スター☆ウォッチャー

泉蒼

文字の大きさ
上 下
21 / 64
第4章 陽気なパートナー

4-3

しおりを挟む
「寒っ……でも、なんか懐かしいぜ」

 突風で、身体が吹き飛ばされそうになる。それでも、おれは嵐の登山道を歩き山小屋に到着した。

 家を出て一時間。

 ガチャ!

「……ああ、山小屋はあったけえ」

 まずは観測部屋へ向かい、ランプに明かりを灯す。

「……まだ寒い。暖炉の火もつけるか」

 あらかじめ備蓄してある薪があればいいが。だが、そんなに都合よく薪は部屋にない。

「たしか昨日……」

 ふとサリーの言葉を思い出す。

「裏の倉庫に何とかって」

 サリーが掃除のときに言った、そんな一縷の望みにかけ、雨が降る中おれは裏の倉庫へ回る。

「ラッキー」

 倉庫に薪がたくさん積んであった。サリーに感謝し、抱えられるだけ薪を観測部屋へ運んだ。

 パチパチパチ――、ボオッ、ボオォォォ!

 暖炉の火を熾す。観測部屋がさらに明るくなった。

「幸せすぎるほどあったかい――じゃ、観測するか」

 昨日サリーと掃除に来て組み立てたガリレオ式望遠鏡に手を伸ばす。

「何だ?」

 だが、何故か背筋がゾクッとした。

 気配だ。部屋に何かいる。そんな気がする。何か分からないが気配だ。

「そういや、時々エサを求めて、熊やイノシシが出てくることがあった」

 つぶやくと身体が緊張し始めた。心臓がとたんにバクバク音を立てる。

 どうか、熊は勘弁だ。

 部屋の中央で固唾をのんで立ちすくむ。

 バサバサっ――――ドンッ!

「うわあああ!」

 天井からこうもりが降ってきた。

「どうしてこうもりが? 何でタキシードを? 何で何で?」

 目が丸くなる。

 床のこうもりの様子がおかしい。

 ぼう然だ。身の丈三十センチぐらいのこうもりが、頭にシルクハットを被っている。蝶ネクタイも。

「正装してる、何だおまえ!」

 とっさに叫ぶと、床のこうもり男が照れくさそうに笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

レスト:ランプ

昔懐かし怖いハナシ
児童書・童話
 あるレストラン。普通のどこにでもあるものでした。しかし、その客の未来を告げる事が出来る店であった。  また、神出鬼没であり、良くない運命を持つ者の前にだけ現れる。  それを信じるか、またまた、信じずにこの先過ごすか、それはその人次第  

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

コンプレックス×ノート

石丸明
児童書・童話
佐倉結月は自信がない。なんでも出来て人望も厚い双子の姉、美月に比べて、自分はなにも出来ないしコミュニケーションも苦手。 中学で入部したかった軽音学部も、美月が入るならやめとこうかな。比べられて落ち込みたくないし。そう思っていたけど、新歓ライブに出演していたバンド「エテルノ」の演奏に魅了され、入部することに。 バンド仲間たちとの触れ合いを通して、結月は美月と、そして自分と向き合っていく。

猫のお知らせ屋

もち雪
児童書・童話
神代神社に飼われている僕、猫の稲穂(いなほ)は、飼い主の瑞穂(みずほ)ちゃんの猫の(虫の)お知らせ屋になりました。 人間になった僕は、猫耳としっぽがあるからみずほちゃんのそばにいつもいられないけれど、あずき先輩と今日も誰かに為に走ってる。花火大会、お買い物、盆踊り毎日楽しい事がたくさんなのです! そんな不思議な猫達の話どうぞよろしくお願いします

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

りりちゃんのぬいぐるみ

1000
児童書・童話
ぬいぐるみとして生まれたぼくは、りりちゃんが大好き。でも時が経つにつれて、りりちゃんとの距離が生まれ始める。ついにダンボールに入れられてしまったぼくは、それでもりりちゃんを思い、生き続けた。

鮫嶋くんの甘い水槽

蜂賀三月
児童書・童話
中学二年生の白魚愛奈は、遠方に住むおばあちゃんが入院し、母親の友人の家にお世話になることに。しかし、その家は目つきが悪い同級生・鮫嶋恭介の家だった。強面で不愛想な恭介と暮らすことに不安になる愛奈。恭介を勝手に不良だと思っていたが、それが誤解だということに気づく。恭介の優しいところをみんなにも知ってもらいたいと思った愛奈は、あるアイディアを思いつく。それは、恭介と一緒にいきもの係になることだった。 強面男子との同居の先には、甘酸っぱい初恋の予感が――? 不器用で、切なくて、不安な男女の初恋を描く、ピュアラブストーリー! ーーー 第15回 絵本・児童書大賞・学園恋愛児童書賞を受賞しました。 ありがとうございます!

処理中です...