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9話 呼び出された令嬢:残念!エミィでしたー!
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「失礼いたします……」
一応声を掛けて、アレリアはその誰もいない教室に入っていった。
放課後、夕刻の教室。――一年二組の教室。
そう、誰もいない。
それでもアレリアは自分の判断が間違っているとは微塵も思っていない。
教室の中程まで入っていったアレリアは、そこで立ち止まり、全神経を研ぎ澄まして気配を探った。
そこは昼間の喧噪を包みこんで夕陽に沈む、誰もいない静かな静かな空間――。
開け放たれた窓から運動部のかけ声が聞こえてくるのみで、他に音もない。
彼女がどこかに『いる』はずなのだが、残念ながら運動音痴のアレリアには気配を察する能力はなかった。
彼女の方から動くまでしばらく待っていてもいいのだが、黙って潜んでいるであろう彼女のことが心配で、アレリアは声を掛けた。
「……エメリーヌ? どこですか?」
アレリアの声は静寂に妙に反発し……掃除用具入れのロッカーが突然バコッと開いた。
「なんでですの……」
中にいたのはもちろんピンク髪のエメリーヌだ。
「そこにいたのですか。早く出ていらっしゃい、令嬢にそんなところ似つかわしくなくてよ」
エメリーヌは悔しそうに顔を歪め、アレリアを睨み付ける。
「なんでエミィだと見破れたんですの。マルク様を騙った呼び出しは完璧だったはず……!」
「やはり本気だったのですか……。全身全霊をかけたギャグならどれだけいいかと思っていました」
アレリアは溜め息と共にポケットから折りたたんだ手紙を取り出し、もう一度中を改めた。
『こんにちは!
突然のお手紙、申し訳ありませんの。自分はマルク殿下ですの。
親愛なるアレリア姫、強の放課後、教室に来て下さい。
ちなみに間違っても自分はあの可愛いエメリーヌではないですの!
なお、この犬は自動的に帰ってくるのでご心配なさらず! まるく』
アホすぎる。どこの教室かも書いていない。
アレリアはエメリーヌが一年二組というのを知っていたので手紙にある教室というのが一年二組の教室のことだとピンと来たのだが、それを知らなければ三年一組の教室で延々とエメリーヌを待っていたかもしれない。
「アホすぎて心配になって……。来てしまいました……」
「とりあえずこういう場面で言おうって思ってた台詞があるんですの。言っていいですかしら?」
「どうぞ」
「ふっふっふ、マルク様だと思われまして? ざんねーん、エミィでしたー!」
何故か得意げになるエメリーヌに秒でげんなりしつつ、アレリアは眉間を揉んだ。
「その言葉の通りになるよう、少しは隠す努力をして下さいな……」
「?」
「いやきょとんとされても。わたくしが困りますわ」
はぁ、と肩を落としてからアレリアは首を振った。
「ねえエメリーヌ? 多分あなた、こういうことをする器ではなくてよ。ですから」
「きゃあッ!!!」
アレリアが言い終わらないうちに、突然鋭い悲鳴と共にエメリーヌが身をかがめたのだ。
「どうしました、エメリーヌ!」
慌ててアレリアが駆け寄ると、彼女はアレリアに手を差し出した。
意味も分からずその手を取ると、今度は急激に離す。
エメリーヌは嫌々するように首を振り、そしてうめき声を上げた。
「エメリーヌ? エメリーヌ!」
「いやああぁぁぁ……アレリア様が、アレリア様がエミィを……」
カラン、と床に落ちる物があった。
アレリアの目がそれに吸い付けられる。それは……小さなナイフだった。
「マルク様! 助けてぇ……マルク様、マル……あれ? マルク様は???」
痛そうかつ甘ったれた声を出しながらきょろきょろと辺りを見回すエメリーヌ。もちろん、マルクなどいない。
大方マルクも呼び出しておいて、この状況を見せる算段だったのだろう……。アレリアがエメリーヌを傷つけた、という演技をしているこの場面を。
アレリアの眼には、かつての人生で見た一つの場面がありありと思い出されていた。
あの時は実際にこういう事件を仕組まれたのではなく、結果について言いがかりをつけられただけだったが。
婚約者である皇太殿下の隣りにたたずむ美少女侍女。その手首には包帯が幾重にも巻かれていて――。
アレリアは咄嗟に彼女の――エメリーヌの手を強引に取った。
エメリーヌの白い左手のひらに、浅く、斜めに、ナイフの赤い一刃が走っていた。
よく分からないが主要な血管は避けているようでそれほどの出血には至っていない。
アレリアは目の前がカッと赤くなるのを感じた。
でも…………………
違う。チガウ。ちがう。
この子はあの侍女ではない。
あの人たちは……侍女も皇太子も、悔恨も何もかもすべて。アレリアの手の届かないところに行ってしまった。
目の前で騒いでいるのは他の誰でもなく、アホすぎて心配になるピンク髪の下級生騎士、エメリーヌである。
「遅れてすまん! って、女二人でなにやってんだ?」
ガラガラという教室の出入り口の戸を開ける音と共に、脳天気な声のマルクが現れた。
「まっ、マルク様!」
エメリーヌはぱっと顔を上げた。
「あっ、あのっ、アレリア様が……!」
「そうですわ。わたくしがやったのです」
アレリアは咄嗟にそう言っていた。
おそらく、エメリーヌがアレリアをはめようと仕組んだ通りに。
「意見の相違で揉めたのです。わたくしがやりました。ですから早く、保健室に!」
「はあ? 嘘つけ。そいつの二つ名知ってるか? 野犬の群れの王だぞ。腰抜けのアレ姉じゃ寝込み襲ったって逆に刺されるわ」
「アレリア様、どうして……」
こんな時なのに呑気に返すマルク、信じられないというようにアレリアを見上げるエメリーヌ。
そしてマルクによるかなり酷いアレリア評。
「あなたは……自分を傷つけるほど愚かな子ではないはずよ」
安心させるようにアレリアは微笑んだ。
「野犬の群れの王――? なのでしょう? そんな子は刃物の間違った使い方なんてしないものよ」
エメリーヌは顔を上げ、キッとアレリアを睨み付けた。
「エミィはそんなんではありません! エミィはお姫様なんですの。犬なんて知りませんの。エミィはアレリア様みたいになるんですの!」
「なんだなんだ? 俺の取り合い? モテる男は辛いわー」
アレリアはため息をつき、立ち上がった。
「……エメリーヌ。老婆心から言いますけれど、マルク殿下だけはやめておいたほうがよくてよ。本当に殿下のことが好きでも、お姫様に憧れているだけでも、それを叶えるにはおよそ最悪の相手ですわ」
「え、ちょっ、アレ姉! なに俺にとばっちりしてんだよ!」
エメリーヌがマルクと結婚してそれこそ破滅してもまったく意に介さないし、アレリアは今世の自分の身さえ守れたらそれで良かった。
一つ、前世に囚われない今世の誤算があるとするならば、それはエメリーヌがアホすぎて逆に心配なことくらいである。
「あなたにはきっともっとまともな、あなたにぴったり合った人が現れますわ。殿下の外見やあの身分はただの目くらましよ、幻惑されるのはやめておきなさい。そうやって悲劇に終わるのはわたくしの役目だから」
王子様に憧れる女の子……。そのキラキラした夢を壊すのは可哀想だけれど、されど現実はキツい。
それを、アレリアは前世に知った。
後悔しているのだ。あの頃の自分を。
好きな人がいて、思い描いた素敵な未来があって。その全てを手に入れたと思っていた、裏切られる前の――婚約時代の、夢いっぱいだった頃のアレリアを。
だがあの頃の自分に未来をいって婚約者から離れるよう説得しても信じないだろう。
キラキラした夢は人を狂わせる。その夢を偶然にも手に入れたと思えば思うほど、人は狂う。
キラキラとピンクの瞳を輝かすエメリーヌも同じだ。アレリアの老婆心など余計なお世話だろう。
エメリーヌは痛みなど感じないかのような、きょとんとした顔でアレリアを見上げていた。
「アレリア様、マルク様のことお嫌いなんですの?」
一応声を掛けて、アレリアはその誰もいない教室に入っていった。
放課後、夕刻の教室。――一年二組の教室。
そう、誰もいない。
それでもアレリアは自分の判断が間違っているとは微塵も思っていない。
教室の中程まで入っていったアレリアは、そこで立ち止まり、全神経を研ぎ澄まして気配を探った。
そこは昼間の喧噪を包みこんで夕陽に沈む、誰もいない静かな静かな空間――。
開け放たれた窓から運動部のかけ声が聞こえてくるのみで、他に音もない。
彼女がどこかに『いる』はずなのだが、残念ながら運動音痴のアレリアには気配を察する能力はなかった。
彼女の方から動くまでしばらく待っていてもいいのだが、黙って潜んでいるであろう彼女のことが心配で、アレリアは声を掛けた。
「……エメリーヌ? どこですか?」
アレリアの声は静寂に妙に反発し……掃除用具入れのロッカーが突然バコッと開いた。
「なんでですの……」
中にいたのはもちろんピンク髪のエメリーヌだ。
「そこにいたのですか。早く出ていらっしゃい、令嬢にそんなところ似つかわしくなくてよ」
エメリーヌは悔しそうに顔を歪め、アレリアを睨み付ける。
「なんでエミィだと見破れたんですの。マルク様を騙った呼び出しは完璧だったはず……!」
「やはり本気だったのですか……。全身全霊をかけたギャグならどれだけいいかと思っていました」
アレリアは溜め息と共にポケットから折りたたんだ手紙を取り出し、もう一度中を改めた。
『こんにちは!
突然のお手紙、申し訳ありませんの。自分はマルク殿下ですの。
親愛なるアレリア姫、強の放課後、教室に来て下さい。
ちなみに間違っても自分はあの可愛いエメリーヌではないですの!
なお、この犬は自動的に帰ってくるのでご心配なさらず! まるく』
アホすぎる。どこの教室かも書いていない。
アレリアはエメリーヌが一年二組というのを知っていたので手紙にある教室というのが一年二組の教室のことだとピンと来たのだが、それを知らなければ三年一組の教室で延々とエメリーヌを待っていたかもしれない。
「アホすぎて心配になって……。来てしまいました……」
「とりあえずこういう場面で言おうって思ってた台詞があるんですの。言っていいですかしら?」
「どうぞ」
「ふっふっふ、マルク様だと思われまして? ざんねーん、エミィでしたー!」
何故か得意げになるエメリーヌに秒でげんなりしつつ、アレリアは眉間を揉んだ。
「その言葉の通りになるよう、少しは隠す努力をして下さいな……」
「?」
「いやきょとんとされても。わたくしが困りますわ」
はぁ、と肩を落としてからアレリアは首を振った。
「ねえエメリーヌ? 多分あなた、こういうことをする器ではなくてよ。ですから」
「きゃあッ!!!」
アレリアが言い終わらないうちに、突然鋭い悲鳴と共にエメリーヌが身をかがめたのだ。
「どうしました、エメリーヌ!」
慌ててアレリアが駆け寄ると、彼女はアレリアに手を差し出した。
意味も分からずその手を取ると、今度は急激に離す。
エメリーヌは嫌々するように首を振り、そしてうめき声を上げた。
「エメリーヌ? エメリーヌ!」
「いやああぁぁぁ……アレリア様が、アレリア様がエミィを……」
カラン、と床に落ちる物があった。
アレリアの目がそれに吸い付けられる。それは……小さなナイフだった。
「マルク様! 助けてぇ……マルク様、マル……あれ? マルク様は???」
痛そうかつ甘ったれた声を出しながらきょろきょろと辺りを見回すエメリーヌ。もちろん、マルクなどいない。
大方マルクも呼び出しておいて、この状況を見せる算段だったのだろう……。アレリアがエメリーヌを傷つけた、という演技をしているこの場面を。
アレリアの眼には、かつての人生で見た一つの場面がありありと思い出されていた。
あの時は実際にこういう事件を仕組まれたのではなく、結果について言いがかりをつけられただけだったが。
婚約者である皇太殿下の隣りにたたずむ美少女侍女。その手首には包帯が幾重にも巻かれていて――。
アレリアは咄嗟に彼女の――エメリーヌの手を強引に取った。
エメリーヌの白い左手のひらに、浅く、斜めに、ナイフの赤い一刃が走っていた。
よく分からないが主要な血管は避けているようでそれほどの出血には至っていない。
アレリアは目の前がカッと赤くなるのを感じた。
でも…………………
違う。チガウ。ちがう。
この子はあの侍女ではない。
あの人たちは……侍女も皇太子も、悔恨も何もかもすべて。アレリアの手の届かないところに行ってしまった。
目の前で騒いでいるのは他の誰でもなく、アホすぎて心配になるピンク髪の下級生騎士、エメリーヌである。
「遅れてすまん! って、女二人でなにやってんだ?」
ガラガラという教室の出入り口の戸を開ける音と共に、脳天気な声のマルクが現れた。
「まっ、マルク様!」
エメリーヌはぱっと顔を上げた。
「あっ、あのっ、アレリア様が……!」
「そうですわ。わたくしがやったのです」
アレリアは咄嗟にそう言っていた。
おそらく、エメリーヌがアレリアをはめようと仕組んだ通りに。
「意見の相違で揉めたのです。わたくしがやりました。ですから早く、保健室に!」
「はあ? 嘘つけ。そいつの二つ名知ってるか? 野犬の群れの王だぞ。腰抜けのアレ姉じゃ寝込み襲ったって逆に刺されるわ」
「アレリア様、どうして……」
こんな時なのに呑気に返すマルク、信じられないというようにアレリアを見上げるエメリーヌ。
そしてマルクによるかなり酷いアレリア評。
「あなたは……自分を傷つけるほど愚かな子ではないはずよ」
安心させるようにアレリアは微笑んだ。
「野犬の群れの王――? なのでしょう? そんな子は刃物の間違った使い方なんてしないものよ」
エメリーヌは顔を上げ、キッとアレリアを睨み付けた。
「エミィはそんなんではありません! エミィはお姫様なんですの。犬なんて知りませんの。エミィはアレリア様みたいになるんですの!」
「なんだなんだ? 俺の取り合い? モテる男は辛いわー」
アレリアはため息をつき、立ち上がった。
「……エメリーヌ。老婆心から言いますけれど、マルク殿下だけはやめておいたほうがよくてよ。本当に殿下のことが好きでも、お姫様に憧れているだけでも、それを叶えるにはおよそ最悪の相手ですわ」
「え、ちょっ、アレ姉! なに俺にとばっちりしてんだよ!」
エメリーヌがマルクと結婚してそれこそ破滅してもまったく意に介さないし、アレリアは今世の自分の身さえ守れたらそれで良かった。
一つ、前世に囚われない今世の誤算があるとするならば、それはエメリーヌがアホすぎて逆に心配なことくらいである。
「あなたにはきっともっとまともな、あなたにぴったり合った人が現れますわ。殿下の外見やあの身分はただの目くらましよ、幻惑されるのはやめておきなさい。そうやって悲劇に終わるのはわたくしの役目だから」
王子様に憧れる女の子……。そのキラキラした夢を壊すのは可哀想だけれど、されど現実はキツい。
それを、アレリアは前世に知った。
後悔しているのだ。あの頃の自分を。
好きな人がいて、思い描いた素敵な未来があって。その全てを手に入れたと思っていた、裏切られる前の――婚約時代の、夢いっぱいだった頃のアレリアを。
だがあの頃の自分に未来をいって婚約者から離れるよう説得しても信じないだろう。
キラキラした夢は人を狂わせる。その夢を偶然にも手に入れたと思えば思うほど、人は狂う。
キラキラとピンクの瞳を輝かすエメリーヌも同じだ。アレリアの老婆心など余計なお世話だろう。
エメリーヌは痛みなど感じないかのような、きょとんとした顔でアレリアを見上げていた。
「アレリア様、マルク様のことお嫌いなんですの?」
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