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運命

俺に出来る事、ないのか?

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ー………なんだ、これ?

涙の背中から寒気のようなものが襲った。涙は長い時間忘れていた、“恐怖”を今体験している。

「?性奴隷なら、こいつの場合は“せい”は精液の精だろ?」
「“精液べ・ん・き”。ギャハハッ!!!笑うわこれっ!!」

『キーン、コーン、カーン、コーン、…………』

予鈴が鳴った。西城の仲間が言葉を発する。

「ちっ、予鈴か。」
「よかったな。小野田。」
「行くぞ、お前ら。」
「はい。」

ーやっと、予鈴か。もう、大概にして欲しいな。

何事も無かったように涙は立った。目線の先には、さっきまで居た西城達の後ろ姿が移った。

ー性奴隷、か。…………なんか、変な方向に向かっている気がするな。………気のせい?




ーーーーー
「はぁー、重っ。」

ー初日から先生に、コキ使われることになるとは…………今日はついてないな。

真尋は教材と頼まれた資料を持って、廊下を歩いていた。

『ドンッ!!』

真尋は死角から来た“誰か”に、当たってしまった。

「痛っ!?あっ!スミマセンっ!!」

真尋は誰か分からない人に頭を下げた。

「え?別に大丈夫だけど…………」

頭を上げるとそこには、所々服が汚れた涙の姿があった。

「あ、小野田か。」
「?」

『キーン、コーン、カーン、コーン。キーン、コーン、カーン、コーン。』

「やばっ!授業始まったっ!!」
「そうだね。」
「そうだねじゃないってっ!!ヤバイよっ!」

ー俺、まだ飯食ってないんだが!?………?なーんか小野田の制服、汚れてないか?朝はキレイだったのにな。

さっきは、突然のことで慌てていたがよく見ると涙の制服が所々汚れていた。

「どうしたんだよ?その汚れ。」

真尋がそう言うと、涙は普通に“異常”な発言をした。

「ただ、蹴られた“だけ”。」
「蹴られただけって………お前、痛いだろ?」

涙は思ったことを、真尋に返す。

「まぁ。けれどキミには関係無いことだよね?」
「あ、えーと…………し、知ってるし関係無くないって!!」
「けれど、蹴られた場面を見ていないのに、関係あるとは言えないんじゃない?」

ーた、確かにそうだけど…………う~っ、面倒くさいなーっ!まったくっ!! 

へりくつのように返された言葉にムカついたのか、真尋はキレ気味だった。

「あーもうっ!!!別に関係無いとか無くないとかどーでも良いからっ!!てか早く保険室に行くぞっ!」   
「は?」
「だーかーら!行くのっ!保険室にっ!!」
「いや、ついてこなくても良い。」
「いーや、ついて行く。お前危なっかしそうだから。」

ーまぁ、本音を言えば誰がやったか聞きたいんだけどさ。

真尋は強引に涙の右手首を掴んで、行くぞ!と言いながら保険室に向かった。



ーーーーー
「…………ここ、どこ?」
「はぁ。知らないなら連れて行こうとしないで。」
「ああ、悪い……………」

真尋達が着いた所は保険室とは真逆の場所だった。

「ほんと…………ごめん…………」
「謝るなら、ジュース奢れ。」
「はい…………」

ジュースを条件にこの場はここで収まった。









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