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第十四章 さようなら、ありがとう
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チュンチュン、チチチ。
「ふわあ、でっきたあぁ。とっても眠かったけど、ついに、漫画が完成したぞ!」
机でケイタくんが、のびをするのが見えました。
「まだ学校まで時間があるし、ちょっとだけ寝ようっと」
そうして、あくびをしながら、ケイタくんがベッドにもぐりこむのが見えました。
明け方まで創作にはげんでいたケイタくんは、とても疲れていたようで、ベッドに入るとすぐに寝息を立てて眠ってしまったのです。
「よかったね、ケイタくん。やっと漫画が完成して、ぼくもうれしいよ……」
そのとき、ぼくはふと、とんでもないことに気がついたのです。
「えっ……えええぇっ! ど、どうしてぼく……しゃべってるの?」
てっきりこの世界から消えてしまったと、そう思いこんでいたぼくは、自分で自分の声を聞いて、びっくりしてしまいました。
「ちょ、ちょちょっ、ちょっとまって! う~ん……これって、どういうこと?」
ぼくは、目をパチパチさせてみました。
「やっぱり生きてる! でも……あっ!」
なんと、自分のいる場所から、ケイタくんの学習机も見えるのです。
「ぼく、昨夜は机の上にいたのに……あっ、ぼ、ぼくの服があるっ!」
机の上には、消しゴムの体を包んでいた、四角い紙ケースが置いてありました。
「てことは、やっぱりぼくの体は使いきられたんだ……じゃあっ、いまのぼくって、なに?」
それでも、ぼくはこうして、ベッドで寝ているケイタくんと、机の上に置いてある自分の消しゴムケースを見つめているのです。
「えええぇぇっ……なんでぇっ?! ぼく、消しゴムの幽霊にでもなったのかなぁ……」
もう、わけがわかりません。
(どうして、体がないのにっ、生きてるのっ?)
ぼくはパニックで、頭がクラクラとしました。
(体は、たしかに消しゴムのカスになって、全部消えちゃったのに……)
考えれば考えるほど混乱し、とうとうぼくは、また意識をうしなってしまったのです。
――どうしてぼくが、消しゴムの体をうしなってもちゃんと生きていられるのか、それはもうしばらく後になってから、わかることになったのです。
「ふわあ、でっきたあぁ。とっても眠かったけど、ついに、漫画が完成したぞ!」
机でケイタくんが、のびをするのが見えました。
「まだ学校まで時間があるし、ちょっとだけ寝ようっと」
そうして、あくびをしながら、ケイタくんがベッドにもぐりこむのが見えました。
明け方まで創作にはげんでいたケイタくんは、とても疲れていたようで、ベッドに入るとすぐに寝息を立てて眠ってしまったのです。
「よかったね、ケイタくん。やっと漫画が完成して、ぼくもうれしいよ……」
そのとき、ぼくはふと、とんでもないことに気がついたのです。
「えっ……えええぇっ! ど、どうしてぼく……しゃべってるの?」
てっきりこの世界から消えてしまったと、そう思いこんでいたぼくは、自分で自分の声を聞いて、びっくりしてしまいました。
「ちょ、ちょちょっ、ちょっとまって! う~ん……これって、どういうこと?」
ぼくは、目をパチパチさせてみました。
「やっぱり生きてる! でも……あっ!」
なんと、自分のいる場所から、ケイタくんの学習机も見えるのです。
「ぼく、昨夜は机の上にいたのに……あっ、ぼ、ぼくの服があるっ!」
机の上には、消しゴムの体を包んでいた、四角い紙ケースが置いてありました。
「てことは、やっぱりぼくの体は使いきられたんだ……じゃあっ、いまのぼくって、なに?」
それでも、ぼくはこうして、ベッドで寝ているケイタくんと、机の上に置いてある自分の消しゴムケースを見つめているのです。
「えええぇぇっ……なんでぇっ?! ぼく、消しゴムの幽霊にでもなったのかなぁ……」
もう、わけがわかりません。
(どうして、体がないのにっ、生きてるのっ?)
ぼくはパニックで、頭がクラクラとしました。
(体は、たしかに消しゴムのカスになって、全部消えちゃったのに……)
考えれば考えるほど混乱し、とうとうぼくは、また意識をうしなってしまったのです。
――どうしてぼくが、消しゴムの体をうしなってもちゃんと生きていられるのか、それはもうしばらく後になってから、わかることになったのです。
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