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第4章 陽気なパートナー
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「いやあ、いやあ、おいら、ヘンリ・アントワーヌ4世って、いうなり。だからティム、おいらのことは、ヘンリ、って呼んでくださいよ」
「ぬあっ! どどど……、どうしておれの名前を知ってんだ?」
そのヘンリが、マントで顔を恥ずかしそうに隠しながら言う。
「だって、おいらもスターウォッチャーですもん。それぐらいは知ってて当然なり」
「こうもり男がスターウォッチャーだって? 夢だ夢だ夢だっ、これは幻だあっ!」
そう叫んで、おれが目をゴシゴシこすっても、ヘンリは消えるどころか、黄色くてまん丸い瞳で見上げてくる。
「そんなに驚かないでくださいよ。これでもずいぶん待ちわびたんですからね。だから、ティムが決心したときは、おいら、思わず叫んじゃいましたもん。やったなり、って」
「けけけ……、決心?」
「そうなり。お昼頃に、ティムはスターウォッチャーを目指すんだって、そう決心したでしょう?」
おれは、ヴィトとジョバンニを思い出した。
「お、おおお……おう」
「だから、月からやってきたなりよ。おいら、月に住んでいたんですよ」
いきなりヘンリが天井に飛び、そこから、逆さまになってぶら下がる。
「つ、つつつ……月?」
「おいら、月から地球を観測してたでやんす」
「じゃあっ、ヘンリは月に住むスターウォッチャーってことか?」
聞くと、ヘンリは神妙な顔つきで、天井に向かってうなずいた。
「そうなり。だから、ティムのすぐにカッとなるクセや、さっき、サリーとパスタを食べてたことだって、すべて知ってるなりよ」
「……なんてこった」
おれは驚き、うなるしかない。
「それで、インモビリアール社がアルダーニャにやってきたでしょう。ティムは今、ピンチピンチ、大ピンチでやんす。だから、もしかしたらって思ったんです。そういうとき、人は夢に向かって一歩踏み出す場合が多いですから。ほら、ピンチはチャンスって、ね」
「うーん……、よく分からねえが、とにかくヘンリは、月からおれのことを観測してたってわけだな。でも、どうしておれなんだよ?」
「たまたま見つけて、ファンになったんです」
そこでヘンリが少し顔を赤くしながら言う。
「ティムのことが、好きになったんですよ」
「……そりゃ、どうも」
ヘンリが言うには、地球以外にも、スターウォッチャーは宇宙にたくさんいるらしい。地球でじいちゃんが、星を観測して物語を書いていたように、なんとヘンリも、月から地球を観測しておれの物語を書いていたそうなんだ。
「名づけて、ティムの一発逆転! 夢を叶えてじいちゃんが嘘つき呼ばわりされた、そんな濡れ衣を晴らしてやるんだ~編、ってとこですかね」
「タイトル、長げえ……」
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