16 / 162
第一章 始動
第16話 神のプログラム
しおりを挟む
「簡単に言うと、先生の取った行動。あれは仕方が無かったんですよ」
おいおい、朗報ってそれ?
そんな言葉はギルドマスターから何度も言われた。
仕方が有る無しの問題じゃねぇだろうよ。
「いや、そりゃ彼女を助ける為にやった事だが、それを仕方無いと割り切れる程腐っちゃいねぇよ。まぁ罪を償わず逃げ続けていた俺が言える話じゃないけどな」
「いや、そう言う意味じゃなくてですね。ギルドマスターにも確認したんですが、襲って来た村人の目はどうでした?」
意味が分からんな? 村人達の目? そりゃ忘れもしない。
奴や魔物化した大猿同様にルビーの様に赤く輝いていた。
屍になった後も、真っ赤だったのを覚えている。
「あの魔族と同じ赤く輝いてたが、それがどうした? グレン達もなっていただろう?」
「あぁ、グレン達はまだ孵化……、あぁ俺達は、あの現象を孵化と呼んでるんですが、グレン達はまだ孵化していなかった。あれならセーフなんですよ」
「は? 孵化? まぁ、確かに瘴気の繭みたいな物に覆われていたけど、セーフって?」
確かにあれは繭の様だった。言い得て妙だな。
しかし、何を言っているんだ? 何故そんな事を知っている。
「そう言えばお前。あの場に来た時も奴の能力や治療方法の事を知っていたな。どうしてだ? 誰に教わった?」
「それなんですけどね。教わったとかじゃなくて、言うなれば学習したってやつですよ」
「学習……?」
「えぇ、知っての通り、俺達は討伐隊の本体として西の穀倉地帯に行っていたんですが、そこで数十の大猿達と戦ったんです。その内の何匹かがあの目をしていた。そいつに攻撃されると先生が昔言っていたように治癒魔法が効かない、つまり浄化をする必要が有るって事に気付きました」
「あぁ、確かに目が赤い奴にやられたらそうなるみたいだな。教会でも一人だけ酷い傷の奴がそうだったし、似たような傷を負ったカイの彼女もそうだった」
そう言えば負傷者は何人か居たが、普通の大猿の攻撃と思われる怪我をした奴は瘴気に侵されていなかった。
魔物化した奴だけが持つ攻撃方法なのか?
「暫く戦っているとですね。普通の大猿達がグレン達と同じく、黒い繭に覆われ出したんですよ。そして繭が消えた途端、赤い目をした大猿が襲い掛かって来た。牙を生やしてね」
「なるほど。じゃあ、グレン達は間一髪だったんだな。あんな牙が生えてたらグレンの奴なんてオーガと間違われるんじゃないか?」
そうなったらカイの彼女も悲惨だよな。
いや、カイが居るんで大丈夫か。しかし牙の生えた二人の子供はどうなるんだろう?
「そう、間一髪でした。あと少し遅かったら、二度と人間に戻れなかった」
「え? 人間に戻れない?」
「はい。俺達実験したんですよ。それで繭に浄化を掛けると元の大猿に戻る事が分かりました。だから片っ端から大猿に向けて掛けて行ったんです」
実験? 繭に掛けて戻るのはグレンで実証済みだ。恐らく繭になる前に掛けても同じ効果は有るだろう。
では、人間に戻れないと言うのはどう言う事だ? 姿が元に戻らないって事か?
……いや、この言い回しじゃあ?
「繭になる前のは予想通り元に戻り、そして正気に戻った猿達は森に逃げ帰っていきました。問題は赤目の奴です。そいつに浄化を掛けると……」
「掛けるとどうなるんだ? ……まさか?」
「えぇ、全く効きませんでしたね。危うくうちの治癒師が殺されかける所でしたよ」
そ、そんな。と言う事は……。
「だからですね。先生はあの時最善を尽くしたんですよ。赤目になってしまった生物は戻らない。そうなったら自分が相手にやられるか、それとも相手を殺すしかない。村人達は可哀想ですが、魔物となったまま人々を襲い罪を重ねるより、せめてあそこで死ぬ方が……良かった。そう思います」
「そう……なのか? いや、しかし……」
「まぁ、先生は表面では悪ぶっていますが、心は優しいですからね。自分が許せない気持ちは仕方有りませんよ。でも俺が保証します。先生は悪くなかった。そしてそれでもまだ村人に悪いと思っているのなら、これからどんどん人助けをしていったらいいんです。その村人達の代わりに」
ダイスは満面の笑みでそんな歯の浮くようなセリフを言い放った。
まっ、眩し過ぎる!! けど、そんな眩しさに俺の心にも日が射したような気がした。
「はははっ、教え子にそんな事言われたら世話無いわ。俺も本当に焼が回ったな」
「そこで提案ですよ。俺のパーティーと一緒に旅に出ませんか?」
「それ却下。面倒臭ぇ」
「そんなぁ~。俺の願い聞いてくれるって言ったじゃないですか!」
「それはそれ、これはこれ、だ! いい加減俺離れしろよ」
俺の言葉にダイスは凹んでいるが、これもこいつの優しさなんだろう。
殺すしか無かったとは言え、命を奪ったのには違いない。
そう簡単に割り切れないと言うのを分かっているからこそ、あえて冗談を言って俺の心を和ませようとしてくれている。
本当に出来た生徒だな。有難い。
「そう言えば先生。あの賢者タイムって言葉なんですが……」
俺がしみじみとダイスの気持ちに感に入っていると、急に話題を変えて来た。
まだあの言葉を引き摺っていたのか。こいつらしいと言えばそうなんだけど。
「仲間に聞いたらですね、皆にやにやし出したんですよ。けど誰も教えてくれませんでした」
マジか……。その反応って事は仲間達は意味を知ってるっぽいな。
こいつがいい歳して世間ズレしていないだけで、この世界には『賢者タイム』って言葉は有るんだな。
あの神の事だからなんでこんなパワーワードを持ち込まなかったんだ? と思っていたが……。
「そこで寝ないで考えたんです。アレって要するに凄い魔法を唱えた後の虚脱感ですね? あの必殺技凄かったですし!」
寝ないでって……。もしかしてその目の下の隈は宴で引っ張り凧だったとか、俺の過去を調べて出来た物じゃなく、そんなしょうもない事の為に付いた隈なのか?
しかし、その推測は、まぁ当たらずとも遠からず?
「あぁ、そうそうそんな感じ」
取りあえず説明するのも面倒臭いので肯定しておいた。
出会った頃は、悪ガキだったが、そっち方面にはかなり疎かったからな。
それに関しちゃ、俺も大きい口を叩ける訳じゃ無ぇが。
「やっぱりそうですか! 良かった良かった。これで胸の痞えが取れました」
ふ~。本当にこいつは馬鹿なのか賢いのか。
いや、これが大物って事だろう。
幸せ者だぜ。
「あっ、そうそう。もう一つ報告しないといけない事が有るんですよ」
「え? まだ有るのか?」
「えぇ、これなんですが……」
ダイスはそう言うと腰のポーチから何かを取り出した。
布に包まれたソレは丸く、大きさはソフトボール位だろうか。
「何だそれ? 水晶球か?」
「いや、なんか奴を倒したら胸の所から出て来たんですよ」
「なっ! 捨てろ! そんな物騒な物! 拾ってくるなよ!」
なんてモノを持って来てるんだよ! 呪われたりしたらどうするんだ。
いや、確実に呪われる自信がある。
「いや~、そう言っても、そのまま置いておく方が怖いじゃないですか。誰かが拾って、もしもの事が有ったらと思うと……」
「まぁ、確かに手が届く範囲で監視した方が良いっちゃ良いんだが。それで何なんだ?」
「えぇ、玉のようですが、そうじゃないんです。これを見て下さい」
そう言って、ダイスは包んでいた布を開き中の物を見せた。
それはプレート? の様な物が中央に浮かんでいる玉……?
いや玉じゃない。実体が有る訳じゃなく、浮かぶプレートの周りに力場の様な輝く光で覆われている。
なんだこれ? えぇと、プレートに何か書いているな。
何々?『1st』ん? 『ファースト』って事か? その後は見た事が有ると言うか、久々に見た文字だ。
とても懐かしい。俺が生前使っていた文字だ。はっきり言うと漢字が書かれている。
この世界には古今東西色々な文化が混ざっているが、言語は統一されており、それは漢字なんかじゃない。
つまり、この世界には漢字は存在してねぇんだよ。
それなのに、目の前にあるそれにはしっかりと漢字が書かれている。
おいおい、なんか嫌な予感がするぞ?
読みたくないんだが、そう言う訳にもいかないか。
書かれていた漢字、それは『女媧』。
ええと、確か中国の神様だっけ? 人首蛇体で土から人を生み出したとか言うそんな感じ。
『1st 女媧』
ははは……。これモロじゃん。完全に神の仕業じゃん。
「お、おいおいおいおい! それマジでどっか捨ててこい! おい! 近付けるなって!」
「何故かこの力場で弾かれて、中のプレートには触れないんですよ。先生ならもしや? と思って」
「おい! じりじり詰め寄るなって! 絶対ヤバい奴だからそれ! ……あっ」
手でダイスを振り払おうとしたら、偶然指先がソレに触れてしまった。
……? あれ? 何も起こらない?
そう思った途端プレートを覆っていた力場の光が、凄い勢いで窓から飛び出し北の方角に飛んで行った。
それと共に浮力を失ったプレートが床に落ちた。
「…………」
「…………」
俺達は今起こった事に呆気に取られお互いの顔を見合わせた。
「ははっ」
「はははっ」
「「あはははははは」」
「って、お前これ絶対アカン奴だろ! アレ仲間呼ぶ奴だ!」
「すみません先生!!」
『1st』後は『2nd』……。嘘だろ? もしかして他の魔族が来なかったのってそう言う事か?
「でも大丈夫ですよ! 次も俺達で倒しちゃいましょう!!」
能天気なダイスの言葉など右から左。
俺はとうとう動き始めた神の計画に気が遠くなっていくのを感じた。
あぁ、のんびり暮らしたい……。 そんな事を思いながら。
おいおい、朗報ってそれ?
そんな言葉はギルドマスターから何度も言われた。
仕方が有る無しの問題じゃねぇだろうよ。
「いや、そりゃ彼女を助ける為にやった事だが、それを仕方無いと割り切れる程腐っちゃいねぇよ。まぁ罪を償わず逃げ続けていた俺が言える話じゃないけどな」
「いや、そう言う意味じゃなくてですね。ギルドマスターにも確認したんですが、襲って来た村人の目はどうでした?」
意味が分からんな? 村人達の目? そりゃ忘れもしない。
奴や魔物化した大猿同様にルビーの様に赤く輝いていた。
屍になった後も、真っ赤だったのを覚えている。
「あの魔族と同じ赤く輝いてたが、それがどうした? グレン達もなっていただろう?」
「あぁ、グレン達はまだ孵化……、あぁ俺達は、あの現象を孵化と呼んでるんですが、グレン達はまだ孵化していなかった。あれならセーフなんですよ」
「は? 孵化? まぁ、確かに瘴気の繭みたいな物に覆われていたけど、セーフって?」
確かにあれは繭の様だった。言い得て妙だな。
しかし、何を言っているんだ? 何故そんな事を知っている。
「そう言えばお前。あの場に来た時も奴の能力や治療方法の事を知っていたな。どうしてだ? 誰に教わった?」
「それなんですけどね。教わったとかじゃなくて、言うなれば学習したってやつですよ」
「学習……?」
「えぇ、知っての通り、俺達は討伐隊の本体として西の穀倉地帯に行っていたんですが、そこで数十の大猿達と戦ったんです。その内の何匹かがあの目をしていた。そいつに攻撃されると先生が昔言っていたように治癒魔法が効かない、つまり浄化をする必要が有るって事に気付きました」
「あぁ、確かに目が赤い奴にやられたらそうなるみたいだな。教会でも一人だけ酷い傷の奴がそうだったし、似たような傷を負ったカイの彼女もそうだった」
そう言えば負傷者は何人か居たが、普通の大猿の攻撃と思われる怪我をした奴は瘴気に侵されていなかった。
魔物化した奴だけが持つ攻撃方法なのか?
「暫く戦っているとですね。普通の大猿達がグレン達と同じく、黒い繭に覆われ出したんですよ。そして繭が消えた途端、赤い目をした大猿が襲い掛かって来た。牙を生やしてね」
「なるほど。じゃあ、グレン達は間一髪だったんだな。あんな牙が生えてたらグレンの奴なんてオーガと間違われるんじゃないか?」
そうなったらカイの彼女も悲惨だよな。
いや、カイが居るんで大丈夫か。しかし牙の生えた二人の子供はどうなるんだろう?
「そう、間一髪でした。あと少し遅かったら、二度と人間に戻れなかった」
「え? 人間に戻れない?」
「はい。俺達実験したんですよ。それで繭に浄化を掛けると元の大猿に戻る事が分かりました。だから片っ端から大猿に向けて掛けて行ったんです」
実験? 繭に掛けて戻るのはグレンで実証済みだ。恐らく繭になる前に掛けても同じ効果は有るだろう。
では、人間に戻れないと言うのはどう言う事だ? 姿が元に戻らないって事か?
……いや、この言い回しじゃあ?
「繭になる前のは予想通り元に戻り、そして正気に戻った猿達は森に逃げ帰っていきました。問題は赤目の奴です。そいつに浄化を掛けると……」
「掛けるとどうなるんだ? ……まさか?」
「えぇ、全く効きませんでしたね。危うくうちの治癒師が殺されかける所でしたよ」
そ、そんな。と言う事は……。
「だからですね。先生はあの時最善を尽くしたんですよ。赤目になってしまった生物は戻らない。そうなったら自分が相手にやられるか、それとも相手を殺すしかない。村人達は可哀想ですが、魔物となったまま人々を襲い罪を重ねるより、せめてあそこで死ぬ方が……良かった。そう思います」
「そう……なのか? いや、しかし……」
「まぁ、先生は表面では悪ぶっていますが、心は優しいですからね。自分が許せない気持ちは仕方有りませんよ。でも俺が保証します。先生は悪くなかった。そしてそれでもまだ村人に悪いと思っているのなら、これからどんどん人助けをしていったらいいんです。その村人達の代わりに」
ダイスは満面の笑みでそんな歯の浮くようなセリフを言い放った。
まっ、眩し過ぎる!! けど、そんな眩しさに俺の心にも日が射したような気がした。
「はははっ、教え子にそんな事言われたら世話無いわ。俺も本当に焼が回ったな」
「そこで提案ですよ。俺のパーティーと一緒に旅に出ませんか?」
「それ却下。面倒臭ぇ」
「そんなぁ~。俺の願い聞いてくれるって言ったじゃないですか!」
「それはそれ、これはこれ、だ! いい加減俺離れしろよ」
俺の言葉にダイスは凹んでいるが、これもこいつの優しさなんだろう。
殺すしか無かったとは言え、命を奪ったのには違いない。
そう簡単に割り切れないと言うのを分かっているからこそ、あえて冗談を言って俺の心を和ませようとしてくれている。
本当に出来た生徒だな。有難い。
「そう言えば先生。あの賢者タイムって言葉なんですが……」
俺がしみじみとダイスの気持ちに感に入っていると、急に話題を変えて来た。
まだあの言葉を引き摺っていたのか。こいつらしいと言えばそうなんだけど。
「仲間に聞いたらですね、皆にやにやし出したんですよ。けど誰も教えてくれませんでした」
マジか……。その反応って事は仲間達は意味を知ってるっぽいな。
こいつがいい歳して世間ズレしていないだけで、この世界には『賢者タイム』って言葉は有るんだな。
あの神の事だからなんでこんなパワーワードを持ち込まなかったんだ? と思っていたが……。
「そこで寝ないで考えたんです。アレって要するに凄い魔法を唱えた後の虚脱感ですね? あの必殺技凄かったですし!」
寝ないでって……。もしかしてその目の下の隈は宴で引っ張り凧だったとか、俺の過去を調べて出来た物じゃなく、そんなしょうもない事の為に付いた隈なのか?
しかし、その推測は、まぁ当たらずとも遠からず?
「あぁ、そうそうそんな感じ」
取りあえず説明するのも面倒臭いので肯定しておいた。
出会った頃は、悪ガキだったが、そっち方面にはかなり疎かったからな。
それに関しちゃ、俺も大きい口を叩ける訳じゃ無ぇが。
「やっぱりそうですか! 良かった良かった。これで胸の痞えが取れました」
ふ~。本当にこいつは馬鹿なのか賢いのか。
いや、これが大物って事だろう。
幸せ者だぜ。
「あっ、そうそう。もう一つ報告しないといけない事が有るんですよ」
「え? まだ有るのか?」
「えぇ、これなんですが……」
ダイスはそう言うと腰のポーチから何かを取り出した。
布に包まれたソレは丸く、大きさはソフトボール位だろうか。
「何だそれ? 水晶球か?」
「いや、なんか奴を倒したら胸の所から出て来たんですよ」
「なっ! 捨てろ! そんな物騒な物! 拾ってくるなよ!」
なんてモノを持って来てるんだよ! 呪われたりしたらどうするんだ。
いや、確実に呪われる自信がある。
「いや~、そう言っても、そのまま置いておく方が怖いじゃないですか。誰かが拾って、もしもの事が有ったらと思うと……」
「まぁ、確かに手が届く範囲で監視した方が良いっちゃ良いんだが。それで何なんだ?」
「えぇ、玉のようですが、そうじゃないんです。これを見て下さい」
そう言って、ダイスは包んでいた布を開き中の物を見せた。
それはプレート? の様な物が中央に浮かんでいる玉……?
いや玉じゃない。実体が有る訳じゃなく、浮かぶプレートの周りに力場の様な輝く光で覆われている。
なんだこれ? えぇと、プレートに何か書いているな。
何々?『1st』ん? 『ファースト』って事か? その後は見た事が有ると言うか、久々に見た文字だ。
とても懐かしい。俺が生前使っていた文字だ。はっきり言うと漢字が書かれている。
この世界には古今東西色々な文化が混ざっているが、言語は統一されており、それは漢字なんかじゃない。
つまり、この世界には漢字は存在してねぇんだよ。
それなのに、目の前にあるそれにはしっかりと漢字が書かれている。
おいおい、なんか嫌な予感がするぞ?
読みたくないんだが、そう言う訳にもいかないか。
書かれていた漢字、それは『女媧』。
ええと、確か中国の神様だっけ? 人首蛇体で土から人を生み出したとか言うそんな感じ。
『1st 女媧』
ははは……。これモロじゃん。完全に神の仕業じゃん。
「お、おいおいおいおい! それマジでどっか捨ててこい! おい! 近付けるなって!」
「何故かこの力場で弾かれて、中のプレートには触れないんですよ。先生ならもしや? と思って」
「おい! じりじり詰め寄るなって! 絶対ヤバい奴だからそれ! ……あっ」
手でダイスを振り払おうとしたら、偶然指先がソレに触れてしまった。
……? あれ? 何も起こらない?
そう思った途端プレートを覆っていた力場の光が、凄い勢いで窓から飛び出し北の方角に飛んで行った。
それと共に浮力を失ったプレートが床に落ちた。
「…………」
「…………」
俺達は今起こった事に呆気に取られお互いの顔を見合わせた。
「ははっ」
「はははっ」
「「あはははははは」」
「って、お前これ絶対アカン奴だろ! アレ仲間呼ぶ奴だ!」
「すみません先生!!」
『1st』後は『2nd』……。嘘だろ? もしかして他の魔族が来なかったのってそう言う事か?
「でも大丈夫ですよ! 次も俺達で倒しちゃいましょう!!」
能天気なダイスの言葉など右から左。
俺はとうとう動き始めた神の計画に気が遠くなっていくのを感じた。
あぁ、のんびり暮らしたい……。 そんな事を思いながら。
0
お気に入りに追加
734
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~
雪華慧太
ファンタジー
理不尽なイジメが原因で引きこもっていた俺は、よりにもよって自分の誕生日にあっけなく人生を終えた。魂になった俺は、そこで助けた少女の力で不思議な瞳と前世の記憶を持って異世界に転生する。聖女で超絶美人の母親とエルフの魔法教師! アニメ顔負けの世界の中で今度こそ気楽な学園ライフを送れるかと思いきや、傲慢貴族の息子と戦うことになって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる