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四章:はじめの一歩

神様とデート

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すれ違う女の子たちがみんな振り返る。


帽子を被っていても神様のイケメンっぷりは隠しきれておらず、街中でかなり目立っていた。


さすがに周りのざわめきに神様も気付いて不安になったらしい。


「何やら見られておるの。もしかして人間じゃないと気付かれてしもうたのか?」


と耳打ちで聞かれた。


「いえいえ、かみ…郁人さんがカッコよくて目立ってるんですよ。」


「ふむ…そんなもんなのか。」


あまり理解していないような表情だったが、それ以上は何も聞かれなかった。


ちょうど一週間前に来ていた駅に着いて、外に出たところだ。



(そうか、まだ1週間なんだな。)



ランチはもちろん彰と行ったカフェではない。


行きそびれたショップの近くにある、白いフローリングが印象的なカフェに向かった。



窓際の二人席に通されて向かい合わせに座る。


席を案内してくれたスタッフも水を持ってきてくれたスタッフも、顔を赤らめながらも神様をチラチラ見ていた。


スタッフだけじゃない。


店内にいる人全員がこちらを盗み見している。


カフェの前を通り過ぎる人も何人か神様に気付いて二度見していた。


そうなるのもわかる…私も今は慣れてるから平常心でいられてるけど、偶然遭遇したら周りの人たちと同じ態度をとっていただろう。


「人間は“イケメン”に目がないんじゃな。」


神様は特に気にもとめず笑っている。


私がトマトパスタ、神様はシーフードパスタを頼んだ。


「ちょうど一週間前なんです。フラれたの。」



この近くのカフェで。と言うと、そんなところに来て辛くはないのか?と聞かれたけど


「郁人さんに出会ってなかったら、まだ近寄りもできなかったと思います。

でも郁人さんが現れていろいろ自分の甘かった部分にも気づけたし、もっと真剣に考えなきゃいけないなって。」


もう年だし。と付け加えたら「おぬしまだ24じゃろ!」と笑われた。


「でも店長はちょうど私の歳で結婚してたんですよ?

私は…自己満の恋愛に夢中で、結婚なんて意識すらしていませんでした。」


意識したところで見た目重視で失敗していただろう。


「郁人さんに質問責めされたおかげで、自分でちゃんと考えて答えを出すということを学びました。」


パスタが運ばれて、二人ゆっくりと食べ始める。


初めて見る食事する神様の姿はとてもスマートな所作で優雅な空気が漂っていた。

これはさすがに見惚れてしまう。


「モデルの話が出た時も神様に相談したいって思ったけど、相談したところできっと神様は“やるがよい“とも”やめておけ“とも言わなかっただろうなって。

”おぬしはどうしたいんじゃ?“って、絶対そう言われるってわかったから自問自答できたんです。」


神様はニコニコと聞いてくれる。


「いきなり”どんな人生か“決められなくてもよい。

そうやって自分の本心に気づけるようになっていけば、自ずと大きな望みにも気づけるようになるじゃろう。」


本当、神様に出会ってなかったらモデルの話ですら断っていたと思う。

こんな小さな望みすら叶えられずに、逃していただろう。


神様に出会ってまだ1週間も経ってないけど、少し成長できてる気がする。


「質問責めから逃げなかった褒美じゃ。」


と言って、神様がランチを奢ってくれた。

それからお目当てのショップを覗いたけど、女性スタッフがあまりにも神様にアピールするので早々に退散した。


私の職場もユニセックスを“売り”にしているから男性客もよく来られるけど…さすがにあんなにあからさまな態度は取らないな。


思わず苦笑いを浮かべてしまう。


周りのショップもフラッと覗いて回って、結局何も買わずに駅に戻った。


「食材を買っておかないといけないんです。家の近くのスーパーに寄って帰りましょう。」


もう周りの人に見られることにもすっかり慣れてしまった。


スーパーでも散々見られたが、気にせず食材を選び会計を済ませる。


「あ!いつの間に!!!」


袋詰めをしている時にやっと気づいた。


「郁人さん、いつの間にチューバ入れたんですか!?」


しかもプレミアの方!


「え?いるじゃろ?」


いるじゃろって…。


というか、やっぱりチューバ大好物じゃないですか!
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