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第一部
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「何してんの」
透が呆れた顔で車を降りてきた。3日ぶりに見た顔は少し痩せたように見えて、僕が確かめるようにじっと見たら少し眉を寄せて、眼鏡のブリッジを指の角で押し上げた。そんな些細な仕草がかっこいい。
「今、帰ろうと思ってたとこ。良かった。逢えた」
「もろ不審者だったよ」
「へへ……」
近づいて来た透を、僕は嬉しくてただ見てた。透は一瞬複雑な表情をしたあと、ちょっと笑って僕の後ろに手を伸ばしてドアを開けた。
「気を付けて帰りなよ」
「うん。透もお仕事……がんばって」
そのまま透が中に入って行きそうになったから、つい「今日は帰って来る?」と訊いてた。一秒でも長く一緒にいたかった。透は「分からない。帰れたら帰る」と言い、僕の頭をすっと軽く撫でて階段を上がって行った。
触れられた感触が頭のてっぺんに残る。僕の前でガラス戸が閉まり、僕はもう一度ガラス越しにオフィスを見上げた。あ~……寂しいなぁ……一緒の家に暮らしてるのに逢えないなんて……
透が触れた頭を自分で撫でて、家路につく。汗で張り付くワイシャツが気持ち悪くて、温室みたいになった家に入るなりリビングのエアコンのスイッチを入れてお風呂場に直行した。思いがけず透に逢えたのは本当に嬉しかったけど、汗を流して涼しい部屋に出て来たら、ひとりの寂しさが倍になってた。
それはすぐには忘れてしまえない強さで僕の背中を押した。3階へ上がり、透の部屋へそっと入る。きれいにベッドメイキングされたそこへ歩み寄り布団に顔を近づける。我慢できずに布団に潜り込み、ふわっと広がった透の匂いに心の底から安心して、でも恋しくて恋しくて恋しくて……気付いたら、眠ってしまってて──
「ちょっと。なんでここで寝てんの」
透の声でくっついた瞼を上げると、夕方逢った時のままの透がベッドの脇で僕を見下ろしてた。
「おかえり……」
帰って来てくれたんだ……とジワジワ込み上げる嬉しさ。部屋の電気で陰になった透の顔がよく見えなくて、体を起こした。
じーっと見上げる僕の頬を透の手が包み、親指がそっと頬を撫でる。その手が離れていきそうになって、僕はそれを両手で捕まえて僕の頬に戻し、顔を捩じって手の平にキスをした。透が上着をベッドの上へ投げ、膝を乗り上げて僕を押し倒して来る。込み上げる、幸福。
「とーる……」
自然と甘くなる声……それを、透の唇が吸い取る。外から帰って来たばかりの透から汗の混じった匂いがすると、鼓動に合わせて体がジンジン痺れ、すぐに下に血が集まり始めた。
あぁもっと……もっとくっつきたい……抱き付こうとしたのに、透が離れてく。
「シャワー行ってくる」
「やだ……」
もう一秒も離れていたくないのに。逃がさないようにワイシャツを掴んだら、透が「じゃああんたも来れば?」と意味深に笑って、ついて行ってお風呂場で起こることを想像した僕のそこはますます硬くなって……そんなの……もう、我慢できるわけなかった。
多分、3週間ぶりくらい。シャワーの下で僕を弄る指に、恥ずかしい声が抑えられない。つるりとした樹脂パネルの壁にすがりつくようにして足を開き、もっと奥へと求めて、物欲しげにお尻を突き出す。
透はせっけんのついた手で僕の乳首をぬるぬる摘んで、僕がそれに弱いことを知ってるから、執拗にそれをして僕を喘がせた。
僕にめり込む熱い質量が愛しくて、久しぶりでちょっと辛くても、むしろそれが繋がっている証に思えて感じてしまう。敏感になった肌を伝うお湯の流れにぞくぞくして透のものを締め付け、透は短く唸ってさらに強く僕を穿った。
あぁ、好き、大好き、透……!
もっと激しく僕を抱いて……!
周りのことも、未来のことも、全部忘れてただ僕だけを見て……!
明日も仕事なのに、お風呂場から透の部屋に移動して第2ラウンド。こんな熱い夜があるから、僕は寂しさに耐えられる。
透が呆れた顔で車を降りてきた。3日ぶりに見た顔は少し痩せたように見えて、僕が確かめるようにじっと見たら少し眉を寄せて、眼鏡のブリッジを指の角で押し上げた。そんな些細な仕草がかっこいい。
「今、帰ろうと思ってたとこ。良かった。逢えた」
「もろ不審者だったよ」
「へへ……」
近づいて来た透を、僕は嬉しくてただ見てた。透は一瞬複雑な表情をしたあと、ちょっと笑って僕の後ろに手を伸ばしてドアを開けた。
「気を付けて帰りなよ」
「うん。透もお仕事……がんばって」
そのまま透が中に入って行きそうになったから、つい「今日は帰って来る?」と訊いてた。一秒でも長く一緒にいたかった。透は「分からない。帰れたら帰る」と言い、僕の頭をすっと軽く撫でて階段を上がって行った。
触れられた感触が頭のてっぺんに残る。僕の前でガラス戸が閉まり、僕はもう一度ガラス越しにオフィスを見上げた。あ~……寂しいなぁ……一緒の家に暮らしてるのに逢えないなんて……
透が触れた頭を自分で撫でて、家路につく。汗で張り付くワイシャツが気持ち悪くて、温室みたいになった家に入るなりリビングのエアコンのスイッチを入れてお風呂場に直行した。思いがけず透に逢えたのは本当に嬉しかったけど、汗を流して涼しい部屋に出て来たら、ひとりの寂しさが倍になってた。
それはすぐには忘れてしまえない強さで僕の背中を押した。3階へ上がり、透の部屋へそっと入る。きれいにベッドメイキングされたそこへ歩み寄り布団に顔を近づける。我慢できずに布団に潜り込み、ふわっと広がった透の匂いに心の底から安心して、でも恋しくて恋しくて恋しくて……気付いたら、眠ってしまってて──
「ちょっと。なんでここで寝てんの」
透の声でくっついた瞼を上げると、夕方逢った時のままの透がベッドの脇で僕を見下ろしてた。
「おかえり……」
帰って来てくれたんだ……とジワジワ込み上げる嬉しさ。部屋の電気で陰になった透の顔がよく見えなくて、体を起こした。
じーっと見上げる僕の頬を透の手が包み、親指がそっと頬を撫でる。その手が離れていきそうになって、僕はそれを両手で捕まえて僕の頬に戻し、顔を捩じって手の平にキスをした。透が上着をベッドの上へ投げ、膝を乗り上げて僕を押し倒して来る。込み上げる、幸福。
「とーる……」
自然と甘くなる声……それを、透の唇が吸い取る。外から帰って来たばかりの透から汗の混じった匂いがすると、鼓動に合わせて体がジンジン痺れ、すぐに下に血が集まり始めた。
あぁもっと……もっとくっつきたい……抱き付こうとしたのに、透が離れてく。
「シャワー行ってくる」
「やだ……」
もう一秒も離れていたくないのに。逃がさないようにワイシャツを掴んだら、透が「じゃああんたも来れば?」と意味深に笑って、ついて行ってお風呂場で起こることを想像した僕のそこはますます硬くなって……そんなの……もう、我慢できるわけなかった。
多分、3週間ぶりくらい。シャワーの下で僕を弄る指に、恥ずかしい声が抑えられない。つるりとした樹脂パネルの壁にすがりつくようにして足を開き、もっと奥へと求めて、物欲しげにお尻を突き出す。
透はせっけんのついた手で僕の乳首をぬるぬる摘んで、僕がそれに弱いことを知ってるから、執拗にそれをして僕を喘がせた。
僕にめり込む熱い質量が愛しくて、久しぶりでちょっと辛くても、むしろそれが繋がっている証に思えて感じてしまう。敏感になった肌を伝うお湯の流れにぞくぞくして透のものを締め付け、透は短く唸ってさらに強く僕を穿った。
あぁ、好き、大好き、透……!
もっと激しく僕を抱いて……!
周りのことも、未来のことも、全部忘れてただ僕だけを見て……!
明日も仕事なのに、お風呂場から透の部屋に移動して第2ラウンド。こんな熱い夜があるから、僕は寂しさに耐えられる。
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