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プロローグ

警官。

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泣いていたのを誰かが見ていたのだろう。警官が少年の前に近づいて来た。

「どうしたんだい?キミ。お母さんは?」

捨てられた。ならばもう、あの人は母ではないのかも知れない。

「…………ない」
「えっ?」
「いないよ、母さんはもう、いない。」
「…………」

警官は呆気に取られたかの様に、唖然としていた。少年はアッサリと言ったのだ。まだ子供の幼い子がだ。

「………一回、警察署に連れてきたらどうだ?」
「神埼さん。」
「おい、坊主。」

神埼と呼ばれた警官は少年に訪ねた。

「親、本当にいないのか?家も無いのか?」
「…………家には、帰れない。母さんは、いない。父さんは………僕がいらない。そう言ってたから、いない。」
「安藤、連れてくぞ。」
「はい!」

安藤と呼ばれた警官は少年を抱っこした。

「っ!ねぇ、キミ!ご飯ちゃんと食べてるの!!」
「なんでそんなこ………」 
「軽すぎる、君ぐらいの子ならもう少し重い筈なのに。」
「…………」

「おい、坊主。飯食うか?」
「いらない、お金が無い。」

六歳の子供が言うようなことではない。そう思う事が普通だ。

「………今回は無料にしてやる。こいよ、坊主。」
「…………」

初めてだ。こんな風に言われたのは。

だからだろうか、ついて言ってしまったのは。

「うん。」



ーーーーー
神埼はコンビニから買ってきたであろう“おにぎり”と“水の入ったペットボトル”を少年に渡した。

「食えよ、坊主。育ち盛りなんだからな。」

少年はコクリと頷いた。

「ん?ペットボトルのフタ開かないのかな?」

安藤は少年に問いた。

「別に大丈夫。何でも一人でやらないとダメだから。」
「あはは、けどそんな事言わないで、一人でも出来ない事ぐらいあるんだからさ。」

安藤は少年のペットボトルに手を出すと、フタを開けてやった。

「………ありがとう。」

少年はお礼を言うと、ご飯を黙々と食べる。

ー美味しい、こんなに美味しいんだ。ご飯って………



ーーーーー
少年はご飯を食べ終えると、神埼達についていった。

[ 皆木警察署 ]
「おい、どうしたんだよ!神埼っ!!誘拐かっ!?」
「んなのするわきゃねーだろ。」

「そうか。」と納得したらしいスーツを着た警官は、少年を相談室に案内した。

「私は安藤って言います。」
「おじさんと同じ名前………」
「ああ、そうか………じゃあ、私のことは八城(やしろ)って呼んで下さいね、」

少年は今、人生の中で長い長い会話をしている。安藤や八城。そして、神埼。母と喋ったのは数分程度。だが、彼らと喋ったのは数十分。長くて短いような時間が過ぎていく。それは少年が望んだことなのか、はたまた偶然のことなのかそれは、誰にも解らないだろう。






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