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第五章
彼の本気⑧
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そこでやっと七海が目を覚まして、虚ろな目で不思議そうに湊翔さんを見た。
七海が目を開けた瞬間、湊翔さんが一瞬目を見開き驚いている。眠っている姿も似ているけど、目を開けると確実に私ではなく湊翔さん似なのだ。
「七海ちゃんはじめまして」
「はじめまして」
「まだしんどいかな?」
「う~ん、さっきよりはしんどくない。それより、だっこうれしい」
熱で潤んだ目でニコッと笑った七海に、湊翔さんは悶絶している。きっと湊翔さんも半信半疑ながらも気づいているはずだ。
「近江さん、近江七海さん」
「はい」
湊翔さんから七海をもらおうと思ったのに、さっと立ち上がって抱っこしたまま診察室へ向かうので慌てて後を追いかける。
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
「昨夜から熱が高くて」
「水分は摂れてますか?」
「リンゴジュースを少し」
「しっかり水分を摂るように」
「はい」
会話をしながらも、湊翔さんの腕に抱かれた七海を診察してくれている。鼻に綿棒のようなものを入れて検査をした。
結果を待つ間に、目の前の先生がニコニコ微笑みながら爆弾発言をする。
「それにしても、イケメンパパそっくりね」
「「……」」
「えっ、ななみのパパなの?」
「ええっ?」
思わず黙った私と湊翔さんをよそに、体調が悪いはずの七海は大興奮だ。七海の反応に、先生が驚きの声を上げる。
「私、何かマズイこと言っちゃいましたね……」
先生は申し訳なさそうにしているけれど、まさか父子が初対面だとは考えもしていなかっただろう。
「だ、大丈夫です」
「検査の結果は陰性なので、風邪ですね。解熱剤はお持ちですか?」
「いえ」
「では、風邪の薬と念のため解熱剤を処方しますね。お大事にして下さい」
後半は早口でまくし立てるように説明された。微妙な空気のまま待合室へ戻る。
「ねえねえ、パパ」
「「へ⁉」」
『いやいや七海、受け入れるの早過ぎでしょ?』
あっさりと受け入れて嬉しそうにしている七海は、体調が悪くてさっきまでぐったりとしていたようには見えない。
七海が目を開けた瞬間、湊翔さんが一瞬目を見開き驚いている。眠っている姿も似ているけど、目を開けると確実に私ではなく湊翔さん似なのだ。
「七海ちゃんはじめまして」
「はじめまして」
「まだしんどいかな?」
「う~ん、さっきよりはしんどくない。それより、だっこうれしい」
熱で潤んだ目でニコッと笑った七海に、湊翔さんは悶絶している。きっと湊翔さんも半信半疑ながらも気づいているはずだ。
「近江さん、近江七海さん」
「はい」
湊翔さんから七海をもらおうと思ったのに、さっと立ち上がって抱っこしたまま診察室へ向かうので慌てて後を追いかける。
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
「昨夜から熱が高くて」
「水分は摂れてますか?」
「リンゴジュースを少し」
「しっかり水分を摂るように」
「はい」
会話をしながらも、湊翔さんの腕に抱かれた七海を診察してくれている。鼻に綿棒のようなものを入れて検査をした。
結果を待つ間に、目の前の先生がニコニコ微笑みながら爆弾発言をする。
「それにしても、イケメンパパそっくりね」
「「……」」
「えっ、ななみのパパなの?」
「ええっ?」
思わず黙った私と湊翔さんをよそに、体調が悪いはずの七海は大興奮だ。七海の反応に、先生が驚きの声を上げる。
「私、何かマズイこと言っちゃいましたね……」
先生は申し訳なさそうにしているけれど、まさか父子が初対面だとは考えもしていなかっただろう。
「だ、大丈夫です」
「検査の結果は陰性なので、風邪ですね。解熱剤はお持ちですか?」
「いえ」
「では、風邪の薬と念のため解熱剤を処方しますね。お大事にして下さい」
後半は早口でまくし立てるように説明された。微妙な空気のまま待合室へ戻る。
「ねえねえ、パパ」
「「へ⁉」」
『いやいや七海、受け入れるの早過ぎでしょ?』
あっさりと受け入れて嬉しそうにしている七海は、体調が悪くてさっきまでぐったりとしていたようには見えない。
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