157 / 162
第八章 ラグナロク
第157話 神の願い
しおりを挟む
「それなら分かるぜ。シルキーだろ?」
何しろムサイおっさんばかりのお庭番集の中で、紅一点ってんだから疑いようもねぇ。
いや、この姿も変身してるだけで真の姿はムサイおっさんってんなら別だけどよ。
そうだとしたら俺の唯一安らいでいた青春の日々に致命的なトラウマが出来ちまうからマジで勘弁してほしい。
まぁ理由はそれだけじゃない。
最初から二人の話は、ずっと違和感が有ったんだ。
シルキーは棟梁の事を父と呼んでいた。
女神騒動の日、メアリの屋敷で過去の事を話した時も、親子二人だけ王子に付いて王国から出奔したとも言っていたしな。
そう言うロールプレイってんなら別だけど、その姿勢を徹底して貫いている。
長い逃亡生活で演技を見抜く洞察眼は嫌と言うほど磨いてきたつもりだ。
俺の眼には今でも二人の間に親子の絆を感じているからよ、シルキーの中身に宿る魂が何かは知らねぇが、親子ってのがただの言葉でないのは間違いないと思うぜ。
だからお庭番衆の間違い探しはシルキーで正しい筈だ。
「まぁ正解じゃ」
そう言って棟梁は目を瞑って顎髭を擦っている。
まぁこんな風に悩む必要もないほど簡単な質問だ。
なんだって棟梁はこんな簡単な話を勿体振りやがったんだ?
あとはシルキーの魂の正体だが、これもそのまま予想通りだろう。
「んでシルキーの中身は……棟梁の生前の娘だった子の魂だろ?」
「ブブゥーーー違いますぅ」
俺がシルキーの正体を言い当ててやろうとしたら、シルキーが引っ掛かったと言わんばかりに笑顔で俺の予想を否定してきた。
あれ? 違うのか?
んじゃ、やっぱりただの他人?
俺の観察眼もなまっちまったと言うのか?
「えぇ? ここまで前振りしておいて親子じゃねぇってのか? じゃあシルキーは誰なんだよ」
「娘じゃよ」
棟梁はいい笑顔でそう言った。
シルキー同様引っ掛かったと言わんばかりのツラしてやがる。
「娘じゃねぇけど娘ってどう言う事だよ。 義理の娘とか言葉遊びするつもりか?」
「いんや、正真正銘の儂の娘だ」
「『いんや』とか言われても訳分かんねぇって」
「本当にお前は察しが悪いのう。『女媧』封印後にアナスタシア……ゴホン。同じ魔族討伐隊仲間の一人と結婚したんじゃ。その後授かった子供がシルキーと言う訳じゃ。だからどっかの誰かの魂って訳じゃねぇ。最初からこいつのもんだ」
お、お、お、お?
ちょっと予想外過ぎて言葉が出ねぇ?
人工物の身体なのに子供出来るのか? ……いや、そう言えば棟梁達の元となった俺の身体でも子供が出来るんだったな。
デミが付いているけどメアリ達の先祖がはっちゃけて創ったんだし出来てもおかしくねぇ……のか?
「私のお母さんは、当時聖女と呼ばれていたくらい凄腕の治癒師だったんです。だからでしょうか? 他のお庭番衆の皆さんには無いお父さんの能力が私にも遺伝しました」
「え? 皆は使えないのか? さっき棟梁と一緒に石像化してただろ?」
「どうやら神は自分達がやらかした事を反省したようでな、魔族封印後は『創造』の権能をヴァーミリオ様が認識しておった『感知眼』の範囲まで制限を掛けたのじゃ。だから王国建国後に造られたこやつ等は、同じお主の残滓と言えども能力に制限が掛かっとる。使用可能な能力は不老と石像化、あとは多少の怪力に無尽蔵な体力だけじゃな。ちなみに儂らの本体であるお主が近くに居れば分かるのも能力の一つではあるの」
「お、おう。いや最後のは置いといて、十分にチートな気もするが……」
まぁ言われてみりゃそうか。
平和になったんなら神の権能を持った人間を野放しに出来ないしな。
半分以上は自分達が必死になって造ったカドモンを、いくら神の権能を与えたからと言って人間一人が造っちまったってんだから面目丸潰れって理由も有りそうだが。
しかし、俺が近くに居るのが分かるってのはプライバシー侵害されているようでなんか嫌なんだけども、神達も俺のプライバシー覗き見て楽しんでたんだから今更か。
「ちなみに儂と妻の間にはもう二人子供が居ったが儂の力が遺伝したのはシルキーだけじゃった……。妻もシルキーの兄妹達も皆儂らを置いて行っちまったよ」
「棟梁……」
遠い過去に目を向けている寂しそうな棟梁の顔。
その顔が語る苦悩はこれから俺が体験する未来なのだろう。
大切な皆は俺を置いて去っていく……これは避けられねぇ現実だ。
これからどれだけの人を見送らなければならねぇんだろうか?
「俺にも二人の子供が居たぜ。そいつらの孫の孫の孫の……まぁ子孫は結構いるな」
「俺ん所は大商人になって今でも本通りに大きな店を構えてる」
「俺も……」「うちも……」「僕も……」
俺がやがて訪れるであろう宿命に胸の奥がずしりと重くなっていると、他の皆が嬉しそうに語り出した。
「正太の気持ちは分かるぜ。俺達も家族や知り合いが寿命で死んじまうのはとても辛かった。嫁さんの死と共に自殺しようと思った奴も何人も居る。だがよ、死なねぇなら残された子や孫達を護る為に生きていけば良い。そう思ったのさ」
一番若い庭師の先輩が暗く沈んでいる俺の肩を叩きながらそう言ってくれた。
そう言う考え方もあるのか……でもそうだな。
その言葉で少し心が軽くなった気がする。
「知ってるか正太。棟梁のあの姿。あれ変身能力持ってるからってアナスタシア様と一緒に年取っていって最期を看取った時の姿なんだぜ。ずるいよな。しかも任務で姿を変える時以外はあの姿のままだしさ。若くして死んだから本来の姿は俺なんかよりもずっと若いんだぜ」
棟梁に聞こえないように一番若い庭師の先輩が耳元でそう教えてくれた。
「マジで?」
「マジマジ」
俺の驚きに頷く先輩。
魔族封印前に死んだんだから確かに若くてもおかしくはない……けど、ドワーフの如き豪快ひげ面筋肉ダルマを見慣れてる俺からすると想像も出来ねぇや。
まぁシャキッとした紳士然のブラウニーさんも、変身を目の当たりにした今でさえ全くイメージが結び付かねぇんだけどな。
あれ? 実はちゃんとお庭番してんじゃねぇか?
と、話はズレたが気になる事は残ってるな。
「ずるいと言や、なんで棟梁は俺と同じ材料から作られたのに、俺は変身や転移なんて便利な能力が使えないんだ? 使えていたら逃亡生活も楽になってたし、ここに来る為に王子達の前で恥かかなくても済んだってのによ。それになんか色々と訳知りの様だが俺の身体がカドモンだってのを知ったのも最近だぜ?」
何故か皆は神々の英知って奴で自分達が俺の残滓だって事だけでなくこの世界を創った神々の存在さえ知ってやがる。
この世界に来る際にガイアと直接会ったけど、結構騙されまくってた事がロキの話から判明したし、本当に俺はいいおもちゃだぜ。
「これも簡単な事ですよ。仮に『権能』を持ったのがメアリお嬢様だったらどうすると思います?」
「あっ、なるほど」
この言葉でなんか色々分断されていた疑問が繋がった気がする。
メアリの先祖のヴァーミリオってのも魔法オタクだったって訳か。
友達の復活と言う名目は有っただろうけど、メアリやヴァレウス王子ならそりゃ知識欲にかまけて色々と性能盛るわな。
恐らく現代知識が有ったなら目からビームとか腕からミサイルくらいなら余裕で付けただろう。
いやそれくらいは既に出来るかのもしれねぇけどな。
「とは言え、所詮残り滓じゃ。正太ほどの戦闘力も無ぇし、ましてやメギド化も覚醒もしねぇ。それに如何に『権能』と言っても本体以上の力は出だせねぇだろ。恐らくおぬしも使えるんじゃねぇか?」
「本当か? なら教えてくれよ! っと言いたいんだが。俺の知ってる神ならそんな便利な物を俺に与えるかな。どっちかと言えば今の状況の様に『何で俺には使えないんだーー!!』と悔しがらせる嫌がらせをすると思うんだよな」
やってみる価値は有るけど、今言った様にたぶん無駄に終わりそうな気がする。
もし本当に使えるようになるとするなら、今よりヤバい状況が差し迫った時だろうさ。
今までもゲームや小説の様に必要に応じて情報開示や能力開花がされてるからよ。
それどころか下手に覚えるとクァチルウタウスの様に面倒事の方からやって来るかも知れん。
触らぬ神に祟り無しってやつだな。
「じゃあ最後の謎を教えてくれ。さっき棟梁は言ったよな。『あの頃はデミカドモンと言う自覚は無かった』って。じゃあいつから自覚したんだ?」
生まれた時から知らなかったと言う事は何か大きなきっかけが有った筈だ。
神から直接教えられたのか、それとも覚醒の様な現象が起きたのか。
「儂が身体に宿る神々の英知に目覚めたのは、生まれたばかりのシルキーを抱き上げた時じゃ……共鳴現象とでも言おうか儂とシルキーの間で何かが壊れる音がしたんじゃよ。その瞬間儂らの身体の事、儂らが生まれた意味。そしてやがてこの世界に現れるお主の事を知ったのじゃ」
「俺の事を……。そんな昔から?」
「赤ちゃんであった私もその事は覚えています。私達リーブの残滓から生まれたデミカドモンは、これから永劫の時を歩く事になる貴方が寂しくないようにずっと側に付き従う……その願いを持ってヴァーミリオ様の元へ齎されたのだと」
な……。
俺は言葉を失った。
棟梁達がこの世に生まれたのは魔族封印や建国の為のチートじゃなく、俺の為だっただと?
それを神達が願っていたってのか?
俺が呆然とした顔でいると、棟梁が話を続けた。
「シルキーが封印の鍵であったのだろうさ。お主の身体に連なるお庭番のこいつらにも同じ知識が浮かび上がった。それ以降儂らは大旦那様や歴代の旦那様達に仕えはしたが、ずっと真の主であるお主が現れるのを待っておったと言う訳じゃよ」
その瞬間、棟梁やシルキーを含む皆が俺に対して胸に手を当て片膝を付き首を垂れる。
まるでそれは騎士が君主に対して忠誠を誓う場面の様だった。
何しろムサイおっさんばかりのお庭番集の中で、紅一点ってんだから疑いようもねぇ。
いや、この姿も変身してるだけで真の姿はムサイおっさんってんなら別だけどよ。
そうだとしたら俺の唯一安らいでいた青春の日々に致命的なトラウマが出来ちまうからマジで勘弁してほしい。
まぁ理由はそれだけじゃない。
最初から二人の話は、ずっと違和感が有ったんだ。
シルキーは棟梁の事を父と呼んでいた。
女神騒動の日、メアリの屋敷で過去の事を話した時も、親子二人だけ王子に付いて王国から出奔したとも言っていたしな。
そう言うロールプレイってんなら別だけど、その姿勢を徹底して貫いている。
長い逃亡生活で演技を見抜く洞察眼は嫌と言うほど磨いてきたつもりだ。
俺の眼には今でも二人の間に親子の絆を感じているからよ、シルキーの中身に宿る魂が何かは知らねぇが、親子ってのがただの言葉でないのは間違いないと思うぜ。
だからお庭番衆の間違い探しはシルキーで正しい筈だ。
「まぁ正解じゃ」
そう言って棟梁は目を瞑って顎髭を擦っている。
まぁこんな風に悩む必要もないほど簡単な質問だ。
なんだって棟梁はこんな簡単な話を勿体振りやがったんだ?
あとはシルキーの魂の正体だが、これもそのまま予想通りだろう。
「んでシルキーの中身は……棟梁の生前の娘だった子の魂だろ?」
「ブブゥーーー違いますぅ」
俺がシルキーの正体を言い当ててやろうとしたら、シルキーが引っ掛かったと言わんばかりに笑顔で俺の予想を否定してきた。
あれ? 違うのか?
んじゃ、やっぱりただの他人?
俺の観察眼もなまっちまったと言うのか?
「えぇ? ここまで前振りしておいて親子じゃねぇってのか? じゃあシルキーは誰なんだよ」
「娘じゃよ」
棟梁はいい笑顔でそう言った。
シルキー同様引っ掛かったと言わんばかりのツラしてやがる。
「娘じゃねぇけど娘ってどう言う事だよ。 義理の娘とか言葉遊びするつもりか?」
「いんや、正真正銘の儂の娘だ」
「『いんや』とか言われても訳分かんねぇって」
「本当にお前は察しが悪いのう。『女媧』封印後にアナスタシア……ゴホン。同じ魔族討伐隊仲間の一人と結婚したんじゃ。その後授かった子供がシルキーと言う訳じゃ。だからどっかの誰かの魂って訳じゃねぇ。最初からこいつのもんだ」
お、お、お、お?
ちょっと予想外過ぎて言葉が出ねぇ?
人工物の身体なのに子供出来るのか? ……いや、そう言えば棟梁達の元となった俺の身体でも子供が出来るんだったな。
デミが付いているけどメアリ達の先祖がはっちゃけて創ったんだし出来てもおかしくねぇ……のか?
「私のお母さんは、当時聖女と呼ばれていたくらい凄腕の治癒師だったんです。だからでしょうか? 他のお庭番衆の皆さんには無いお父さんの能力が私にも遺伝しました」
「え? 皆は使えないのか? さっき棟梁と一緒に石像化してただろ?」
「どうやら神は自分達がやらかした事を反省したようでな、魔族封印後は『創造』の権能をヴァーミリオ様が認識しておった『感知眼』の範囲まで制限を掛けたのじゃ。だから王国建国後に造られたこやつ等は、同じお主の残滓と言えども能力に制限が掛かっとる。使用可能な能力は不老と石像化、あとは多少の怪力に無尽蔵な体力だけじゃな。ちなみに儂らの本体であるお主が近くに居れば分かるのも能力の一つではあるの」
「お、おう。いや最後のは置いといて、十分にチートな気もするが……」
まぁ言われてみりゃそうか。
平和になったんなら神の権能を持った人間を野放しに出来ないしな。
半分以上は自分達が必死になって造ったカドモンを、いくら神の権能を与えたからと言って人間一人が造っちまったってんだから面目丸潰れって理由も有りそうだが。
しかし、俺が近くに居るのが分かるってのはプライバシー侵害されているようでなんか嫌なんだけども、神達も俺のプライバシー覗き見て楽しんでたんだから今更か。
「ちなみに儂と妻の間にはもう二人子供が居ったが儂の力が遺伝したのはシルキーだけじゃった……。妻もシルキーの兄妹達も皆儂らを置いて行っちまったよ」
「棟梁……」
遠い過去に目を向けている寂しそうな棟梁の顔。
その顔が語る苦悩はこれから俺が体験する未来なのだろう。
大切な皆は俺を置いて去っていく……これは避けられねぇ現実だ。
これからどれだけの人を見送らなければならねぇんだろうか?
「俺にも二人の子供が居たぜ。そいつらの孫の孫の孫の……まぁ子孫は結構いるな」
「俺ん所は大商人になって今でも本通りに大きな店を構えてる」
「俺も……」「うちも……」「僕も……」
俺がやがて訪れるであろう宿命に胸の奥がずしりと重くなっていると、他の皆が嬉しそうに語り出した。
「正太の気持ちは分かるぜ。俺達も家族や知り合いが寿命で死んじまうのはとても辛かった。嫁さんの死と共に自殺しようと思った奴も何人も居る。だがよ、死なねぇなら残された子や孫達を護る為に生きていけば良い。そう思ったのさ」
一番若い庭師の先輩が暗く沈んでいる俺の肩を叩きながらそう言ってくれた。
そう言う考え方もあるのか……でもそうだな。
その言葉で少し心が軽くなった気がする。
「知ってるか正太。棟梁のあの姿。あれ変身能力持ってるからってアナスタシア様と一緒に年取っていって最期を看取った時の姿なんだぜ。ずるいよな。しかも任務で姿を変える時以外はあの姿のままだしさ。若くして死んだから本来の姿は俺なんかよりもずっと若いんだぜ」
棟梁に聞こえないように一番若い庭師の先輩が耳元でそう教えてくれた。
「マジで?」
「マジマジ」
俺の驚きに頷く先輩。
魔族封印前に死んだんだから確かに若くてもおかしくはない……けど、ドワーフの如き豪快ひげ面筋肉ダルマを見慣れてる俺からすると想像も出来ねぇや。
まぁシャキッとした紳士然のブラウニーさんも、変身を目の当たりにした今でさえ全くイメージが結び付かねぇんだけどな。
あれ? 実はちゃんとお庭番してんじゃねぇか?
と、話はズレたが気になる事は残ってるな。
「ずるいと言や、なんで棟梁は俺と同じ材料から作られたのに、俺は変身や転移なんて便利な能力が使えないんだ? 使えていたら逃亡生活も楽になってたし、ここに来る為に王子達の前で恥かかなくても済んだってのによ。それになんか色々と訳知りの様だが俺の身体がカドモンだってのを知ったのも最近だぜ?」
何故か皆は神々の英知って奴で自分達が俺の残滓だって事だけでなくこの世界を創った神々の存在さえ知ってやがる。
この世界に来る際にガイアと直接会ったけど、結構騙されまくってた事がロキの話から判明したし、本当に俺はいいおもちゃだぜ。
「これも簡単な事ですよ。仮に『権能』を持ったのがメアリお嬢様だったらどうすると思います?」
「あっ、なるほど」
この言葉でなんか色々分断されていた疑問が繋がった気がする。
メアリの先祖のヴァーミリオってのも魔法オタクだったって訳か。
友達の復活と言う名目は有っただろうけど、メアリやヴァレウス王子ならそりゃ知識欲にかまけて色々と性能盛るわな。
恐らく現代知識が有ったなら目からビームとか腕からミサイルくらいなら余裕で付けただろう。
いやそれくらいは既に出来るかのもしれねぇけどな。
「とは言え、所詮残り滓じゃ。正太ほどの戦闘力も無ぇし、ましてやメギド化も覚醒もしねぇ。それに如何に『権能』と言っても本体以上の力は出だせねぇだろ。恐らくおぬしも使えるんじゃねぇか?」
「本当か? なら教えてくれよ! っと言いたいんだが。俺の知ってる神ならそんな便利な物を俺に与えるかな。どっちかと言えば今の状況の様に『何で俺には使えないんだーー!!』と悔しがらせる嫌がらせをすると思うんだよな」
やってみる価値は有るけど、今言った様にたぶん無駄に終わりそうな気がする。
もし本当に使えるようになるとするなら、今よりヤバい状況が差し迫った時だろうさ。
今までもゲームや小説の様に必要に応じて情報開示や能力開花がされてるからよ。
それどころか下手に覚えるとクァチルウタウスの様に面倒事の方からやって来るかも知れん。
触らぬ神に祟り無しってやつだな。
「じゃあ最後の謎を教えてくれ。さっき棟梁は言ったよな。『あの頃はデミカドモンと言う自覚は無かった』って。じゃあいつから自覚したんだ?」
生まれた時から知らなかったと言う事は何か大きなきっかけが有った筈だ。
神から直接教えられたのか、それとも覚醒の様な現象が起きたのか。
「儂が身体に宿る神々の英知に目覚めたのは、生まれたばかりのシルキーを抱き上げた時じゃ……共鳴現象とでも言おうか儂とシルキーの間で何かが壊れる音がしたんじゃよ。その瞬間儂らの身体の事、儂らが生まれた意味。そしてやがてこの世界に現れるお主の事を知ったのじゃ」
「俺の事を……。そんな昔から?」
「赤ちゃんであった私もその事は覚えています。私達リーブの残滓から生まれたデミカドモンは、これから永劫の時を歩く事になる貴方が寂しくないようにずっと側に付き従う……その願いを持ってヴァーミリオ様の元へ齎されたのだと」
な……。
俺は言葉を失った。
棟梁達がこの世に生まれたのは魔族封印や建国の為のチートじゃなく、俺の為だっただと?
それを神達が願っていたってのか?
俺が呆然とした顔でいると、棟梁が話を続けた。
「シルキーが封印の鍵であったのだろうさ。お主の身体に連なるお庭番のこいつらにも同じ知識が浮かび上がった。それ以降儂らは大旦那様や歴代の旦那様達に仕えはしたが、ずっと真の主であるお主が現れるのを待っておったと言う訳じゃよ」
その瞬間、棟梁やシルキーを含む皆が俺に対して胸に手を当て片膝を付き首を垂れる。
まるでそれは騎士が君主に対して忠誠を誓う場面の様だった。
0
お気に入りに追加
734
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~
雪華慧太
ファンタジー
理不尽なイジメが原因で引きこもっていた俺は、よりにもよって自分の誕生日にあっけなく人生を終えた。魂になった俺は、そこで助けた少女の力で不思議な瞳と前世の記憶を持って異世界に転生する。聖女で超絶美人の母親とエルフの魔法教師! アニメ顔負けの世界の中で今度こそ気楽な学園ライフを送れるかと思いきや、傲慢貴族の息子と戦うことになって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる