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第十七章
未来へ④
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「幸せ」
思わず口から言葉がこぼれ落ちる。
「俺は、幸せそうな凛花を見るのが幸せだ」
サラッと呟かれた言葉が、嬉しくもあり照れくさい。蒼空さんの口から自然に出てくる言葉は、いつも甘く私を翻弄するのだ。頬が熱くなり赤くなっているのがわかる。
「どうした?」
私の恥ずかしがっている様子をわかっていて聞いてくるのだからイジワルだ……
「ケーキ食べてもいい?」
話を変えて誤魔化すも、クスクスと笑っている声が聞こえる。出社前とは思えない優雅なひとときだ。
朝食を堪能して、いざ決戦! ではないが、これから重大発表が行われるのだ。私の緊張とは裏腹に、蒼空さんは全く緊張した様子もなくいつも通りに見える。
「緊張しないの?」
「なにが?」
「みんなに今日知らせるんでしょう?」
「そうだな」
「寂しくないの?」
「一生の別れでもないし、俺は部下達を信用している。俺がいなくなってもしっかりやってくれるさ」
「でも……」
私は、蒼空さんのようにあっさりとは割り切れない。
食事を終えて、荷物も片づけて用意ができた。
「さあ、そろそろ行こうか」
「うん」
「手」
二人分の服の入った鞄と仕事用の鞄を片手に持った蒼空さんが、私に手を差し出してくる。私の出した手を取って、ギュッと繋いで部屋を後にした。
チェックアウトをしてオフィスに向かう。
オフィスビルが近づくに連れて、知っている人がいるのではないかと変なドキドキが襲う。私達がつき合っているのは周知の事実だし、見られても困ることはないけれど、蒼空さんの持つ荷物がマンションからの出勤ではないと主張しているように思うのだ。
「そろそろ手を」
「なんでだ?」
「恥ずかしいから」
「誰も見てないから気にするな」
蒼空さんには、突き刺さるような視線は見えていないのだろうか。先程から周囲の視線を集めているのに……
「よう、おはよう。相変わらずお熱いことで」
後ろから声が掛かって振り向くと、轟課長がクスクスと笑っているではないか。
「羨ましいからって俺達に絡むな。早く告白したらいいだろう?」
「え⁉」
「蒼空!!」
思わず口から言葉がこぼれ落ちる。
「俺は、幸せそうな凛花を見るのが幸せだ」
サラッと呟かれた言葉が、嬉しくもあり照れくさい。蒼空さんの口から自然に出てくる言葉は、いつも甘く私を翻弄するのだ。頬が熱くなり赤くなっているのがわかる。
「どうした?」
私の恥ずかしがっている様子をわかっていて聞いてくるのだからイジワルだ……
「ケーキ食べてもいい?」
話を変えて誤魔化すも、クスクスと笑っている声が聞こえる。出社前とは思えない優雅なひとときだ。
朝食を堪能して、いざ決戦! ではないが、これから重大発表が行われるのだ。私の緊張とは裏腹に、蒼空さんは全く緊張した様子もなくいつも通りに見える。
「緊張しないの?」
「なにが?」
「みんなに今日知らせるんでしょう?」
「そうだな」
「寂しくないの?」
「一生の別れでもないし、俺は部下達を信用している。俺がいなくなってもしっかりやってくれるさ」
「でも……」
私は、蒼空さんのようにあっさりとは割り切れない。
食事を終えて、荷物も片づけて用意ができた。
「さあ、そろそろ行こうか」
「うん」
「手」
二人分の服の入った鞄と仕事用の鞄を片手に持った蒼空さんが、私に手を差し出してくる。私の出した手を取って、ギュッと繋いで部屋を後にした。
チェックアウトをしてオフィスに向かう。
オフィスビルが近づくに連れて、知っている人がいるのではないかと変なドキドキが襲う。私達がつき合っているのは周知の事実だし、見られても困ることはないけれど、蒼空さんの持つ荷物がマンションからの出勤ではないと主張しているように思うのだ。
「そろそろ手を」
「なんでだ?」
「恥ずかしいから」
「誰も見てないから気にするな」
蒼空さんには、突き刺さるような視線は見えていないのだろうか。先程から周囲の視線を集めているのに……
「よう、おはよう。相変わらずお熱いことで」
後ろから声が掛かって振り向くと、轟課長がクスクスと笑っているではないか。
「羨ましいからって俺達に絡むな。早く告白したらいいだろう?」
「え⁉」
「蒼空!!」
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