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006_派閥
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006_派閥
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発表後、金属カードを受け取った俺は、足取り軽く元の席に戻る。
貴族がありがたがる戦闘系の加護じゃない。だが、俺にとっては最高の加護だ。
「スピナー様。皆さん、残念がってますよ」
ロックがにやけた口を手で隠している。傍から見たら、主の俺が残念な加護を得たから悲しんでいる従者に見えるんだろうな。
「構わん。放っておけ」
「そう言うと思ってました」
ベニック公爵を窘めた国王とパパは平然とした顔をしているが、他の貴族や生徒、そして先生たちは俺を侮ったような顔をしている。
国王がこれで俺のことを諦めてくれればいいのだが……。
ポケットからミネルバを出した。
「ミネルバ……俺と契約するか?」
手の上でミネルバが跳ねる。
「よし、今からミネルバは俺の眷属だ」
何かが俺の中に流れ込んでくる。これはミネルバの歓喜の感情か。
「嬉しいんだな。俺もだぞ」
その後、Sクラス全員の【神威の儀】が終わった。
俺の従者のロックの加護は【騎士】だった。この【騎士】は【戦士】の上位加護で、ナルジニアが得た【剣王】と同等のものだ。
騎士家の男子としては、良い加護を得られたのだろう。
「可哀想に」
俺は心からそう思うよ。
「そう言うのはスピナー様だけですよ」
ロックは憮然としてそう言った。
聖堂から教室に戻る途中、【剣王】を授けられたナルジニアが大声で自慢していた。
その周りには数人の子供が集まっている。
「この時期に腰巾着を作るとか、さすがは公爵家の嫡子だな」
「スピナー様も公爵家のお方なんですけどね」
「ふんっ。いざと言う時に役に立たない有象無象など不要だ」
「そんなこと言ってますと、お家に関係する子弟の反感を買いますよ」
公爵家ともなると、分家や分家の分家、はたまた支流の家や寄子など多くの家を傘下に収めている。
俺は四男なので社交界に顔を出したことはない。四男ということを盾にして、パーティーやお茶会などの誘いをパパに断ってもらっている。
必然的に俺がパーティーやお茶会を主催することもない。だから、ボルフェウス公爵家傘下の家の子供でさえ、俺のことをほとんど知らない。逆もまたしかりだ。
「スピナー様は騎士団の稽古に出ている奴しか知り合いが居ませんからね」
「どうせ成人したら平民なんだから、いいじゃないか」
「平民になるとしても、知り合いは多いほうがいいと思いますよ」
「付き合う奴は選んでいる。さっきも言ったが、いざと言う時に役に立たない有象無象の知り合いなど不要だ」
ロックが頭を抱えた。俺、正論を吐いているよな?
「僕の【剣王】はマイナーな【クモ使い】などよりも有用だ。君たちも付き合う生徒を選ぶべきだぞ」
ナルジニアは俺を引き合いに出して派閥を大きくしようとしている。
将来はベニック公爵を背負って立つだけあって、自己顕示欲が強い。
「あんなこと言ってますよ」
「子供の言うことに、いちいち目くじらを立てていたら疲れるだけだろ」
「スピナー様もその子供ですよ」
「俺は精神年齢のことを言っているんだ」
ナルジニアは親に似ているな。貴族は神とでも思っているような目をしている。
教室に到着して、担任のメルリッチ先生から今後の案内があり、副担任のグロリア先生が印刷物を配る。
今日は【神威の儀】の後にホームルームをして終了だ。授業は明日からになる。
「5月に前期試験、11月に後期試験があります。この前後期試験で優秀な成績を残せなかった生徒は、AクラスやBクラスと言ったクラスに落ちますからがんばってください」
そこで名も知らぬ男子生徒が手を挙げ質問したのは、授業に出なくてもいいのかというものだ。いい質問だ。
「当学園は実力主義です。課題を提出し、前後期試験で優秀な成績を収めれば、授業への参加は自由になっております」
実力があれば課題と試験だけでいいらしい。これはいいことを聞いた。
「しかし、学園では学問や戦闘を学ぶだけではありません。友達を作ったり、将来なりたい職業を見つけたりするのもいいでしょう」
貴族に友達という存在は滅多にない。他者とはライバルだったり、従うものだったり、従わせるものだからだ。
それができない貴族は社交界から淘汰されていく。俺は淘汰されたいのだが、淘汰されないでいる。困ったものだ。
ホームルームが終わり、先生たちが教室を出ていった。
俺もすぐに立ち上がって教室を出る。俺についてくる気配はロックだけだと思ったが、他の気配もあった。面倒臭そうなので足早に教室を出た。
「王女様が何か言いたそうでしたよ」
廊下を歩いていると、ロックが囁いてきた。
「だから急いで教室を出たんだ。王侯貴族に関わるということは、俺の将来設計にないからな」
「不敬だと思うのですが?」
「王女のほうが話しかけるなと言ったんだ。俺は王女との約束を遵守しているだけさ」
どやっとロックの顔を見たが、残念な奴を見るような顔をしていた。なぜだ?
006_派閥
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発表後、金属カードを受け取った俺は、足取り軽く元の席に戻る。
貴族がありがたがる戦闘系の加護じゃない。だが、俺にとっては最高の加護だ。
「スピナー様。皆さん、残念がってますよ」
ロックがにやけた口を手で隠している。傍から見たら、主の俺が残念な加護を得たから悲しんでいる従者に見えるんだろうな。
「構わん。放っておけ」
「そう言うと思ってました」
ベニック公爵を窘めた国王とパパは平然とした顔をしているが、他の貴族や生徒、そして先生たちは俺を侮ったような顔をしている。
国王がこれで俺のことを諦めてくれればいいのだが……。
ポケットからミネルバを出した。
「ミネルバ……俺と契約するか?」
手の上でミネルバが跳ねる。
「よし、今からミネルバは俺の眷属だ」
何かが俺の中に流れ込んでくる。これはミネルバの歓喜の感情か。
「嬉しいんだな。俺もだぞ」
その後、Sクラス全員の【神威の儀】が終わった。
俺の従者のロックの加護は【騎士】だった。この【騎士】は【戦士】の上位加護で、ナルジニアが得た【剣王】と同等のものだ。
騎士家の男子としては、良い加護を得られたのだろう。
「可哀想に」
俺は心からそう思うよ。
「そう言うのはスピナー様だけですよ」
ロックは憮然としてそう言った。
聖堂から教室に戻る途中、【剣王】を授けられたナルジニアが大声で自慢していた。
その周りには数人の子供が集まっている。
「この時期に腰巾着を作るとか、さすがは公爵家の嫡子だな」
「スピナー様も公爵家のお方なんですけどね」
「ふんっ。いざと言う時に役に立たない有象無象など不要だ」
「そんなこと言ってますと、お家に関係する子弟の反感を買いますよ」
公爵家ともなると、分家や分家の分家、はたまた支流の家や寄子など多くの家を傘下に収めている。
俺は四男なので社交界に顔を出したことはない。四男ということを盾にして、パーティーやお茶会などの誘いをパパに断ってもらっている。
必然的に俺がパーティーやお茶会を主催することもない。だから、ボルフェウス公爵家傘下の家の子供でさえ、俺のことをほとんど知らない。逆もまたしかりだ。
「スピナー様は騎士団の稽古に出ている奴しか知り合いが居ませんからね」
「どうせ成人したら平民なんだから、いいじゃないか」
「平民になるとしても、知り合いは多いほうがいいと思いますよ」
「付き合う奴は選んでいる。さっきも言ったが、いざと言う時に役に立たない有象無象の知り合いなど不要だ」
ロックが頭を抱えた。俺、正論を吐いているよな?
「僕の【剣王】はマイナーな【クモ使い】などよりも有用だ。君たちも付き合う生徒を選ぶべきだぞ」
ナルジニアは俺を引き合いに出して派閥を大きくしようとしている。
将来はベニック公爵を背負って立つだけあって、自己顕示欲が強い。
「あんなこと言ってますよ」
「子供の言うことに、いちいち目くじらを立てていたら疲れるだけだろ」
「スピナー様もその子供ですよ」
「俺は精神年齢のことを言っているんだ」
ナルジニアは親に似ているな。貴族は神とでも思っているような目をしている。
教室に到着して、担任のメルリッチ先生から今後の案内があり、副担任のグロリア先生が印刷物を配る。
今日は【神威の儀】の後にホームルームをして終了だ。授業は明日からになる。
「5月に前期試験、11月に後期試験があります。この前後期試験で優秀な成績を残せなかった生徒は、AクラスやBクラスと言ったクラスに落ちますからがんばってください」
そこで名も知らぬ男子生徒が手を挙げ質問したのは、授業に出なくてもいいのかというものだ。いい質問だ。
「当学園は実力主義です。課題を提出し、前後期試験で優秀な成績を収めれば、授業への参加は自由になっております」
実力があれば課題と試験だけでいいらしい。これはいいことを聞いた。
「しかし、学園では学問や戦闘を学ぶだけではありません。友達を作ったり、将来なりたい職業を見つけたりするのもいいでしょう」
貴族に友達という存在は滅多にない。他者とはライバルだったり、従うものだったり、従わせるものだからだ。
それができない貴族は社交界から淘汰されていく。俺は淘汰されたいのだが、淘汰されないでいる。困ったものだ。
ホームルームが終わり、先生たちが教室を出ていった。
俺もすぐに立ち上がって教室を出る。俺についてくる気配はロックだけだと思ったが、他の気配もあった。面倒臭そうなので足早に教室を出た。
「王女様が何か言いたそうでしたよ」
廊下を歩いていると、ロックが囁いてきた。
「だから急いで教室を出たんだ。王侯貴族に関わるということは、俺の将来設計にないからな」
「不敬だと思うのですが?」
「王女のほうが話しかけるなと言ったんだ。俺は王女との約束を遵守しているだけさ」
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