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三章:二人のカウンセラー

平和な夜

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「ただいま…」


と、電気を点けても神様は現れなかった。



「???すぐ出てこないのかな?」


とりあえず着替えて晩ご飯を作った。


今日は焼きそばとお味噌汁。


…はい、料理はあまり得意じゃないです…。


手際よく作れるようになっただけ、進歩してると思う!


と、自分に言い聞かせてテーブルに運ぶ。


「いただきます」と手を合わせたところに「ニャァオ」と聞こえた。


振り返ると猫がキッチンの方から部屋に入って来て、シュルシュルシュルと人に変身した。


「これからメシじゃったか。」と言いながら隣に座る。


「おかえりなさい」


「うむ。ただいまじゃ。」



新婚か!と心の中でつっこんだけど、本心…ちょっと楽しい。


「すぐ出てこないから、今日は来ないのかと思いました。」



「風呂を覗くと疑われたからの。

着替えも覗くと思われかねんと思うて、ちょっと遅めに来たんじゃ。」


嫌味のような目線を送りながらニヤリと笑う。


「いや!疑ってません!本当に!断じて!」


慌てて否定したけど「どうかの…」と信じてもらえなかったので、諦めて食事を始めた。


「そういえば、神様って猫になってる間はどこにいるんですか?猫の中?」


「いや、猫の上あたりを漂っておる。変身する時に“入る”んじゃ。」


猫の身体を借りることによって「実体のない状態」から「実体を得る」ことができて、それから人に変身できるんだとか。


「人以外にも変身はできるが、人にならぬと言語が伝わらんからの。」


………ふーん………。



「絶対理解しておらんじゃろ。」とつっこまれたけど笑って誤魔化しておいた。


もう一つ気になってることがある。


「神様って猫じゃないですか?」


「そうじゃの。」


前もって「バカな質問していいですか?」と断りを入れてから


「猫じゃらしに飛びついたりするんですか?」

と聞いたら一瞬「キョトン」として


「それは人の姿のままで、ということか?」


「はい…。」


「…………………………はぁ?!」


と大きく目を見開いて呆れられた。



「人の姿で猫じゃらしに飛びつくはずなかろう!?

人の姿をしている時は“神が優位”になっておる状態じゃ。

神は猫じゃらしで遊ばんわ!」


やっぱり怒られた!でも気になってたんだもん!


ため息混じりで神様のお説教は続く…。


「やはり今の説明をわかっておらんかったの?

よいか?猫神というのは猫にしか入れんから“猫と一体になる神”ということで“猫神”じゃ。

猫の状態ならワシが入っておらんから、そりゃ好きなやつは戯れるじゃろ。

しかし人の時はワシが優位に動ける状態じゃ。ワシは猫じゃらしなぞ興味ないわ。」


呆れた口調で一息に言い放たれた…。



「いや、だってチューバが好きって言ってたから…。」



と言うと「むむ…」と唸って


「…いやそれは…歴代身体を借りた猫が好きだったからじゃ。」


と、テレビに顔を向けた。


んーーー?今唸ってから言ったの怪しくない!?

絶対、猫より神様の方がチューバ好きだよね!?


今度は私が嫌味な目線を投げる番だ。


神様はわざとらしくこっちを見ない。



「そんなことより…おぬし、宿題はどうじゃ?答えは出たか?」


空気を変えるように切り出した。



「宿題の答えは…今日は出てこなかったです。

深掘りして考えるって難しいですね…今までいかに考えてなかったか実感しました。」


「おぬしのいいところは真面目で素直なところじゃの」と優しく笑って



「…まあじっくり考えるがよい。

その答えがわかれば、次からは人選びが変わると思うぞ。」


「はい…」


神様に真面目とか素直なんて褒められると照れるけど嬉しい。

それからは他愛もない話をして1日が終わった。


フラれた直後とは思えないくらい平和な夜だ。
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