もう絶対に離さない!潜水士は海よりも深い愛を誓う

せいとも

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第四章

歯車が動き出す⑧

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 アルコールの影響か、実家へ帰ってきた安心感か、素直にお礼の言葉が出てきた。

「七海、お兄ちゃんに抱っこしてもらって嬉しそうだったなぁ……」
「そうね。凪紗は結婚しないの?」
「ブフッ」

 母の言葉に思わず口から飲んでいたものを吹き出してしまった。

「大丈夫?」
「突然お母さんがおかしなことを言うから」
「何で? だってまだ若いんだし、おかしくないじゃない。まだ七海ちゃんの父親のことが忘れられないの?」
「……」

 相手は誰かと聞かれないだけマシかもしれないけれど、答えづらい質問に思わず沈黙してしまう。

 湊翔さんのことは嫌いになったわけではないし、七海を見ては思い出してしまうのも事実。だから、他の人と言われてもピンと来ないのだ。

「まあ、私がとやかく言うことではないけど同窓会へ行くんだし、もしかしたら出会いがあるかもしれないじゃない」
「えー、同窓会で?」
「みんな大人になってるし楽しみね」

 私よりも母のほうが楽しそうだ。

 同窓会での出会いなんて考えもしなかったけど、大人になった友人達との再会には胸が躍る。

◇◇◇

 同窓会の会場は、湊翔さんと夜景を見に行ったホテル。私の初めてを捧げた思い出の場所だ。

 高級ホテルの宴会場で同窓会を開催するなんて、そんなラグジュアリーな同級生はいただろうか?

 先日七海とお揃いで買ったワンピースを着て、いつもは適当な化粧もさすがに今日は入念にし髪型もふんわりアップにセットした。

「変じゃない?」
「ママかわいい!」
「ふふっ、凪紗のオシャレした姿を見るのも久しぶりね」
「なんか、私だけ気合いが入ってるみたいになったら恥ずかしい」
「きっとみんなおめかししてくるわよ」
「そうかなぁ」

 場所が居酒屋ではなく、ホテルというだけでみんな綺麗な格好をしてきそうだ。それなら大丈夫かな……

「七海いい子にしてね」
「うん!」
「ほらほら、早く行ってきなさい」

 半ば追い立てられるように実家を出た。タクシーに乗って会場のホテルへ向かう間、ドキドキと緊張が増してくる。

 定期的に同窓会の案内はくるけど、こんなに大規模な集まりは初めてではないだろうか。
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