮遊感に襲われた。
「ちょっ!なんだよ!おろせっ」
易々と担がれてしまい、俺の言葉を無視してギルドへと入っていく。女の人たちも、終始無視されているのになんできゃーきゃー騒いでるんだろ....?冷たくされたら悲しくない....?
ギルドの二階の部屋に入るとようやく下ろしてくれたが、壁を背に、顔の両側にバン!と大きな音が出る程強く壁に手をつかれ、身体がびくりと竦んだ。
こっ、こわーー!!なに怒ってんだよー!全国の女性の皆さん!壁ドンはただ怖いだけですよ!どこにもキュンの要素が見当たりません!顔がいいから怒ると迫力でるんだよー!
『マスター、間に入りましょうか?』
あまりにも怖がっているからか、いつもは傍観しているブルーが口を挟んだ。
い、いや...まだ大丈夫....。
手はあげないだろうし、怖いだけで割り込んでもらうのもちょっと情けない。
「おい、あいつになにかされたのか?」
「へ.....?」
あいつって誰?なにかってなに?もっとわかりやすく言ってもらえます?
「目が赤い」
「目?」
目が赤い?.....あ、もしかして泣いたのバレてる!?そんな酷いのか!?
「あー....、別にヴァルクになにかされたとかじゃないからな?俺が勝手に泣いただけだし....」
ってか恥ずかいからあんまり突っ込んでほしくないんだけど。それよりなんでそんな怒ってんの?
「じゃあなんで泣いたんだ」
突っ込まないでって言ってるでしょー!?なんだっていいじゃんか!
「べ、別になんだっていいだろ」
「言えないってことはやっぱりなんかされたんじゃないのか?」
「言えないんじゃなくて言わないの!」
キッパリと言い放ったのに、まだ訝しげに見てくる。疑り深いなぁ、もう!
「ほんとになにもされてないから。信じて」
ロベルトの目を見つめ、真摯に訴えると数秒なにも言わず、やがて目を閉じて深くため息をついた。
「あー、やっぱり1人で行かせるんじゃなかった」
「はぁ!?まだ疑ってんの!?」
「そうじゃない。お前が俺の知らないところで泣いたってのが気に入らないんだよ。今度から泣くときは俺の側で泣け」
いや、益々意味わからんわ!なんだその俺様発言は!そもそもそんなコントロールができるんだったら泣かないわっ!
「意味わかんないこと言ってないでいい加減離れろって」
「約束できるなら離れてやる」
「はぁ!?」
ほんとになに言ってんの!?
冗談でも言っているのかとも思ったが、顔は至って真剣だ。約束しないと離れない、というのも冗談ではないようで、目さえ逸らしてくれない。
これ拒否権あんの?
少し粘ってみたがやっぱり拒否権はないようで頷くしかなかった。
田舎の村で生まれたヴァルクは、産まれてすぐ村を追い出された。大きくなってから親に聞いたらしいので、本当はもっと酷い状況だったかもしれない。幸い両親は、悪役によくある毒親ではなかったようで愛情を受けて育った。ただ、その幸せも長くは続かず、物心がついた頃に父親がヴァルクを庇って人間に殺され、母親もその数年後に流行病で亡くなってしまっている。それから歳を数えていないようだが、ゲームでは俺と同じ19歳だ。
父親が人間に殺されているのだから、恨んでもしかたないだろうに、母親は『人を恨んではいけないよ』と口癖のように言っていたという。
我が子を黒の悪魔にさせないためか、悪口などは一切言わなかったらしい。
両親が亡くなってから母親の言葉を信じて街へ行ったりもしたようだが、良くて怖がられ、悪ければ殺されそうになることが何度もあったという。
——よく、今まで生きていたものだ。子供なのに、誰にも頼れず、1人で。もともと魔力量が多いお陰で物理的な対処は問題なくできても、心は辛かっただろうに。
しかも、先程の言葉は母親の死に際の言葉らしい。
『今は辛いかもしれないけど、生きて....。生きてさえいれば、外見に惑わされず中身を見てくれる人が必ず現れるから。諦めないで...愛してるわ、ヴァルク。ひとりにして、ごめんなさい.....』
その言葉を聞いた時、耐えきれずに俺の涙腺は崩壊した。
「っ...ふ、....ごめっ....うっ....」
ヴァルクは泣いていないのに、俺が泣いたらダメだろ....!
頭ではわかっていても、一度溢れてしまった涙はなかなか止まってくれない。拭っても拭っても溢れてくる。
「サクヤ!?どうした?どこか痛むのか?」
突然泣き出した俺を見て、ヴァルクがどうしたらいいかわからないのかあたふたとしている。
うん。痛い。だけど、その当時のヴァルクの気持ちなんて、俺なんかが想像できるはずもない。だから、なんて言葉をかけたらいいかわからず、慌てるヴァルクを嗚咽を噛み殺しながら抱きしめた。
「サク....ヤ........?」
ヴァルクにしてみたら、突然の涙とハグだったようで、動揺がこちらにも伝わってきた。
それでも離さずにぎゅっと抱きついていると、戸惑いながらも、俺の背中に腕を回して、まるで子供をあやす時のようにゆっくり背中を撫でてくれる。
そのままの状態でヴァルクが耳元で囁いた。
「......本当にお前は、.....いつも俺の欲しいものをくれるな.....」
へ....?俺なんにもあげてないけど....?
嗚咽にかき消されそうなくらい小さな声で囁かれた言葉に、心当たりがない。
今日渡した服のお金は、ドロップアイテムを換金してそこからもらうことになってるから、俺があげることにはならない。
言葉の意味を考えていたら涙もほとんど止まったので、ヴァルクから身体を離し、変な声が出たら困るので首だけ傾げる。
だが、ヴァルクは言うつもりがないのか、「止まったか?」とだけ言って溢れた涙を指で優しく拭いてくれた。
「ん.....」
言うつもりがないのなら仕方ない。それよりも、なんか急に恥ずかしくなって顔を背けた。
「どうした?まだ痛むか?」
「う、ううんっ!大丈夫!」
だからちょっと離れてくださいっ!いや、俺が抱きついたんだけどね!?至近距離のイケメンは心臓に悪いんですよ....。
「ところで.....、友達、とは具体的になにをするんだ....?」
俺の涙も完全に止まり、そろそろ解散かな、というところでヴァルクが言った。
一瞬え?と思ったが、よく考えたみたらそうだ。昔の話を聞いた限りでは家族以外の人とはまともに話せなかったようだし。
「んー、別に決まってるわけじゃないよ。ご飯行ったり、ダンジョン行ったり?ヴァルクはなんかやりたいことないの?」
「...................思いつかない」
頑張って考えていたがすぐには思いつかなかったらしい。そりゃそうか。
「あ!じゃあ来週は一緒にお昼食べない?俺買ってくるからさ!」
「........いいのか?」
「もちろん!そういやヴァルクって普段なに食べてんの?」
「.......主に魔獣だな」
小さい頃から1人でも生きていけるように、魔獣を倒す術はもちろん、血抜きや解体、食べれる草や果物の見分け方なども教わったらしい。
「すご!....ねぇ、いいこと思いついたんだけど!」
「なんだ?」
「来週はさ、お泊まり会しない?」
「......?なんだ?それは」
「友達の家に寝泊まりすんの!ヴァルクはまだ街に入れないから、俺がダンジョンに行くよ!楽しそうだろ?」
「.......つまり、一日中サクヤと一緒にいれる、ということか?」
「そう!ダンジョンにも行ってみたかったし、昼間はダンジョン探索して、夜はヴァルクがいつも食べてるやつ食べながらくだらない話いっぱいすんの!」
考えただけでも楽しそう!もちろんヴァルクがしたいこと思いついたらそれやってもいいしね!
「.........ああ、それは楽しそうだな」
「っ....!」
わ、笑ったーー!一瞬だったけど!
目も少し細まり、口も少しだけ弧を描いていた。
イケメンの笑顔の破壊力やばー!
「じゃあ来週はダンジョン集合でいい?」
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「またここで落ち合おう」
「え?でも面倒じゃない?」
「大丈夫だ」
....まあ、俺的にはありがたいけどね?ダンジョンまでの道うろ覚えだし。ヴァルクがいいって言ってるんだからいっか。
「ありがと。じゃあ来週、お昼前にまたここで」
「ああ」
◇◇◇
ヴァルクと別れてからまっすぐギルドへ戻ると、いつもはない人だかりができていた。
なんだ?なんかあったのか?
少し離れたところから窺うと、中心にいるのはどうやらロベルトのようだ。普段あまり表に出てこないロベルトに今がチャンスとばかりに女の人たちが殺到している。
おーおー、おモテになるこって。
ロベルトは少し鬱陶しそうな顔をしているが、羨ましい限りだ。俺も顔はイケメンなはずなのに、なぜか全然モテない。中身がモブだとバレているんだろうか?しかも、最初はいい感じでも、職業がテイマーだと言うと大抵引かれる。
そんな人気ないの?みんなブルーのかわいさ知らないくせに!第二の人生までモテないって酷いよ神様!
.....さて、少し待ってみたものの、人の波が引く気配はない。これじゃあドロップアイテムも渡せないし出直そうかな。ってかなんであの人外に出てきてるの?
出直そう、と思った直後、ロベルトと目が合った。金色の瞳がすうっと細められ、女の人を無視しながらこちらへと向かってくる。
え、え、なに?なんか怒ってる?怖いんだけど。
反射的に逃げようとしたことも、怒りを助長させてしまったようだ。
あっさりと腕を掴まれ、「なぜ逃げようとした?」と言い放つ声がかなり低い。
「そ、そんな顔してたら誰でも逃げるから!なんで怒ってんだよ!」
「.......遅い。寄り道はするなと言ってあっただろ」
「は....?」
なに?そんなことで怒ってたの?
「別に寄り道なんてしてな——うわっ!?」
不意にロベルトの目が大きく見開かれたと思ったら、腕を強く引かれ、浮遊感に襲われた。
「ちょっ!なんだよ!おろせっ」
易々と担がれてしまい、俺の言葉を無視してギルドへと入っていく。女の人たちも、終始無視されているのになんできゃーきゃー騒いでるんだろ....?冷たくされたら悲しくない....?
ギルドの二階の部屋に入るとようやく下ろしてくれたが、壁を背に、顔の両側にバン!と大きな音が出る程強く壁に手をつかれ、身体がびくりと竦んだ。
こっ、こわーー!!なに怒ってんだよー!全国の女性の皆さん!壁ドンはただ怖いだけですよ!どこにもキュンの要素が見当たりません!顔がいいから怒ると迫力でるんだよー!
『マスター、間に入りましょうか?』
あまりにも怖がっているからか、いつもは傍観しているブルーが口を挟んだ。
い、いや...まだ大丈夫....。
手はあげないだろうし、怖いだけで割り込んでもらうのもちょっと情けない。
「おい、あいつになにかされたのか?」
「へ.....?」
あいつって誰?なにかってなに?もっとわかりやすく言ってもらえます?
「目が赤い」
「目?」
目が赤い?.....あ、もしかして泣いたのバレてる!?そんな酷いのか!?
「あー....、別にヴァルクになにかされたとかじゃないからな?俺が勝手に泣いただけだし....」
ってか恥ずかいからあんまり突っ込んでほしくないんだけど。それよりなんでそんな怒ってんの?
「じゃあなんで泣いたんだ」
突っ込まないでって言ってるでしょー!?なんだっていいじゃんか!
「べ、別になんだっていいだろ」
「言えないってことはやっぱりなんかされたんじゃないのか?」
「言えないんじゃなくて言わないの!」
キッパリと言い放ったのに、まだ訝しげに見てくる。疑り深いなぁ、もう!
「ほんとになにもされてないから。信じて」
ロベルトの目を見つめ、真摯に訴えると数秒なにも言わず、やがて目を閉じて深くため息をついた。
「あー、やっぱり1人で行かせるんじゃなかった」
「はぁ!?まだ疑ってんの!?」
「そうじゃない。お前が俺の知らないところで泣いたってのが気に入らないんだよ。今度から泣くときは俺の側で泣け」
いや、益々意味わからんわ!なんだその俺様発言は!そもそもそんなコントロールができるんだったら泣かないわっ!
「意味わかんないこと言ってないでいい加減離れろって」
「約束できるなら離れてやる」
「はぁ!?」
ほんとになに言ってんの!?
冗談でも言っているのかとも思ったが、顔は至って真剣だ。約束しないと離れない、というのも冗談ではないようで、目さえ逸らしてくれない。
これ拒否権あんの?
少し粘ってみたがやっぱり拒否権はないようで頷くしかなかった。
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