69 / 162
第四章 予兆
第69話 完全アウト
しおりを挟む
「あの姿……、あの歩き方……」
俺は呆然とその男の動きの一挙手一投足の節々に記憶の欠片を当て嵌める。
それは、まるでジグソーパズルのピースの如くピタリと重なり合い、確かな姿をまざまざと俺の想い描くその人のカタチを現していった。
男はやがて立ち止まったかと思うと、おもむろに手に持った巨大な棒を両手で握り素早く振り上げる。
そして、振り上げるよりも更に早い速度で振り下ろした。
相変わらず見えている景色の音は一切聞えない。
その為、男が振り下ろす音は聞こえていない筈だが、その動作だけで空気を切る音が聞えたかのような錯覚に陥った。
いや、その音さえ俺の記憶が完全再現して寸分の狂い無く俺の頭に響いている。
男はその動作を幾度となく繰り返した。
剣の鍛錬の為の素振りをしているのだろう。
それは幼い頃の俺が見慣れていた風景、俺はその横で一緒に剣を振っていたんだ。
「……う、嘘だ。ま、まさか……!」
有る訳が無いと言う思いを嘲笑うかのように、目の前に映し出されている懐かしい日常。
心が否定しようとしても、それを否定する声が心の中で渦巻いていた。
幼い頃の俺が憧れ、そして目指した。
そうだ、俺はあの人を目指して日々鍛錬をしていた。
記憶の中の俺は『転生者』だなんて記憶は無く、ただこの世界の住人としてあの人の隣で一生懸命剣を振っていたんだ。
『いつかあの人に追いつき、そして追い越したい』それだけを願って……。
無口で滅多に言葉を発しない人だったけど、俺には分かっていた。
彼がどれだけ俺の事を大切に思ってくれているのか、その想いと優しさを……。
「父さーーーーん!!」
溢れる思いに耐え切れなくなった俺は、大声でその人……カイルス父さんに向かって叫んだ。
聞こえる訳は無いし、現実の事かも分からない。
けど、俺は力の限りに叫んだ。
すると驚いた事に父さんはそれに応える様に、ゆっくりとこちらを振り返り、そして見上げて……。
その瞬間、目の前が暗転した。
いや、暗転したんじゃない、元の祭壇に視界が戻ったんだ。
既に夜の帳は下りて、周囲はすっかり暗くなっている。
眩しい世界から戻った為に暗闇に目が慣れていなかっただけだ。
空を見上げると満天の星明りに徐々に目が慣れてきた。
俺は今見た光景を心の中で何度も反芻する。
あの時、死んだ筈の父さんが何故……。
もしかして、俺みたいに用事で村から出掛けていたのか?
違うっ!!
神に作られた記憶の中の父さんが現実に居る訳がねぇ!
幻覚に決まっている!
だが、神がアレを俺に見せた意図は何だってんだ?
それに……それに、もう少しで父さんの顔をちゃんと見る事が出来たってのに。
「クソッ! 神め! なんてタイミングで戻しやがるんだ! 今のは何だ! 現実の事なのか? 答えろ!! 馬鹿野郎の糞ったれ!」
「ひゃっ! び、びっくりしたのだ!」
今し方起こった事に混乱冷めやらぬまま神への文句を声高に叫ぶと、すぐ近くで誰かが俺の声に驚き悲鳴を上げた。
この語尾はコウメだな。
……え? 何で居るんだ?
「先生、一体どうしたのだ? 急に叫んだりしてびっくりしたのだ」
「どうしたって……。いつの間に来たんだよ! ぼーっと見てねぇで声掛けてくれって……なっ! なんでお前らまで……!」
俺は慌てて声の方に顔を向けると、そこにはコウメだけじゃねぇ、他の皆まで揃って怪訝な顔をして立ち竦んでいた。
呼んで来るように頼んだ爺さんの他に、治癒師のねぇちゃんと案内人まで居やがる。
「何度も声を掛けたんだけど、聞こえてないみたいだったのだ」
なっ? なんだって? そんなの全く聞こえなかったぞ?
も、もしかして神の奴、人の声だけを俺に聞こえない様にミュートしてたとかじゃねぇだろうな?
マジで糞ったれめっ!
だとすると、これは不味いな。
今の神への悪口聞かれちまったんじゃねぇか……。
神の敵対者とか魔族信仰者とか思われたりしねぇだろうな?
……ん? 治癒師のねぇちゃんは顔を赤らめている?
あっ、俺と眼が合った途端、恥ずかしそうに顔を背けやがった。
なんでだ?
「それより先生。なんでパンツ一丁で独り言を言ってたのだ?」
「へ?」
パンツ一丁?
…………。
「あーーーーそうだったっ!」
俺パンイチだったじゃねぇか!
ねぇちゃんが俺と眼が合って顔を背けたのはそう言う事か!
「そ、それは……。って言うか、コウメッ! なんで皆連れて来たんだ! 爺さんだけって言ったじゃねえぇか」
「ち、違うのだ! 僕は言われた通り爺ちゃんに『アレの件』って伝えたんだけど、爺ちゃん大きな声で驚いたから皆に気付かれて、それで付いて来ちゃったのだ……」
「おい! 爺さん! お前が驚いてどうするんだよ!」
「す、すまぬ。歳を取るとどうしても常識が邪魔をしてのう」
『邪魔をしてのう』じゃねぇっつうの!
人生経験豊富だろうに簡単に驚きやがって。
国王から魔族の件は聞いていただろうってのによ。
「パンツ一丁で、虚空に向かって叫ぶなんて……、やっぱりこの人変質者だ……」
「ちょっと待て! 誤解だって! 今のは神……いや魔族の置き土産の所為で幻覚見せられてただけで、それにパンイチなのも奴の攻撃によるものなんだって!」
「ええっ! 魔族が復活したのですか? はっ! 本当だ! 封印の要石どころか魔法陣も消えているっ! と言う事は結界は……、あぁ! 侵入の護符を外しても何ともない……!」
案内人は俺の言葉に慌てた様子で、何やら首に掛けているお守りを外している。
なるほど、俺や勇者であるコウメ以外がどうやって結界内に入っていたのか不思議だったが、そんなアイテムが有ったのか。
爺さんに治癒師のねぇちゃんもお守りを掛けているって事は、結界が破れたり魔族を倒したって事まではバレていねぇんだな。
良かった、良かったって、あれ?
「先生? 魔族の攻撃の所為ってズボン破れたの僕の所為じゃなかったのか?」
「あぁーーーーしまった!! 口が滑った!!」
「やれやれ、お主も相当じゃわい。結局自分で喋りおったではないか」
爺さんが呆れたと言う顔で呟いた。
言葉が出ねぇ……、国王の時も全く同じ失敗をしちまったし……。
心を許す相手が居るってのはここまで嘘が下手になっちまうものなのか?
これから身バレせずに暮らしていけるのか心配になって来たぜ。
取りあえず、この案内人には口封じ……いや、黙って貰う様にお願いしねぇとな。
「そ、それで、ま、魔族は今どこに?」
どうやって言い包めようかと思っていると、案内人が狼狽えながらも、急に真面目な顔して魔族について聞いて来た。
そう言や、こいつは一応この国の公務員みたいな物だったんだよな。
バースの放牧場は表向きの姿で、実の所この封印の監視所ってのが本当の姿って奴だ。
そして、その従業員は皆特殊な訓練をした魔族監視員、って言うか諜報員って話だった。
よく考えたら、冒険者でもねぇのに昼間かなりの距離を突貫の強行軍にも関わらず、息一つ上がらずに案内してのけていた。
爺さんや治癒師のねぇちゃんなんてお互いにブーストや治癒を掛け合って何とか付いて来ていたのによ。
先日死に掛けてたのを治してやったとは言え、応急処置程度だったんだから本来多少は影響は残っててもおかしくねぇんだがな。
待ったくタフな野郎だぜ、そこはさすがエージェントって事か。
仕方無ぇ、下手に嘘付いて放牧場内で変に噂だけが広まるより、全部話して仲間に引き入れた方が良いかもな。
コウメにもバレるのは不安だが何とかなるだろ。
「安心しろ。奴は倒した。そこの森の跡が証拠だぜ」
「え! あっ! 巨大過ぎて気付かなかった……。 な、なんですか! あの大きなトンネルみたいな跡は! ま、魔法ですか? けど、と言う事は本当に?!」
「あぁ、そうだ。奴は死んだよ」
「え? でも、先生……、魔族は僕が逃がしちゃったんじゃないの?」
魔族を倒したと言う言葉に喜んでいる案内人を見て、コウメが申し訳なさそうにそう言って来た。
「ん? あぁ、あれか。あれは逃げたと言えばそうだが、次の復活する魔族の元に飛んで行っただけだ。奴自身は死んでいる。すまねぇな黙っていてよ。それに倒したのはお前じゃねぇ、俺だったんだ。と言っても、お前が雷光疾風斬を見せてくれていたお陰だよ。あれが無かったら本当にやばかったぜ。ありがとうな」
コウメはその言葉を聞いて少しうれしそうな顔をした。
俺に嘘付かれたってのに、なんで嬉しがってんだ?
あぁ、取り逃がしたのが自分の責任じゃなかったってのが嬉しいのか?
「やっぱり先生が倒したんだね! 実は紋章もそう言っていたのだ。僕にあの威力は無理って言ってたんで、なら誰が? って聞いたら先生がって」
「へ? なんだ既にバレてたのか? ならなんで黙ってたんだよ」
「だって、先生が誤魔化そうとしてるって事は、秘密にしたいって事だと思ったのだ」
なっ! こいつはそこまで考えて……。
馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど実はしっかり考えていたのか……。
まだ幼いのに気を使わせちまったな。
こんな事ならもっと早く言っておけば良かったぜ。
「お前は本当にいい子だなぁ。すまん黙っていて」
「ソォータ様? その格好で女の子に近付くのは絵面的にちょっとマズいです……」
俺がコウメの頭を撫でてやる為に近付こうとしたら治癒師のねぇちゃんが低い声でそう言って来た。
そうだった……、下半身だけ下着姿で幼女に近付く中年男性ってビジュアル的に完全アウトじゃねぇか!
「す、すまん! 俺の荷物はどこだ? その中に替えのズボンと靴入れてんだ」
「あっ、忘れちゃったのだ」
「コ、コウメーーーー!!」
「ごめんなのだーーーー!!」
ここでドジっ娘属性発動かよ!!
仕方無ぇ、一旦野営地まで戻るか。
「ちょ、ちょっと待ってくだされ。ソォータ殿、先程魔族の所為でと言っておったが、何が有ったと言うのじゃ?」
帰ろうとした俺を爺さんは引き止めて事情を聞いてきた。
まぁ、本来再封印の事前調査の筈だったってぇのにいきなり倒したなんて言われても訳が分からねぇよな。
しかも、慌てて見に来たら、俺がパンイチで虚空に向かって叫んでるんだし、そりゃあ気になっても仕方無ぇわ。
「あぁ、ここの結界の事はそこの案内人が詳しいだろ? ここだけ五百年前の祭壇が新築同然って異常さでも一目瞭然だ。奴はな、時間を止める力を持ってやがって、これはその影響なんだよ。更に奴に触れると塵になるなんてふざけた力も持ってやがってな、コウメ守る為に奴を蹴ったらこうなった」
そう言って、俺は上着を少し捲り腰紐付近に少しだけ残っていたボロボロのズボンの残骸を見せた。
「そんな恐ろしい能力。よくソォータ殿は無事じゃったな」
「あぁ、俺もヤバかったぜ。あと一ヶ所でも奴に触られていたら、今頃は俺もあの世行きだったわ。ハハハハ」
「先生! ありがとうなのだ! 僕の命の恩人なのだ!」
「おーーーっと、いま俺に抱き着いて来るなよ! 一発アウトなビジュアルになるからよ!」
俺が慌てて駆け寄って来ようとしたコウメを止めた。
コウメの身長では丁度俺の股間付近に顔が来るんで、今の状態で正面から抱き着かれると非常にヤバい!
アウトとかアウトじゃないとかそんな次元を超越する。
状況を知っているこの場の皆でさえ、何とも言えない微妙な空気になる筈だ。
「し、しかし、ヤバかったって、そんな大変な事を笑いながらなんて……。なぜ無事だった……。いや、あなたならそうかもしれませんね。やっぱりただの変質者じゃなかったんだ」
抱き付こうとしたのを止められて残念がっているコウメを見て、俺と従者二人と笑っていると、案内人が気になる事を言って来た。
まぁ、俺が無事ってのが不思議に思うのは仕方無いだろう。
変質者じゃねぇって納得してくれたのは良いんだが、どう言う事だ?
「なんで俺ならそうだって言えるんだよ?」
俺の問い掛けに、案内人は少し微笑みながら頷いている。
「実は私が教会で死に掛けていた時、少し意識が有ったんですよ。そしてあなたが私の身体に触れて治癒の呪文を唱えてくれたのをうっすらと見ていたんです」
「げっ! そうだったのか! しまったな。意識が無いと思い込んでたぜ」
確かにあの時は時間が惜しかったんで、設置じゃなく直接唱えたんだった。
皆メアリに注目してたから気付かれないと思っていたが、瀕死だった本人なら、周りの事よりすぐ近くの俺の方に目が行くか。
「私の身体がまだ完調ではないのに今回無理して志願したのは、調査団の中にあなたが居ると言う事を聞いたからです。あれは私の見た幻覚なのか、それとも真実だったのか探る為だったんです。やはりあれはあなたのお陰だったんですね。あの時は本当にありがとうございました。あなたは命の恩人です」
案内人は深々と頭を下げてきた。
う~ん、俺の事を探る為って言っておきながら、結構ビシバシと俺の事をディスってた様な気がしないでもないが……。
まぁ、今のこの態度からは俺への大きな感謝の念を感じるんで嘘じゃねぇんだろう。
ならば……。
「良いって事よ。で、そのお返しって訳じゃ無いんだが……」
「分かっています。どうやらあなたには事情が有る様子。この事は内密にしておきます。それに魔族の事が世間に広まる訳にもいきませんしね」
「ありがとうよ。助かったぜ」
ほっ、良かった。
そう言う事なら黙っててくれそうだな。
んじゃ、命の恩人ってのに対して幻滅させない為にも、早く野営地にまで戻ってズボン履かねぇとな。
だってこの格好のままじゃ、これ以上なにを言っても締まらねぇしよ。
俺は呆然とその男の動きの一挙手一投足の節々に記憶の欠片を当て嵌める。
それは、まるでジグソーパズルのピースの如くピタリと重なり合い、確かな姿をまざまざと俺の想い描くその人のカタチを現していった。
男はやがて立ち止まったかと思うと、おもむろに手に持った巨大な棒を両手で握り素早く振り上げる。
そして、振り上げるよりも更に早い速度で振り下ろした。
相変わらず見えている景色の音は一切聞えない。
その為、男が振り下ろす音は聞こえていない筈だが、その動作だけで空気を切る音が聞えたかのような錯覚に陥った。
いや、その音さえ俺の記憶が完全再現して寸分の狂い無く俺の頭に響いている。
男はその動作を幾度となく繰り返した。
剣の鍛錬の為の素振りをしているのだろう。
それは幼い頃の俺が見慣れていた風景、俺はその横で一緒に剣を振っていたんだ。
「……う、嘘だ。ま、まさか……!」
有る訳が無いと言う思いを嘲笑うかのように、目の前に映し出されている懐かしい日常。
心が否定しようとしても、それを否定する声が心の中で渦巻いていた。
幼い頃の俺が憧れ、そして目指した。
そうだ、俺はあの人を目指して日々鍛錬をしていた。
記憶の中の俺は『転生者』だなんて記憶は無く、ただこの世界の住人としてあの人の隣で一生懸命剣を振っていたんだ。
『いつかあの人に追いつき、そして追い越したい』それだけを願って……。
無口で滅多に言葉を発しない人だったけど、俺には分かっていた。
彼がどれだけ俺の事を大切に思ってくれているのか、その想いと優しさを……。
「父さーーーーん!!」
溢れる思いに耐え切れなくなった俺は、大声でその人……カイルス父さんに向かって叫んだ。
聞こえる訳は無いし、現実の事かも分からない。
けど、俺は力の限りに叫んだ。
すると驚いた事に父さんはそれに応える様に、ゆっくりとこちらを振り返り、そして見上げて……。
その瞬間、目の前が暗転した。
いや、暗転したんじゃない、元の祭壇に視界が戻ったんだ。
既に夜の帳は下りて、周囲はすっかり暗くなっている。
眩しい世界から戻った為に暗闇に目が慣れていなかっただけだ。
空を見上げると満天の星明りに徐々に目が慣れてきた。
俺は今見た光景を心の中で何度も反芻する。
あの時、死んだ筈の父さんが何故……。
もしかして、俺みたいに用事で村から出掛けていたのか?
違うっ!!
神に作られた記憶の中の父さんが現実に居る訳がねぇ!
幻覚に決まっている!
だが、神がアレを俺に見せた意図は何だってんだ?
それに……それに、もう少しで父さんの顔をちゃんと見る事が出来たってのに。
「クソッ! 神め! なんてタイミングで戻しやがるんだ! 今のは何だ! 現実の事なのか? 答えろ!! 馬鹿野郎の糞ったれ!」
「ひゃっ! び、びっくりしたのだ!」
今し方起こった事に混乱冷めやらぬまま神への文句を声高に叫ぶと、すぐ近くで誰かが俺の声に驚き悲鳴を上げた。
この語尾はコウメだな。
……え? 何で居るんだ?
「先生、一体どうしたのだ? 急に叫んだりしてびっくりしたのだ」
「どうしたって……。いつの間に来たんだよ! ぼーっと見てねぇで声掛けてくれって……なっ! なんでお前らまで……!」
俺は慌てて声の方に顔を向けると、そこにはコウメだけじゃねぇ、他の皆まで揃って怪訝な顔をして立ち竦んでいた。
呼んで来るように頼んだ爺さんの他に、治癒師のねぇちゃんと案内人まで居やがる。
「何度も声を掛けたんだけど、聞こえてないみたいだったのだ」
なっ? なんだって? そんなの全く聞こえなかったぞ?
も、もしかして神の奴、人の声だけを俺に聞こえない様にミュートしてたとかじゃねぇだろうな?
マジで糞ったれめっ!
だとすると、これは不味いな。
今の神への悪口聞かれちまったんじゃねぇか……。
神の敵対者とか魔族信仰者とか思われたりしねぇだろうな?
……ん? 治癒師のねぇちゃんは顔を赤らめている?
あっ、俺と眼が合った途端、恥ずかしそうに顔を背けやがった。
なんでだ?
「それより先生。なんでパンツ一丁で独り言を言ってたのだ?」
「へ?」
パンツ一丁?
…………。
「あーーーーそうだったっ!」
俺パンイチだったじゃねぇか!
ねぇちゃんが俺と眼が合って顔を背けたのはそう言う事か!
「そ、それは……。って言うか、コウメッ! なんで皆連れて来たんだ! 爺さんだけって言ったじゃねえぇか」
「ち、違うのだ! 僕は言われた通り爺ちゃんに『アレの件』って伝えたんだけど、爺ちゃん大きな声で驚いたから皆に気付かれて、それで付いて来ちゃったのだ……」
「おい! 爺さん! お前が驚いてどうするんだよ!」
「す、すまぬ。歳を取るとどうしても常識が邪魔をしてのう」
『邪魔をしてのう』じゃねぇっつうの!
人生経験豊富だろうに簡単に驚きやがって。
国王から魔族の件は聞いていただろうってのによ。
「パンツ一丁で、虚空に向かって叫ぶなんて……、やっぱりこの人変質者だ……」
「ちょっと待て! 誤解だって! 今のは神……いや魔族の置き土産の所為で幻覚見せられてただけで、それにパンイチなのも奴の攻撃によるものなんだって!」
「ええっ! 魔族が復活したのですか? はっ! 本当だ! 封印の要石どころか魔法陣も消えているっ! と言う事は結界は……、あぁ! 侵入の護符を外しても何ともない……!」
案内人は俺の言葉に慌てた様子で、何やら首に掛けているお守りを外している。
なるほど、俺や勇者であるコウメ以外がどうやって結界内に入っていたのか不思議だったが、そんなアイテムが有ったのか。
爺さんに治癒師のねぇちゃんもお守りを掛けているって事は、結界が破れたり魔族を倒したって事まではバレていねぇんだな。
良かった、良かったって、あれ?
「先生? 魔族の攻撃の所為ってズボン破れたの僕の所為じゃなかったのか?」
「あぁーーーーしまった!! 口が滑った!!」
「やれやれ、お主も相当じゃわい。結局自分で喋りおったではないか」
爺さんが呆れたと言う顔で呟いた。
言葉が出ねぇ……、国王の時も全く同じ失敗をしちまったし……。
心を許す相手が居るってのはここまで嘘が下手になっちまうものなのか?
これから身バレせずに暮らしていけるのか心配になって来たぜ。
取りあえず、この案内人には口封じ……いや、黙って貰う様にお願いしねぇとな。
「そ、それで、ま、魔族は今どこに?」
どうやって言い包めようかと思っていると、案内人が狼狽えながらも、急に真面目な顔して魔族について聞いて来た。
そう言や、こいつは一応この国の公務員みたいな物だったんだよな。
バースの放牧場は表向きの姿で、実の所この封印の監視所ってのが本当の姿って奴だ。
そして、その従業員は皆特殊な訓練をした魔族監視員、って言うか諜報員って話だった。
よく考えたら、冒険者でもねぇのに昼間かなりの距離を突貫の強行軍にも関わらず、息一つ上がらずに案内してのけていた。
爺さんや治癒師のねぇちゃんなんてお互いにブーストや治癒を掛け合って何とか付いて来ていたのによ。
先日死に掛けてたのを治してやったとは言え、応急処置程度だったんだから本来多少は影響は残っててもおかしくねぇんだがな。
待ったくタフな野郎だぜ、そこはさすがエージェントって事か。
仕方無ぇ、下手に嘘付いて放牧場内で変に噂だけが広まるより、全部話して仲間に引き入れた方が良いかもな。
コウメにもバレるのは不安だが何とかなるだろ。
「安心しろ。奴は倒した。そこの森の跡が証拠だぜ」
「え! あっ! 巨大過ぎて気付かなかった……。 な、なんですか! あの大きなトンネルみたいな跡は! ま、魔法ですか? けど、と言う事は本当に?!」
「あぁ、そうだ。奴は死んだよ」
「え? でも、先生……、魔族は僕が逃がしちゃったんじゃないの?」
魔族を倒したと言う言葉に喜んでいる案内人を見て、コウメが申し訳なさそうにそう言って来た。
「ん? あぁ、あれか。あれは逃げたと言えばそうだが、次の復活する魔族の元に飛んで行っただけだ。奴自身は死んでいる。すまねぇな黙っていてよ。それに倒したのはお前じゃねぇ、俺だったんだ。と言っても、お前が雷光疾風斬を見せてくれていたお陰だよ。あれが無かったら本当にやばかったぜ。ありがとうな」
コウメはその言葉を聞いて少しうれしそうな顔をした。
俺に嘘付かれたってのに、なんで嬉しがってんだ?
あぁ、取り逃がしたのが自分の責任じゃなかったってのが嬉しいのか?
「やっぱり先生が倒したんだね! 実は紋章もそう言っていたのだ。僕にあの威力は無理って言ってたんで、なら誰が? って聞いたら先生がって」
「へ? なんだ既にバレてたのか? ならなんで黙ってたんだよ」
「だって、先生が誤魔化そうとしてるって事は、秘密にしたいって事だと思ったのだ」
なっ! こいつはそこまで考えて……。
馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど実はしっかり考えていたのか……。
まだ幼いのに気を使わせちまったな。
こんな事ならもっと早く言っておけば良かったぜ。
「お前は本当にいい子だなぁ。すまん黙っていて」
「ソォータ様? その格好で女の子に近付くのは絵面的にちょっとマズいです……」
俺がコウメの頭を撫でてやる為に近付こうとしたら治癒師のねぇちゃんが低い声でそう言って来た。
そうだった……、下半身だけ下着姿で幼女に近付く中年男性ってビジュアル的に完全アウトじゃねぇか!
「す、すまん! 俺の荷物はどこだ? その中に替えのズボンと靴入れてんだ」
「あっ、忘れちゃったのだ」
「コ、コウメーーーー!!」
「ごめんなのだーーーー!!」
ここでドジっ娘属性発動かよ!!
仕方無ぇ、一旦野営地まで戻るか。
「ちょ、ちょっと待ってくだされ。ソォータ殿、先程魔族の所為でと言っておったが、何が有ったと言うのじゃ?」
帰ろうとした俺を爺さんは引き止めて事情を聞いてきた。
まぁ、本来再封印の事前調査の筈だったってぇのにいきなり倒したなんて言われても訳が分からねぇよな。
しかも、慌てて見に来たら、俺がパンイチで虚空に向かって叫んでるんだし、そりゃあ気になっても仕方無ぇわ。
「あぁ、ここの結界の事はそこの案内人が詳しいだろ? ここだけ五百年前の祭壇が新築同然って異常さでも一目瞭然だ。奴はな、時間を止める力を持ってやがって、これはその影響なんだよ。更に奴に触れると塵になるなんてふざけた力も持ってやがってな、コウメ守る為に奴を蹴ったらこうなった」
そう言って、俺は上着を少し捲り腰紐付近に少しだけ残っていたボロボロのズボンの残骸を見せた。
「そんな恐ろしい能力。よくソォータ殿は無事じゃったな」
「あぁ、俺もヤバかったぜ。あと一ヶ所でも奴に触られていたら、今頃は俺もあの世行きだったわ。ハハハハ」
「先生! ありがとうなのだ! 僕の命の恩人なのだ!」
「おーーーっと、いま俺に抱き着いて来るなよ! 一発アウトなビジュアルになるからよ!」
俺が慌てて駆け寄って来ようとしたコウメを止めた。
コウメの身長では丁度俺の股間付近に顔が来るんで、今の状態で正面から抱き着かれると非常にヤバい!
アウトとかアウトじゃないとかそんな次元を超越する。
状況を知っているこの場の皆でさえ、何とも言えない微妙な空気になる筈だ。
「し、しかし、ヤバかったって、そんな大変な事を笑いながらなんて……。なぜ無事だった……。いや、あなたならそうかもしれませんね。やっぱりただの変質者じゃなかったんだ」
抱き付こうとしたのを止められて残念がっているコウメを見て、俺と従者二人と笑っていると、案内人が気になる事を言って来た。
まぁ、俺が無事ってのが不思議に思うのは仕方無いだろう。
変質者じゃねぇって納得してくれたのは良いんだが、どう言う事だ?
「なんで俺ならそうだって言えるんだよ?」
俺の問い掛けに、案内人は少し微笑みながら頷いている。
「実は私が教会で死に掛けていた時、少し意識が有ったんですよ。そしてあなたが私の身体に触れて治癒の呪文を唱えてくれたのをうっすらと見ていたんです」
「げっ! そうだったのか! しまったな。意識が無いと思い込んでたぜ」
確かにあの時は時間が惜しかったんで、設置じゃなく直接唱えたんだった。
皆メアリに注目してたから気付かれないと思っていたが、瀕死だった本人なら、周りの事よりすぐ近くの俺の方に目が行くか。
「私の身体がまだ完調ではないのに今回無理して志願したのは、調査団の中にあなたが居ると言う事を聞いたからです。あれは私の見た幻覚なのか、それとも真実だったのか探る為だったんです。やはりあれはあなたのお陰だったんですね。あの時は本当にありがとうございました。あなたは命の恩人です」
案内人は深々と頭を下げてきた。
う~ん、俺の事を探る為って言っておきながら、結構ビシバシと俺の事をディスってた様な気がしないでもないが……。
まぁ、今のこの態度からは俺への大きな感謝の念を感じるんで嘘じゃねぇんだろう。
ならば……。
「良いって事よ。で、そのお返しって訳じゃ無いんだが……」
「分かっています。どうやらあなたには事情が有る様子。この事は内密にしておきます。それに魔族の事が世間に広まる訳にもいきませんしね」
「ありがとうよ。助かったぜ」
ほっ、良かった。
そう言う事なら黙っててくれそうだな。
んじゃ、命の恩人ってのに対して幻滅させない為にも、早く野営地にまで戻ってズボン履かねぇとな。
だってこの格好のままじゃ、これ以上なにを言っても締まらねぇしよ。
0
お気に入りに追加
731
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜
蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。
しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。
だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。
アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。
実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。
その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。
なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。
無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。
アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです
かものはし
ファンタジー
この力は危険だからあまり使わないようにしよう――。
そんな風に考えていたら役立たずのポンコツ扱いされて勇者パーティから追い出された保井武・32歳。
とりあえず腹が減ったので近くの町にいくことにしたがあの勇者パーティにいた自分の顔は割れてたりする?
パーティから追い出されたなんて噂されると恥ずかしいし……。そうだ別人になろう。
そんなこんなで始まるキュートな少年の姿をしたおっさんの冒険譚。
目指すは復讐? スローライフ? ……それは誰にも分かりません。
とにかく書きたいことを思いつきで進めるちょっとえっちな珍道中、はじめました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる